FC2レンタルサーバーLiteのFTP転送性能を評価し、他のレンタルサーバーと比較する

簡単インストール機能で導入したアプリケーション (CMSなど) をそのまま利用するなら、FTPの利用頻度は少ないかもしれません。例えば、WordPressであれば他者が作成したテンプレートやプラグインを利用するだけならダッシュボード (管理ツール) の操作で済むため、FTPを利用することはあまりないでしょう。

しかし、簡単インストール非対応のアプリケーションやサービスを導入または開発するなら、FTPの転送性能を無視することはできません。WordPressであっても、テーマやプラグインを独自開発するのであればFTPの利用機会は増えます。

頻繁にファイルをアップロード・ダウンロードしたり、サーバーにあるファイルを編集するなら、レスポンスの悪いレンタルサーバーを選ぶと非常にストレスとなり、作業効率も悪くなります。

それでは、FC2レンタルサーバーLiteのFTP転送性能 (レスポンス) について評価し、他のレンタルサーバーと比較してみましょう。

FTP仕様

通常のFTPのみ対応しており、FTPS等のセキュアなプロトコルには非対応です。また、アカウントは契約時に発行される 1つのみ となっています。

パスワードはサーバーアカウントのパスワードと同じものが利用されます。そのため、パスワードを変更するにはサーバーアカウントのパスワードを変更する必要があります。ユーザー名は変更できません。

測定方法

  • Webページを構成するファイルのアップロードとダウンロード
    • テキストファイルや画像ファイル
    • (HTTP) レスポンス性能の評価に利用しているサイト (ページ) を構成するデータ群
  • 合計ファイルサイズは約1.8MB (約20ファイル)

最大3つのファイルを並列転送します。レンタルサーバーがそれ以上の同時接続を許可していて、FTPクライアントも並列転送に対応していれば、この測定結果より早く転送できることになります。

5分毎 にアップロードとダウンロードを実行します。

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定と言っても一度きりでは意味がないので、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果を出すことを (完全ではありませんが) 省けます。

一定期間測定することで、利用者数 (訪問者数) が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということが推測できます。

測定経路

家庭用回線からの測定となります。サーバーは測定専用として測定以外の処理は行っていません。

家庭用回線の測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  アップロード ダウンロード
有効測定数 (回) 2,014 2,011
Grubbs' testによる除外割合 (回) 0.20% (4) 0.15% (3)
Grubbs' testによる閾値 19.16秒 14.03秒
エラーの割合 (回) 0.10% (2) 0.25% (5)
3秒以上の割合 (回) 99.80% (2010) 99.85% (2008)
中央値 (秒) 16.51秒 10.17秒
平均値 (秒) 16.57秒 10.11秒
ばらつき/標準偏差 (秒) 0.56秒 0.86秒

有効測定数はエラーを省いた回数を示します。測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態 (混雑具合) が変動するため、集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定Grubbs' test (α=0.001) により省いています。生データ (未加工データ) は最後に掲載しています。

FC2レンタルサーバーLiteの評価

測定前にWordPressのインストール作業などでFTPクライアントを利用しましたが、やはりというか予想通りというかレスポンスは良くありません。基本的に海外サーバーのFTP転送速度は遅い傾向にあるので仕方がないところです。エラーはほとんど発生せず、サーバー自体が不安定ということはないため、単純に距離を原因とする遅さになります。

アップロードについてはばらつきが小さく (遅いですが) 安定しています。ダウンロードについては、ばらつきがあり変動が見られます。とは言え、時間帯によるばらつきでもなく、傾向をつかみにくい結果となっています。

実際にファイルの転送や編集を行ってみると、軽いテキストファイルなら全く問題ありません。しかし、WordPressの様なファイル群 (解凍後) をまとめて転送するような用途だと、かなり時間がかかります。

多くのファイルをまとめて転送する必要があれば、アップロードするのではなく、外部サーバーにファイルを配備し、FC2 Liteのサーバーからダウンロードすると圧倒的に効率的です。例えば、WordPressをインストールするためにファイルを転送するのであれば下記を参考にしてください。

FC2レンタルサーバーLiteに手動でWordPressをインストールする方法

他のレンタルサーバーとの比較

プロバイダー 環境など アップロード ダウンロード
公式サイト 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.750.740.050.10.480.440.10.05

0.750.750.050.20.490.440.130.1

0.840.740.2400.730.640.180

0.860.850.060.10.590.510.190.1

0.90.70.4200.690.580.30

0.950.880.240.20.710.620.260.1

0.950.830.320.20.720.660.270.1

WordPress

0.990.880.320.250.710.590.280.35

1.040.780.4900.720.620.30

1.050.860.440.250.720.610.320.05

1.10.840.480.20.860.720.380.2

1.111.10.083.170.730.70.111.87

1.211.10.330.350.750.690.250.3

PHP&MySQL

1.331.270.260.11.131.010.250.1

SFTP

1.391.350.1401.061.030.110

1.441.210.6701.191.110.290

1.51.490.0701.331.20.540

1.531.530.090.90.890.870.091

1.561.550.100.970.960.070

1.581.580.060.050.980.870.210

SFTP

1.611.60.0701.721.690.120

1.611.560.1901.131.210.250

1.611.60.101.080.970.210

1.621.550.190.051.211.20.10.05

1.671.660.150.250.980.970.070.25

1.731.730.1101.061.050.090

1.771.80.2401.081.040.140

SFTP

1.831.850.2701.331.290.150

1.881.710.6901.531.520.330

1.9820.3301.191.150.110

新サーバー

2.112.030.350.41.441.360.40.2

2.141.920.6901.251.220.160

2.262.030.630.31.331.270.150.3

2.382.310.30.052.462.420.290.05

旧サーバー

2.482.280.550.151.921.780.520.05

2.622.41.022.81.841.740.631

2.922.51.1202.992.481.410

2.972.441.190.051.390.541.760

SFTP

32.990.2401.931.90.130

3.093.120.1601.361.330.120.05

3.413.410.0901.861.840.080

5.533.923.450.355.863.954.10.25

6.7500.730.28.7200.980.1

海外

11.611.60.4806.796.740.280

海外

12.112.10.507.477.450.190

海外

12.312.30.52010.910.31.350.05

海外

16.616.50.560.210.110.20.860.25

海外

33.430.27.130.1520.5201.830.05

当然ですが国内のサービス (サーバー) には全く及びません。海外データセンターを採用する他社レンタルサーバーも同様に遅いことから、サーバー性能というよりはネットワーク環境の影響が大きいことに間違いないでしょう。距離的には フレンドサーバー (カリフォルニア州) と同程度なので、測定結果も似ています。ただし、フレンドサーバーはばらつきが大きいため、サーバー自体の処理性能も影響していそうです。

FC2 Liteは頻繁にファイルの転送や編集をするような用途に向きません。例えば、WordPressであればWebサイトの立ち上げ時のみFTPを利用して、後はアプリケーションの管理ツールをメインに運用するという前提なら問題とはなりません。

測定結果 (未加工データ)

  アップロード ダウンロード
3秒以上の割合 (回) 100% (2014) 100% (2011)
中央値 (秒) 16.51秒 10.18秒
平均値 (秒) 16.58秒 10.12秒
ばらつき/標準偏差 (秒) 0.59秒 0.88秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス (プラン) に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

関連記事

BLOG

UPDATE