Z.comのレスポンス性能を他のレンタルサーバーと比較・評価する

この記事の内容は古いため現状と異なる可能性があります。新しい記事も参考にしてください。

Z.com (ゼットコム) は2015年10月に開始された新しいサービスです。Z.comはGMOインターネット株式会社のグローバルブランドであり、世界展開を目的としたサービスとなっています。そのため、日本だけでなく、アメリカ、シンガポールのデータセンターを選択することが可能です。今後も、東南アジア地域を中心に順次サービスが開始されるようです。

特徴は時間単位の従量制課金 (初期費用無料) となっていることです。例えば、Zeroプランであれば、0.5円/時間となっており、1週間の利用で84円 (0.5円×24時間×7日) となります。上限は決まっており、一ヶ月まるまる利用しても360円となっています。用途は様々ですが、キャンペーンなどの一時的な運用にも最適です。

レンタルサーバーは使い勝手よりも安定性とレスポンス性能が重要です。いくら機能が充実していても、Webサイトの表示に時間がかかれば、訪問者の満足度を高めることはできません。レスポンスの悪いサイトはGoogleの評価も低くなります。Z.comレンタルサーバーは全サービスで SSD が採用されており、レスポンス性能に期待できます。

それでは、Z.comレンタルサーバーのレスポンス性能 (応答性能) を評価し、他のレンタルサーバーと比較してみましょう。

測定方法

測定方法の詳細は下記のページを参照してください。

レンタルサーバー性能の測定方法

家庭用回線に接続したサーバーから定期的にアクセスして、Webページのダウンロードに要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。

動的ページ
WordPressによるサイト(PHPとデータベースを利用)
コンテンツは平均的なWebページの構成を採用
HTTP Archiveの統計データを利用
静的ページ
htmlファイルによるサイト
WordPressが生成したデータを静的ファイルに変換したものを利用

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定と言っても一度きりでは意味がないので、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果を出すことが (完全ではありませんが) 省けます。

一定期間測定することで、利用者数 (訪問者数) が変動する夜間と日中の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということが推測できます。

測定経路

家庭用回線からの測定となります。サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

家庭用回線の測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  動的ページ 静的ページ
有効測定数 (回) 3,887/4,032 4,025/4,032
Grubbs' testによる除外数 (割合) 129 (3.32%) 64 (1.59%)
Grubbs' testによる閾値 1.45秒 1.67秒
エラーの割合 (回) 3.73% (145) 0.17% (7)
3秒以上の割合 (回) 2.24% (87) 0.67% (27)
中央値 (秒) 0.44秒 0.43秒
平均値 (秒) 0.51秒 0.50秒
ばらつき / 標準偏差 (秒) 0.19秒 0.23秒

有効測定数はエラーを省いた回数を示します。測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態 (混雑具合) が変動するため、集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定Grubbs' test (α=0.001) により省いています。

エラー 内容
動的ページ (145) Connection refused (139)
  Connection time-out (6)
静的ページ (7) Connection time-out (7)

除外数が非常に多いため、生データ (未加工データ) の結果も掲載します。

測定結果 (未加工データ)

  動的ページ 静的ページ
有効測定数 (回) 3,887/4,032 4,025/4,032
3秒以上の割合 (回) 2.24% (87) 0.67% (27)
中央値 (秒) 0.45秒 0.43秒
平均値 (秒) 0.62秒 0.56秒
ばらつき / 標準偏差 (秒) 0.75秒 0.72秒

Z.comの評価

様々な調査結果により 3秒 という時間がキーワードとなります。コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 過半数(57%)の訪問者がサイトから離脱
  • 80%のユーザーは、そのサイトを再訪しない
  • 1秒と3秒のサイトを比較すると、3秒のサイトはページビュー22%減、コンバージョン率38%減、直帰率50%増

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • Amazonであれば0.1秒の短縮で収益が1%向上
  • モバイル環境(スマートフォンやタブレット)ではより厳しくなる
参考
3秒が許容範囲 - Webサイトのパフォーマンスが重要な理由 | マイナビニュース
サイト表示が2秒遅いだけで直帰率は50%増加! DeNA事例から学ぶWebの自動最適化手法/日本ラドウェア | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2014 Spring | Web担当者Forum

快適なWebサイトの条件は、 最低でも3秒以内 のレスポンスということになります。

Z.comは非常に 高速なレスポンス性能 を有しており、他のレンタルサーバーと比較しても優れた結果となっています。平均値だけをみれば、コストパフォーマンスの高いレンタルサーバーであり、どのようなサイト運営でも問題ありません。未加工データの集計結果であっても上位サーバーの性能があります。 SSD を採用していることも関係しているでしょう。動的ページと静的ページとの差が小さいのも好印象です。

ただし、Grubbs' testを適用すると 除外数が非常に多く 、未加工データで集計すると ばらつき が非常に大きくなります。つまり、ベース性能は優秀ですが、アクセスする時間帯によってはレスポンスのばらつきが大きいことになります。基本的には、深夜 (00:00〜04:00) に負荷のピークが来るようですが、日中にもピークがあります。国内の利用者をメインとする他のレンタルサーバーと異なり、Z.comはグローバルサービスとなっています。もしかしたら、海外ユーザーが東京リージョンを契約しており、その影響で不自然な負荷状況となっている可能性はあります。

レスポンスは非常に優秀ですが、ばらつきやエラーが多い印象です。「サービス開始間もないため」ということも理由かもしれませんが、この点が改善されれば非常にオススメのレンタルサーバーとなる可能性はあります。

Z.comには3プランありますが、プランの切替え時にサーバー環境が変わらないため、プラン間でのレスポンス性能に差がないことになります。

エラーの原因

ある日の午後の4時間ほどPHPが動作しなくなりました。それまでも時折エラーは発生していましたが、一日に数回あるかどうかです。エラーは全て Internal Server Error、どのレンタルサーバーであっても発生するものです。 今回の場合は、PHPのみ動作しないという状況であり、静的ファイルへのアクセスやデータベースに問題はありませんでした。

cPanelを確認すると、Cannot allocate memory: couldn't create child process というエラーが発生しています。

このエラーはメモリが不足している時に発生します。エラーメッセージを調査するとcPanel関連での情報が多く、どうやらサーバーの設定を調整する必要があるようです。しかし、この設定はサーバー管理者 (GMO) しか対応できず、ユーザー側ではどうにもできません。一応サポートにも連絡すると、「高負荷状態で繋がりにくい状態でした」との回答でした。メールの内容から特に対応はしていないようです。

サーバーのスペックを調べると、メモリは16GB (2016年2月時点) しか搭載されていないようです。上記トラブル時、空きメモリはほとんどありませんでした。かなりの頻度でメモリに余裕がない状態であるようです。

どの程度のユーザー数が収容されているかは不明ですが、サーバーとしては心許ないメモリ容量です。単純に比較はできませんが他社であれば、96GBのメモリを積んだレンタルサーバーもあります。

他のレンタルサーバーと比較してみよう

ユーザーの多い、ロリポップ!とエックスサーバーと比較してみましょう。

グラフのX軸は7日間を4時間毎に区切ったものです。つまり、7×(24÷4)=42となります。また、色の付いている部分は夜間(18:00~02:00)を示しています。

比較データについて
各レンタルサーバーで条件をそろえるために、集計期間が少し異なる場合があります。
  Z.com ロリポップ! エックスサーバー
有効測定数 (回) 3,887 4,029 4,026
除外割合 (回) 3.32% (129) 3.33% (134) 0.94% (38)
エラーの割合 (回) 3.73% (145) 0.07% (3) 0% (0)
3秒以上 2.24% (23) 3.75% (151) 0.15% (6)
中央値 (秒) 0.44 1.33 0.80
平均値 (秒) 0.51 1.46 0.82
ばらつき/標準偏差 (秒) 0.19 0.38 0.29

上記のエラーやばらつきの件がなければ文句なしの性能ですね。料金的には上位サービスとなるエックスサーバーより優秀なレスポンス性能があります。

棄却検定による除外数はロリポップと変わりませんが、集計結果をみればZ.comの基本性能の高さがよく分かります。

これだけの性能が常時安定して出るようであれば、コストパフォーマンスの高さからもイチオシのレンタルサーバーになりそうです。Z.comはGMOが満を持して開始したサービスなので、これからの改善に期待したいところです。

今回の測定ではこのような結果となりましたが、サービス開始から半年も経過していないため、良いか悪いかの判断は早いのかもしれません。


公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450

hostingstock.netで測定した他のレンタルサーバーとの比較です。

Grubbs' test
グラブス検定により外れ値を除外しています。一時的なネットワークやサーバーの高負荷状態による異常値を省きます。グラブス検定を適用していない結果と比較して、良い結果となる傾向が高くなります。

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