国内データセンター移行で大幅に改善されたJETBOYのファイル転送性能

JETBOY(ジェットボーイ)は以前まで海外データセンターで運用されていましたが、2016年7月から国内データセンターに移行しました。コンテンツに関する制約の少なさはそのままに、より高性能なサービスとして生まれ変わりました。JETBOYの詳細については レビュー をご覧ください。

レンタルサーバーを検討するときにFTPのファイル転送性能を気にする人はほとんどいません。例えば、第三者が開発したプラグインやテーマを利用するだけのWordPressサイト運営なら、FTPの使用頻度は低いでしょう。しかし、ウェブサイトのデザインや機能を頻繁に更新するなら、転送速度が遅いだけで作業効率が悪くなり、ストレスにもなります。

以前のJETBOYは北米データセンターで運用されており、物理的距離による通信遅延のため、お世辞にも快適な転送速度とは言えませんでした。ファイル転送性能はレンタルサーバーを検討するときの絶対的な条件ではありませんが、あらかじめ確認しておけば契約後に後悔することもないでしょう。ここではJETOBOYのファイル転送性能の評価と他社との比較を行います。

JETBOYのFTP仕様

全プランでFTPアカウントを 無制限 に作成できます。通常のFTPに加えセキュアな FTPS にも対応しているため、安全なファイル転送が可能です。

サーバーパネルで作成できるアカウントのホームディレクトリは「/home/サーバーID/public_html」が最上位ディレクトリとなります。同階層の別ディレクトリを指定するならcPanelが必要です。ただし、cPanelを利用しても「/home/サーバーID」を指定することはできません。全てのドメインのデータ(ディレクトリ)を横断的に操作可能なアカウントは初期発行されるものだけです。

測定方法

5分毎 にアップロードとダウンロードを実行します。

  • Webページを構成するファイルのアップロードとダウンロード
    • テキストファイルや画像ファイル
    • (HTTP)レスポンス性能の評価に利用しているサイト(ページ)を構成するデータ群
  • 合計ファイルサイズは約2MB(約20ファイル)

最大3つのファイルを並列転送します。レンタルサーバーがそれ以上の同時接続を許可し、FTPクライアントも並列転送に対応していれば、この測定結果より速くなります。

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定といっても一度きりでは意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者数(訪問者数)が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということを推測できます。

測定経路

JETBOYはカゴヤ(KAGOYA)の京都データセンターで運用されているようです。カゴヤのデータセンターは2006年から運用されており、2014年には2棟目が建設されました。比較的新しいデータセンターであり、カゴヤのレンタルサーバー自体の性能も優秀です。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(関西電力)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  アップロード ダウンロード
有効測定 2,015回 2,016回
棄却検定除外 5.41% (109) 0.60% (12)
棄却検定閾値 1.88秒 1.98秒
エラー 0.05% (1) 0% (0)
3秒以上 2.73% (55) 0.10% (2)
中央値 1.58秒 0.87秒
平均値 1.58秒 0.98秒
ばらつき/標準偏差 0.06秒 0.21秒
測定結果について
有効測定はエラーを省いた回数を示します。
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定「Grubbs' test(α=0.001)」により省いています。これは測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、転送時間の 約68%平均値 ± ばらつき に、約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど転送性能が安定しているといえます。
未加工データ(生データ)は最後に掲載しています。
エラー内容  
アップロード [1] Bad PASV/EPSV response: 425 [1]

JETBOYの評価

アップロード、ダウンロードともに転送速度が安定してることが分かります。エラーが発生していますが約1/4,000であり、他のレンタルサーバーでも発生する程度のものです。他社サービスと比較すると平均以上の性能があり、どのような用途でもストレスになることはないでしょう。

アップロードに関して、棄却検定による除外データの割合(5.4%)が気になります。しかし、未加工データを見ても目立つような遅延やばらつきはありません。全体的に転送性能が安定している分、閾値(約1.9秒)が低くなっています。そのため、少し悪い程度のデータが除外対象となっているだけであり、決して悪い結果とは言えません。

時間帯による変化に傾向はないようです。グラフのスケール(尺度)を調整すれば、夜間帯に遅くなるような傾向もありますが、その差は僅かであり体感できるほどではありません。

JETBOYで採用されているサーバーのハードウェア性能は間違いなく最高クラスですが、通信速度はデータセンター自体(バックボーン)の性能も大きく影響します。今回のファイル転送性能はどちらかと言えば優秀な結果ですが、サーバー性能が高すぎるために「もう少し速くても良いのでは」と欲張ってしまいます。

FTP性能は平均以上ですが、ウェブサイトのレスポンスは間違いなく上位クラスの性能があります。詳しくは ウェブサイトのレスポンス測定記事 をご覧ください。

旧サービスとの比較

  国内 アップロード 国内 ダウンロード 海外 アップロード 海外 ダウンロード
有効測定 2,015回 2,016回 2,016回 2,016回
棄却検定除外 5.41% (109) 0.60% (12) 0% (0) 0.30% (6)
棄却検定閾値 1.88秒 1.98秒 23.1秒 13.1秒
エラー 0.05% (1) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
3秒以上 2.73% (55) 0.10% (2) 100% (2016) 100% (2016)
中央値 1.58秒 0.87秒 20.9秒 11.4秒
平均値 1.58秒 0.98秒 20.9秒 11.4秒
ばらつき/標準偏差 0.06秒 0.21秒 0.78秒 0.40秒
変動係数 3.80% 21.4% 3.74% 3.51%

国内DC(現サービス)と海外DC(旧サービス)との比較ですが、詳細に説明するまでもありませんね。旧サービス時も驚くほど高性能なサーバーが採用されていましたが、通信遅延によりその性能を十分に生かせていませんでした。国内に移行したことでネットワーク環境(距離)が改善され、本来の性能が生かせるようになったと言えます。

他のレンタルサーバーとの比較

プロバイダー 環境など アップロード ダウンロード
公式サイト 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.750.740.050.10.480.440.10.05

0.750.750.050.20.490.440.130.1

0.840.740.2400.730.640.180

0.860.850.060.10.590.510.190.1

0.90.70.4200.690.580.30

0.950.880.240.20.710.620.260.1

0.950.830.320.20.720.660.270.1

WordPress

0.990.880.320.250.710.590.280.35

1.040.780.4900.720.620.30

1.050.860.440.250.720.610.320.05

1.10.840.480.20.860.720.380.2

1.111.10.083.170.730.70.111.87

1.211.10.330.350.750.690.250.3

PHP&MySQL

1.331.270.260.11.131.010.250.1

SFTP

1.391.350.1401.061.030.110

1.441.210.6701.191.110.290

1.51.490.0701.331.20.540

1.531.530.090.90.890.870.091

1.561.550.100.970.960.070

1.581.580.060.050.980.870.210

SFTP

1.611.60.0701.721.690.120

1.611.560.1901.131.210.250

1.611.60.101.080.970.210

1.621.550.190.051.211.20.10.05

1.671.660.150.250.980.970.070.25

1.731.730.1101.061.050.090

1.771.80.2401.081.040.140

SFTP

1.831.850.2701.331.290.150

1.881.710.6901.531.520.330

1.9820.3301.191.150.110

新サーバー

2.112.030.350.41.441.360.40.2

2.141.920.6901.251.220.160

2.262.030.630.31.331.270.150.3

2.382.310.30.052.462.420.290.05

旧サーバー

2.482.280.550.151.921.780.520.05

2.622.41.022.81.841.740.631

2.922.51.1202.992.481.410

2.972.441.190.051.390.541.760

SFTP

32.990.2401.931.90.130

3.093.120.1601.361.330.120.05

3.413.410.0901.861.840.080

5.533.923.450.355.863.954.10.25

6.7500.730.28.7200.980.1

海外

11.611.60.4806.796.740.280

海外

12.112.10.507.477.450.190

海外

12.312.30.52010.910.31.350.05

海外

16.616.50.560.210.110.20.860.25

海外

33.430.27.130.1520.5201.830.05

hostingstockで測定した各レンタルサーバーのファイル転送性能です。詳細はリンク先をご覧ください。

旧サービスと比較すれば段違いに性能が向上しており、国内他社サービスと比較しても平均以上の性能があります。同じデータセンターにあるKAGOYAと似たような性能であり、測定結果に問題がないことも分かります。

上位にあるサービスを併用すると(遅くなくても)遅さを感じるかもしれませんが、JETBOYだけなら不満を感じることはありません。オリジナルサイトの開発など、FTPを頻繁に使用する作業でもストレスとならないでしょう。

測定結果(未加工データ)

  アップロード ダウンロード
3秒以上 2.73% (55) 0.10% (2)
中央値 1.59秒 0.87秒
平均値 1.66秒 1.00秒
ばらつき/標準偏差 0.44秒 0.41秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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