レンタルサーバーの料金差はディスク容量、転送量、ドメイン数、データベース数の差とも言えます。例えば、ロリポップ!におけるプラン間の差は下記の通りです。
| プラン | エコノミー | ライト | スタンダード | エンタープライズ |
|---|---|---|---|---|
| 月額料金 (標準) | 100円 | 300円 | 600円 | 2,300円 |
| ディスク容量 | 10GB | 50GB | 120GB | 400GB |
| 転送量 | 40GB/日 | 60GB/日 | 100GB/日 | 無制限 |
| ドメイン | 20 | 50 | 100 | 無制限 |
| MySQL | × | 1 | 30 | 100 |
この比較を見るとデータベース数 (MySQL) の差が大きいように思えます。最廉価プランでは非対応となり、エコノミーでは1つしか利用できません。例え数十個のドメインを使えたとしても、1つのデータベースでは、WordPressのようなCMS (要MySQL) を満足に利用することはできません。もちろん、1つのデータベースを複数のCMSで共有することもできますが、パフォーマンスの悪化や、管理の煩雑性を考慮するとあまりお薦めできません。
それでもランニングコストを下げたいのであれば、 Flat-File CMS という選択肢があります。Flat-File CMSはデータベースが不要 (一部は要SQLite) なので、エコノミープランであっても対応するドメインの数だけCMSによるサイトを立ち上げることができます。また、多くのFlat-File CMSはPHPで動作するため、ほとんどのレンタルサーバーで問題なく動作します。
以下、Flat-File CMS のメリットとデメリットを挙げます。
Flat-file CMSを利用するには少し注意が必要です。
以下は、W3Techsの2016年4月までのCMSに関する統計情報です。
CMSのシェアを示しています。CMSの中でWordPressが 6割 も占めていることが分かります。
さらに、世界中にあるサイトの 1/4 (26.4%) がWordPressで運用されています。
この情報からも分かりますが、WordPressは国内でも利用者が多く、大抵のトラブルに対する解決策が 日本語 でみつかります。
しかし、Flat-File CMS は利用者が少ないため、簡単な情報を探すことも難しいでしょう。日本語での情報はほとんど見つからないと思ってください。(この記事のように) 興味程度で利用する人はいても、継続して利用している方は多くありません。少なくとも簡単な英語が理解できなければ使うべきではありません。
PHP対応で無料のFlat-File CMSを掲載します。できるだけ有名かつメンテナンスが継続しているものを利用しましょう。マイナーなものは個人が趣味で開発しているものがあり、いつメンテナンスが終了してもおかしくありません。
| CMS | 開始時期 | 最終更新日 | 検索数 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| Blozilla | 2014 | 2015/10 | 59 | Markdown / Twig |
| Bludit | 2015/3 | 2016/2 | 10,500 | |
| FlatPress | 2007 | 2015/6 | 19,400 | Smarty |
| Typesetter | 2009 | 2016/4 | 372,000 | 旧gpEasy |
| Grav | 2014 | 2016/2 | 274,000 | Markdown / Twig |
| Herbie | 2014 | 2015/9 | 80,400 | Markdown / Twig / Yaml |
| HTMLy | 2014 | 2016/3 | 7,010 | Markdown |
| Monstra | 2012 | 2016/4 | 44,500 | |
| nibbleblog | 2009 | 2016/4 | 14,400 | |
| Phile | 2013 | 2016/4 | 47,800 | Markdown / Twig |
| Pico | 2013 | 2016/3 | 480,000 | Markdown / Twig |
| Razor | 2008 | 2015/2 | 486,000 | |
| Sphido | 2014/3 | 2016/3 | 93 | Markdown / Latte |
| Yellow | 2013 | 12.2016/4 | 68,800,000 | Markdown |
| Pluck | 2005 | 2015/10 | 132,000 | |
| 開発終了? | ||||
| WonderCMS | 2011 | 02014/22 | 1,910 | |
| TextPress | 2012 | 2014/3 | 4,440 | |
| la.Plume | 2008 | 2015/2 | 401,000 | |
| Baun | 2014年 | 2015年3月 | 815,000 | |
| Dropplets | 2013 | 2013年9月 | 4,900 | |
| Feindura | 2010 | 2014年9月 | 3,010 |
参考サイト 20 Flat-File-Systeme im Test
実際にどれだけ簡単に利用できるか紹介しましょう。
ここでは比較的知名度の高い、 Grav と Pico を利用します。対極的なアプリケーションであり、Picoは非常にシンプル、GravはWordPressのようなダッシュボードを備える本格的なものです。
PHPのバージョンを確認しましょう。GravはPHP 5.5以上が必要となり、レンタルサーバーによっては動作しません。
http://example.com/grav/ でアクセスする必要があります。http://example.com でアクセス可能とする場合、ドキュメントルート (ドメインに対する公開ディレクトリ) にインストールするか、mod_rewrite等でリダイレクト設定を行ってください。
PicoはシンプルなFlat-File CMSです。WordPressのような管理画面 (ダッシュボード) はなく、全ての設定や記事作成をテキストファイルの編集で対応します。仕組みがシンプルな分、理解できればカスタマイズしやすいともいえます。
HTMLは Twig によって生成されるため、オリジナルのデザインを作成するならTwigの知識が必須です。記事は Markdown形式 に対応しており、フォーマットに従ってテキストファイル (.md) を作成します。1ファイル = 1記事 となります。
それではインストールから、デザインの変更、記事の投稿までを試してみましょう。
DOWNLOAD をクリックします。
DOWNLOAD PICO x.x.x をクリックします。
pico-release-v[最新].tar.gz をダウンロードします。
http://初期ドメイン/pico/ でアクセスできます。
/example.com に アップロードします。
これで、インストールは完了です。簡単ですね。
http://初期ドメイン/pico/ にアクセスします。デザインを変更してみましょう。
Picoの公式サイトでテーマを配布しているので、それを利用します。
CUSTOMIZATION をクリックします。Magazine の Download をクリックします。
Download ZIP をクリックします。/magazine-master というフォルダが作成されます。
/plugins を /plugins.bak とします。/plugins を移動します。/content-sample を /content-magazine に変更して移動します。/magazine を /themes に移動します。config.php.template を複製し、config.php とします。
config.php を編集します。最低限の設定です。要変更
$config['site_title'] = 'サイトのタイトル名 (任意)';
$config['theme'] = 'magazine';
$config['pages_order_by'] = 'date';
$config['content_dir'] = 'content-magazine/';
要追加 (内容は適当でも構いません。)
$config['author'] = 'Your Name';
$config['authordescription'] = 'Web Developer';
$config['authortwitter'] = 'https://twitter.com/YourUsername';
$config['authorfacebook'] = 'https://facebook.com/YourPage';
$config['authorinstagram'] = 'https://www.instagram.com/YourUsername';
$config['authorimage'] = 'http://yoursite.com/images/yourphoto.jpg';
$config['numPerPage'] = 16; // 1ページに表示する記事の数
これで、テーマが変更されます。
content-magazine が content-magazine に変更されたため。記事を投稿してみましょう。投稿と言っても、管理画面がないためファイル (.md) を作成し編集します。
/content-magazine 内に作成します。.md とします。
page.md を参考に記事を作成します。
sample-page.md とします。Title: <title> と記事のタイトルに利用。
Template: テンプレート名 (変更不可)。
Thumbnail: インデックスページに表示される画像。
Category: カテゴリー名 (任意)。
Date: <meta property="article:published_time"> と記事の作成日に利用。
Description: <meta name="description"> に利用。
Featured: 記事に表示される画像。
Purpose: プラグイン名 (変更不可)。
Webサイトを更新すると、記事が1つ増えたことを確認できます。
どうですか? WordPressを使わなくても綺麗なサイトを作れます。
管理画面がないため、初心者には敷居が高いかもしれませんね。
Gravは管理画面 (ダッシュボード) を持つ本格的なCMSです。Picoと正反対であり、WordPressライクな使い勝手を実現しています。Picoと異なり、初心者でも簡単に使うことができるでしょう。プラグインやテーマも豊富にあります (WordPressと比べると少しですが)。
Twig によってHTMLが生成され、 Markdown形式 で記事を作成できます。1ファイル = 1記事 となりますが、ダッシュボードで操作するならファイルを意識することもありません。
それではインストールから、デザインの変更、記事の投稿までを試してみましょう。
DOWNLOADS をクリックします。
GRAV CORE + ADMIN PLUGIN をクリックします。
GRAV CORE は管理ツールが付属しません。
http://初期ドメイン/grav/ でアクセスできます。
/example.com にアップロードします。これでインストールは完了です。簡単ですね。
http://初期ドメイン/grav/admin/ にアクセスします。
http://example.com/grav/admin/ にアクセスします。Create User をクリックします。
これでダッシュボードの準備が完了しました。
http://初期ドメイン/grav/ にアクセスします。
http://example.com/grav/ にアクセスします。これでGravが問題なく動作することを確認できました。
それでは、テーマを変更してみましょう。Picoと異なりダッシュボードで変更できるため、ファイル操作は不要です。
Themes を選択します。+Add をクリックします。
Materialize を選択します。+Install をクリックします。
– テーマがインストールされました。
Back to Themes をクリックします。
Activate をクリックします。Continue をクリックします。これでテーマが変更されました。サイトを更新してみましょう。
同じ記事で、テーマだけ変更されたことを確認できます。
このままでは素っ気ないので、タグ機能とアーカイブ機能を追加します。
Plugins を選択します。+Add をクリックします。
以下のプラグインをインストールします。
正しく設定された記事が投稿されるまで、プラグインの効果は分かりません。
それでは記事を投稿してみましょう。
以下の様な構造となるように、複数の記事を作成します。
Pages を選択します。+Add Page をクリックします。
記事の情報を入力します。
Blog、子ページを Item とします。No にします。
Tag を作成する必要があります。
blog をクリックします。最初のデザインと比較して、ブログっぽい感じになったと思いませんか?
例えば、サイドメニューにある A Text Widget はソース内に記述してあり、ダッシュボードでは操作できません。
/grav/user/themes/materialize/templates/partials/sidebar.html.twig
変更するには、このTwigファイルを編集する必要があります。