上位クラスの転送性能だが、少し気になる部分も!QuiccaのFTP性能の評価

前回、Quicca(クイッカ)のファイル転送性能(FTP性能)を評価してから1年ほど経過しました。前回の測定結果は平均的なものであり、とくに問題のある結果ではありませんでした。

この1年間でハードウエア等が大幅に更新されたというアナウンスはありません。しかし、定期的なメンテナンスは実施されており、前回より改善されている可能性があります。そこで、久しぶりにファイル転送性能を再測定しました。

レンタルサーバーを選ぶときに、ファイル転送性能(FTP性能)を気にする人はほとんどいません。例えば、第三者が開発したプラグインやテーマを利用するだけのWordPress運用なら、FTPの使用頻度は高くありません。しかし、WordPressテーマ(デザイン)の開発やオリジナルサイトの運用なら、転送速度の遅さは作業効率を悪化させ、ストレスの原因にもなります。

用途や目的によって、ファイル転送性能も重要な検討項目です。レンタルサーバーを選ぶときの絶対的な条件ではありませんが、あらかじめ確認しておけば後悔することもないでしょう。

Quiccaの全てが分かる
Quiccaのレビュー

Quiccaのファイル転送機能に関する仕様

プラン エントリー ライト スタンダード プレミアム
アカウント 無制限 無制限 無制限 無制限
FTP/FTPS

通常のFTPだけでなく、セキュアなFTPSにも対応しています。アカウント数は全プラン無制限であり、常識的な範囲内であれば幾つでもアカウントを発行できます。

アカウントごとにアクセス可能なディレクトリを設定でき、それより上位ディレクトリへは移動できません。第三者へのアカウント発行に便利な仕様となっています。

追加アカウントのディレクトリに、契約者のホームディレクトリ(/home/アカウントID)を指定することはできません。全てのサイト(ドメイン)のデータを横断的に操作するなら、契約時に発行される初期アカウントを利用しましょう。

その他
アカウントごとにクオータ(容量制限)の設定が可能です。
SCP、SFTP、WebDAVに非対応です。

測定方法

  • Webページを構成するファイルのアップロードとダウンロード
    • テキストファイルや画像ファイル
    • (HTTP)レスポンス性能の評価に利用しているサイト(ページ)を構成するデータ群
  • 合計ファイルサイズは約2MB(約20ファイル)

最大3つのファイルを並列転送します。レンタルサーバーがそれ以上の同時接続を許可していて、FTPクライアントも並列転送に対応していれば、この測定結果より早く転送できることになります。

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)」の約2,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者数(訪問者数)が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということを推測できます。

測定経路

あくまでも推測ですが、QuiccaはAWS(Amazon Web Services)で運用されているようです。AWSのデータセンター情報は非公開であり、東京または大阪にあること以外は分かりません。

経路探索を実行すると終端は「ap-northeast-1.compute.amazonaws.com」となっており、「ap-northeast-1」は東京リージョンを示しています。各所からのpingの結果も東京にあることを示しています。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(関西電力)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定元のサーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  アップロード ダウンロード
有効測定 1,998回 1,996回
棄却検定除外 1.60% (32) 1.40% (28)
棄却検定閾値 1.97秒 1.33秒
エラー 0.90% (18) 1.00% (20)
3秒以上 0.10% (2) 0% (0)
中央値 1.53秒 0.87秒
平均値 1.53秒 0.89秒
ばらつき/標準偏差 0.09秒 0.09秒
測定結果について
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定Grubbs' test(α=0.001)により省いています。これはネットワークや測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、転送時間の 約68%平均値 ± ばらつき に、約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど転送性能が安定しています。

Quiccaの評価

前回の結果と平均値だけを比較すれば、確実に改善されたことが分かります。

しかし、前回よりエラーは増加しています。決して多いわけではありませんが、少し気になります。例えば、一時的なトラブルが原因であれば問題ありませんが、測定期間中、偏りなく発生しています。同時期にWebサイトのレスポンス性能も測定していますが、そちらでは問題は発生していません。つまり、測定元からサーバーまでの経路に問題はなかったようです。あくまでも推測ですが同時接続数など、FTPの環境が弱い可能性はあります 。

とは言え、全体的に転送性能は高く安定しており、何をするにも問題がない性能を有しています。

他のレンタルサーバーとの比較

プロバイダー 環境など アップロード ダウンロード
公式サイト 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.750.740.050.10.480.440.10.05

0.750.750.050.20.490.440.130.1

0.840.740.2400.730.640.180

0.860.850.060.10.590.510.190.1

0.90.70.4200.690.580.30

0.950.880.240.20.710.620.260.1

0.950.830.320.20.720.660.270.1

WordPress

0.990.880.320.250.710.590.280.35

1.040.780.4900.720.620.30

1.050.860.440.250.720.610.320.05

1.10.840.480.20.860.720.380.2

1.111.10.083.170.730.70.111.87

1.211.10.330.350.750.690.250.3

PHP&MySQL

1.331.270.260.11.131.010.250.1

SFTP

1.391.350.1401.061.030.110

1.441.210.6701.191.110.290

1.51.490.0701.331.20.540

1.531.530.090.90.890.870.091

1.561.550.100.970.960.070

1.581.580.060.050.980.870.210

SFTP

1.611.60.0701.721.690.120

1.611.560.1901.131.210.250

1.611.60.101.080.970.210

1.621.550.190.051.211.20.10.05

1.671.660.150.250.980.970.070.25

1.731.730.1101.061.050.090

1.771.80.2401.081.040.140

SFTP

1.831.850.2701.331.290.150

1.881.710.6901.531.520.330

1.9820.3301.191.150.110

新サーバー

2.112.030.350.41.441.360.40.2

2.141.920.6901.251.220.160

2.262.030.630.31.331.270.150.3

2.382.310.30.052.462.420.290.05

旧サーバー

2.482.280.550.151.921.780.520.05

2.622.41.022.81.841.740.631

2.922.51.1202.992.481.410

2.972.441.190.051.390.541.760

SFTP

32.990.2401.931.90.130

3.093.120.1601.361.330.120.05

3.413.410.0901.861.840.080

5.533.923.450.355.863.954.10.25

6.7500.730.28.7200.980.1

海外

11.611.60.4806.796.740.280

海外

12.112.10.507.477.450.190

海外

12.312.30.52010.910.31.350.05

海外

16.616.50.560.210.110.20.860.25

海外

33.430.27.130.1520.5201.830.05
注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

未加工データ

  アップロード ダウンロード
中央値 1.53秒 0.87秒
平均値 1.55秒 0.90秒
ばらつき/標準偏差 0.35秒 0.12秒

測定結果について
レンタルサーバーは1つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。測定結果はその中の1つに過ぎません。契約時期で割り当てられるサーバーのスペックは異なり、さらに、同じサーバーに収容される他契約者の負荷に大きく左右されます。

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