一時的な不安定さが気になるWebサイトの表示速度!Quiccaの評価と比較

Quicca(クイッカ)はMfro(エムフロ)が運営する、「90円」から利用できる低価格レンタルサーバーです。姉妹サービスにクラスC分散IP対応のIQ SERVERや、ドメインサービスのQドメインがあります。さらに詳しい情報はQuiccaのレビューを参考にしてください。

hostingstockでは継続的に様々な性能評価を実施しており、 Quiccaに対しても約一年前にWebサイトの レスポンス性能評価 を実施しています。 前回の測定時と比較してハードウェアの更新はないようですが、定期的なメンテナンスは実施されており、何かしら改善されている可能性があります。そこで、久しぶりにWebサイトのレスポンス性能を測定しました。

レンタルサーバーを選択する際、大切なポイントは「Webサイトの表示速度」です。いくら豊富な機能に対応しても、運営サイトのレスポンスが悪ければ絵に描いた餅です。訪問者を自分に置き換えれば、なかなか開かないページにイライラすることは想像に難くないでしょう。そして、レスポンスの悪さは検索順位にも悪影響です。

ここではQuiccaで稼働しているWebサイトのレスポンス性能を評価し、他のレンタルサーバーとの比較を行います。

Quiccaの全てが分かる
Quiccaのレビュー

表示速度の重要性

様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。

コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 訪問者の40%がサイトから離脱(データによっては57%)
    • 訪問者の47%は2秒以内の読み込みを希望
  • 訪問者の79%は、そのサイトを再訪しない

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • 10万ドル/日を売り上げるサイトであれば、1秒の遅れで250万ドル/年の損失
    • Amazonであれば1秒の遅れで、16億ドルの機会損失
  • モバイル環境(スマートフォンなど)ではネットワーク環境が貧弱なこともあり、より厳しい評価となります

快適なWebサイトの条件は、 「最低でも3秒以内」 「理想は2秒以内」 のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要な情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。

参考
How Loading Time Affects Your Bottom Line
The Cost of Poor Web Performance - INFOGRAPHIC
hostingstockの測定結果について
端末(パソコンやスマートフォン)のレンダリング等の処理時間を含みません。理由は訪問者の端末性能やブラウザの種類により、処理時間が大きく異なるためです。つまり、測定結果はWebページを構成するデータを受信するために必要な時間を示しています。実際にWebページが表示されるまでには、HTML解析やJavaScript処理などを含む描画時間が加算されます。

測定方法

測定用サーバーから定期的にアクセスして、Webページの取得に要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。より詳しい内容は こちら を参考にしてください。

測定対象  
動的ページ(WordPress) WordPressサイト(PHP&データベース)。コンテンツは平均的なウェブページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。
静的ページ(HTML) HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとデータベースを使用しません。
外部サービスを利用しない理由
PingdomやGTmetrixでレンタルサーバーの性能を評価しても意味がありません

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに2回の測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)×2回」の約4,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「利用者や訪問者が測定時だけ少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者や訪問者が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、訪問者が多くなり負荷が高くなる夜間と、負荷の下がる深夜との差が小さければ、負荷に強いサーバーであることを推測できます。

測定経路

あくまでも推測ですが、QuiccaはAWS(Amazon Web Services)で運用されているようです。AWSのデータセンター情報は非公開であり、東京または大阪にあること以外は分かりません。

経路探索を実行すると終端は「ap-northeast-1.compute.amazonaws.com」となっており、「ap-northeast-1」は東京リージョンを示しています。各所からのpingの結果も東京にあることを示しています。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(インターネットプロバイダ)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定用サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

ネットワーク環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターとサーバーは有線接続

測定結果

  動的ページ(WordPress) 静的ページ(HTML)
有効測定 4,032回 4,032回
棄却検定除外 6.23% (251) 0.60% (24)
棄却検定閾値 1.73秒 0.88秒
エラー 0% (0) 0% (0)
3秒以上 3.32% (134) 0% (0)
中央値 0.86秒 0.49秒
平均値 0.91秒 0.51秒
ばらつき/標準偏差 0.16秒 0.07秒
測定結果について
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定Grubbs' test(α=0.001)により省いています。これはネットワークを含む測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、レスポンスの 約68%平均値 ± ばらつき に、 約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。ばらつきが小さいほどレスポンスが安定します。

Quiccaの評価

前回の結果と比較してやや改善されたように見えますが、棄却検定による除外数は大幅に増加(約6%)しています。ページ最後に掲載している未加工データを見れば、レスポンスが一時的に悪化する傾向を確認できます。アクセス数の増える(負荷の高くなる)夜間だけに限らないようです。

静的ページ(HTML)の結果にそのような変動がないことから、 PHPまたはデータベース(MySQL)の処理の遅さが原因であることに間違いありません。 静的ページは改善されているため、ネットワーク環境が更新された可能性はありますが、サーバー自体の性能が更新された様子はありません。

前回と比較にならないばらつきであり、今回利用したサーバーが「ハズレ」であった可能性はあります。 共用サーバーなので収容ユーザーの影響による当たり外れは避けられませんが、ここまで変動の大きい結果を見たのは久しぶりです。以前と同じ環境のまま、単純に収容数を増やした結果でなければ⋯⋯と思います。

これだけの変動がありながらもエラーは発生していないため、不安定との評価はできませんが、 棄却検定で除外された約6%の平均値は「4.16秒」となります。この数値を許容できるかどうかは契約者次第でしょう。

低価格帯サービスとはいえ、少し不安な結果となりました。

ロリポップ!、さくらインターネット、ミニバードとの比較

  Quicca
(PHP5)
ミニバード
(PHP7)
さくらインターネット
(PHP5)
ロリポップ!
(PHP5)
有効測定 4,032回 4,030回 4,032回 4,022回
棄却検定除外 6.23% (251) 2.23% (90) 2.18% (88) 1.89% (76)
棄却検定閾値 1.73秒 2.29秒 0.98秒 1.44秒
エラー 0% (0) 0% (0) 0% (0) 0.25% (10)
3秒以上 3.32% (134) 1.84% (74) 0.02% (1) 0.07% (3)
中央値 0.86秒 0.59秒 0.71秒 0.86秒
平均値 0.91秒 0.63秒 0.72秒 0.89秒
ばらつき/標準偏差 0.16秒 0.33秒 0.05秒 0.11秒
変動係数 17.6% 52.4% 6.94% 12.4%
測定結果について
動的ページ(WordPress)の比較です。グラフのX軸は7日間を4時間毎に区切ったものです。
変動係数は「平均値に対する変動の割合」を示します。平均値(処理時間)が同じであっても、数値が大きいほどばらつきます。

他社レンタルサーバーと比較してみましょう。比較対象は、ミニバード(minibird)、さくらインターネット、ロリポップ!(Lolipop!)です。

PHPのバージョンについて
記事作成時、さくらインターネット、Quicca、ロリポップ!はPHP7に対応していません。

平均値だけならミニバードが最も優秀な結果となっています。 しかし、時間帯によるばらつきが大きく、グラフでも分かりますが転送速度が安定していません。 サーバー性能が低いためか、アクセス数(負荷)に応じてレスポンス性能も変動します。 そのため、アクセス数の少ない深夜から早朝に掛けて、パフォーマンスが最も高くなります。 アクセス数に応じた素直な変動でありエラーは皆無です。安価な基本料金(250円/月〜300円/月)を考慮すれば、コストパフォーマンスは優秀でしょう。

次点はさくらインターネットとなります。「The 標準」のような性能であり、決して高性能ではありませんが、非常に安定しています。未加工データを見れば、他社と比較してばらつきのなさを確認できるでしょう。

ロリポップ!はライトプランの結果であり、ミニバードと同様に安価な基本料金(250円/月〜300円/月)を考慮すれば、十二分な性能です。夜間帯に性能が低下する傾向にありますが、かなり良好な結果でしょう。上位プランはモジュール版PHPに対応しており、さらにレスポンス性能が向上します。

これらと比較してQuiccaは一歩劣ると言わざるを得ません。レスポンス性能だけでなく、(データ)転送量制限が厳しく、最上位プラン以外はCron非対応(オプション)など、機能的にも劣ります。性能や機能に大きな問題があるわけではありませんが、同じ料金帯の他社サービスと比較すると、積極的におすすめできるポイントがありません。

「90円からのレンタルサーバー」となっていますが、最廉価プランはデータベース非対応です。WordPress等を運用するならライトプラン以上が必要です。もし、安価なサービスを検討しているのなら、100円でデータベースにも対応するドメインキングを検討するとよいでしょう。

各サービスの公式サイト
  Quicca / ミニバード / ロリポップ! / さくらインターネット / ドメインキング

未加工データ

  Quicca
(PHP5)
ミニバード
(PHP7)
さくらインターネット
(PHP5)
ロリポップ!
(PHP5)
3秒以上 3.32% (134) 1.84% (74) 0.02% (1) 0.07% (3)
中央値 0.87秒 0.59秒 0.71秒 0.86秒
平均値 1.11秒 0.77秒 0.74秒 0.91秒
ばらつき/標準偏差 1.06秒 1.25秒 0.12秒 0.22秒
変動係数 95.5% 162.3% 16.2% 24.2%

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450
注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

未加工データ

  動的ページ(WordPress) 静的ページ(HTML)
3秒以上 3.32% (134) 0% (0)
中央値 0.87秒 0.49秒
平均値 1.11秒 0.52秒
ばらつき/標準偏差 1.06秒 0.09秒

測定結果について
レンタルサーバーは1つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。測定結果はその中の1つに過ぎません。契約時期で割り当てられるサーバーのスペックは異なり、さらに、同じサーバーに収容される他契約者の負荷に大きく左右されます。

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