WADAXのFTPレスポンス性能を他のレンタルサーバーと比較・評価する

簡単インストール機能や自動インストール機能で提供されるWordPress等のアプリケーションを、そのまま運用するだけならFTPの利用頻度は少ないかもしれません。しかし、オリジナルのWebサイト、Webアプリケーションを開発するなら、レンタルサーバーのFTP性能を無視することはできません。

頻繁にファイルをアップロード・ダウンロードしたり、サーバーにあるファイルを編集するなら、レスポンスの悪いレンタルサーバーを選ぶと非常にストレスとなり、作業効率も悪くなります。

それでは、WADAX (ワダックス) のFTPレスポンス性能について評価し、他のレンタルサーバーと比較してみましょう。

FTP仕様

プラン ブロンズ
TypeB
シルバー
TypeS
ゴールド
TypeG
プラチナ
TypeP
(メイン) アカウント 1 10 20 30
サブアカウント 0 10 20 30

通常のFTPだけでなく、セキュアなFTPS (FTP over SSL/TLS) にも対応しています。

メインアカウントは、登録した独自ドメイン毎に自動生成されます。つまり、メインアカウント数=マルチドメイン数 となります。TypeSプラン以上であればサブアカウントを発行することができます。

プラン毎のサブアカウント数はドメイン毎の上限となります。例えば、TypeSプランであれば ドメイン10個×サブアカウント10個 となり、最大100個 のサブアカウントを利用できます。

WADAXでは他のレンタルサーバーのように、アカウント毎にアクセス可能なディレクトリを設定することはできません。

測定方法

  • Webページを構成するファイルのアップロードとダウンロード
    • テキストファイルや画像ファイル
    • (HTTP) レスポンス性能の評価に利用しているサイト (ページ) を構成するデータ群
  • 合計ファイルサイズは約1.8MB (約20ファイル)

最大3つのファイルを並列転送します。レンタルサーバーがそれ以上の同時接続を許可していて、FTPクライアントも並列転送に対応していれば、この測定結果より早く転送できることになります。

5分毎 にアップロードとダウンロードを実行します。

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定と言っても一度きりでは意味がないので、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果を出すことを (完全ではありませんが) 省けます。

一定期間測定することで、利用者数 (訪問者数) が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということが推測できます。

測定経路

家庭用回線からの測定となります。サーバーは測定専用として測定以外の処理は行っていません。

家庭用回線の測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  アップロード ダウンロード
有効測定数 (回) 1,961 1,996
Grubbs’ testによる除外数 (割合) 15 (0.76%) 5 (0.25%)
Grubbs' testの閾値 7.36秒 4.75秒
エラーの割合 (回) 2.80% (55) 1.00% (20)
5秒以上の割合 (回) 3.16% (62) 0.20% (4)
10秒以上の割合 (回) 0.20% (4) 0% (0)
中央値 (秒) 2.40 1.74
平均値 (秒) 2.62 1.84
ばらつき / 標準偏差 (秒) 1.02 0.63
エラー 内容
アップロード (55) Bad PASV/EPSV response: 425 (39)
server did not report OK, got 450 (8)
Send failure: Broken pipe (7)
Access denied: 530 (1)
ダウンロード (20) Bad PASV/EPSV response: 425 (19)
Access denied: 530 (1)

有効測定数はエラーを省いた回数を示します。測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態 (混雑具合) が変動するため、集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定Grubbs’ test (α=0.001) により省いています。生データ (未加工データ) は最後に掲載しています。

WADAXの評価

平均値だけなら他のレンタルサーバーと比較しても、良くも悪くもない 標準的な結果 です。しかし、エラー数が非常に多い点が気になります。他のレンタルサーバーでもエラーは発生しますが、そのほとんどは1%未満です。

ここまでエラーが多いと、測定プログラムまたはネットワークに問題がありそうですが、同じ時期にHTTPレスポンス (Webサーバー) も測定しており、エラーは発生していません。そもそもプログラムに問題があれば、全てがエラーになりそうなものです。エラーが発生するタイミングに傾向はありません。特定の日時に集中することなく、測定期間を通して発生しています。

エラーについてあれこれ考察しても意味がありませんが、前回の測定ではほとんどエラーが発生していません。

WADAXのFTPレスポンス性能を評価する

前回とは測定プログラムが更新されています。前回が1ファイルずつ転送 (処理) するのに対して、今回は3ファイルを上限として連続的に並列転送しています。レンタルサーバーの中には、セキュリティ対策として連続アクセスを不正検知するものもあります。特にWADAXはセキュリティ対策に力を入れているため、今回の不具合と関係ないとは言えません。

あくまでも推測ですが、このような長期にわたる定期的なアクセスは、セキュリティに引っかかるのかもしれません。まぁ、これだけエラーが頻発するようであれば問題となっているはずなので、やはり測定方法とサーバー (セキュリティ的な) の相性なのでしょう。そう考えると、セキュリティ的に信頼性の高いレンタルサーバーともいえます。

(本当の)原因は不明なので、エラーを除外して測定結果を見てみましょう。

平均的な転送速度に問題はありませんが、統計的にもグラフ的にも ばらつきが大きい ことがわかります。ばらつきが大きいということは、操作のタイミングによりレスポンスが変化しやすいことになります。例えば、ディレクトリの移動に時間が掛かったり、すぐにアップロードが終わるときもあれば、なかなかアップロードが終わらないときもある、ということです。

実際にWADAXを契約し、FTPクライアントでファイルを操作してみましたが、少しもたつく感じはあります。もし、レスポンスの良いレンタルサーバーの利用経験があるなら、若干ストレスとなるでしょう。

他のレンタルサーバーとの比較

プロバイダー 環境など アップロード ダウンロード
公式サイト 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.750.740.050.10.480.440.10.05

0.750.750.050.20.490.440.130.1

0.840.740.2400.730.640.180

0.860.850.060.10.590.510.190.1

0.90.70.4200.690.580.30

0.950.880.240.20.710.620.260.1

0.950.830.320.20.720.660.270.1

WordPress

0.990.880.320.250.710.590.280.35

1.040.780.4900.720.620.30

1.050.860.440.250.720.610.320.05

1.10.840.480.20.860.720.380.2

1.111.10.083.170.730.70.111.87

1.211.10.330.350.750.690.250.3

PHP&MySQL

1.331.270.260.11.131.010.250.1

SFTP

1.391.350.1401.061.030.110

1.441.210.6701.191.110.290

1.51.490.0701.331.20.540

1.531.530.090.90.890.870.091

1.561.550.100.970.960.070

1.581.580.060.050.980.870.210

SFTP

1.611.60.0701.721.690.120

1.611.560.1901.131.210.250

1.611.60.101.080.970.210

1.621.550.190.051.211.20.10.05

1.671.660.150.250.980.970.070.25

1.731.730.1101.061.050.090

1.771.80.2401.081.040.140

SFTP

1.831.850.2701.331.290.150

1.881.710.6901.531.520.330

1.9820.3301.191.150.110

新サーバー

2.112.030.350.41.441.360.40.2

2.141.920.6901.251.220.160

2.262.030.630.31.331.270.150.3

2.382.310.30.052.462.420.290.05

旧サーバー

2.482.280.550.151.921.780.520.05

2.622.41.022.81.841.740.631

2.922.51.1202.992.481.410

2.972.441.190.051.390.541.760

SFTP

32.990.2401.931.90.130

3.093.120.1601.361.330.120.05

3.413.410.0901.861.840.080

5.533.923.450.355.863.954.10.25

6.7500.730.28.7200.980.1

海外

11.611.60.4806.796.740.280

海外

12.112.10.507.477.450.190

海外

12.312.30.52010.910.31.350.05

海外

16.616.50.560.210.110.20.860.25

海外

33.430.27.130.1520.5201.830.05

他のレンタルサーバーと比較すると、平均的な性能です。今回の測定ではエラーが多発しましたが、測定プログラムとの相性やセキュリティ対策が原因かもしれないため、参考程度にしてください。

データについて
最新のデータが表示されるため、説明と異なる場合があります。
Grubbs’ test
グラブス検定により外れ値を除外しています。一時的なネットワークやサーバーの高負荷状態による異常値を省きます。グラブス検定を適用していない結果と比較して、良い結果となる傾向が高くなります。

測定結果 (未加工データ)

  アップロード ダウンロード
有効測定数 (回) 1,961 1,996
5秒以上の割合 (回) 3.93% (77) 0.20% (4)
10秒以上の割合 (回) 0.20% (4) 0% (0)
中央値 (秒) 2.41 1.75
平均値 (秒) 2.68 1.85
ばらつき / 標準偏差 (秒) 1.21 0.66

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス (プラン) に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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