Z.com WordPress専用サーバーのサーバー性能を他のレンタルサーバーと比較・評価する

Z.com (ゼットコム) WordPress専用サーバーはGMOインターネット株式会社が運営するサービスであり、SSD採用の高性能サーバーや時間単位の従量制課金が特徴のレンタルサーバーです。グローバルサービスであり、リージョン (データセンター) を選択することができます。現在は、日本 (東京) 、アメリカ、シンガポールから選択でき、順次他の地域にも拡大されます。

WordPress専用となっているだけあり、(工夫をしなければ) 他のCMSなどは利用できません。またこの記事を読むと分かりますが、かなり制限の多いレンタルサーバーです。単純にWordPressを利用するだけなら、レスポンスも良いオススメのサービスです。しかし、WordPress上で高機能サービスを提供するような高度な用途の場合、その制限がトラブルの原因となる可能性があります。

レンタルサーバーは安いものから高いものまで、様々なサービスがあります。そして、利用料金が安いレンタルサーバーであっても機能が豊富で、高いサービスと仕様や機能に差がないものが多くあります。

一概には言えませんが、利用料金の差は 処理性能安定性能 にあります。処理性能が高いほどレスポンスが良くなり、訪問者にとって快適なサイトとなります。全体的なレスポンスが良くなり、契約者 (サーバー管理者) にとってもサーバーを快適に操作できるというメリットになります。さらに、レスポンスの優れたサイトほどGoogleの評価が高くなるなど、サーバー性能はレンタルサーバーを選択する際に重要な要素となります。

それでは、Z.com (ゼットコム) のサーバー性能について評価し、他のレンタルサーバーと比較してみましょう。

測定方法

WordPressを設置したサイト(サーバー)を利用します。

  • 「ランダムな3,000文字/記事 (の自動生成) 」の投稿と削除
    • 100記事をまとめて投稿、投稿後に全削除
  • 投稿と削除はWordPressの標準関数を利用
    • wp insert post、wp delete post

これらの処理を 5分間隔 で実行し、処理時間を測定します。つまり、 PHPとデータベースの処理性能 を確認することになります。データセンター内で完結する処理なので、ネットワーク環境 (速度) の影響は受けません。

負荷について
100件程度は大した負荷ではありませんが、共用サーバーなので連続処理とならないように、1件毎にwait処理を差し込んでいます。

測定結果

測定結果について
72時間 (3日間) の測定結果となります。X軸は時刻(0時~24時)を表し、各時刻の値は3日間の平均値です。
有効測定数はエラーを省いた回数を示します。測定実行のタイミングによりサーバーの状態 (混雑具合) が変動するため、集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定Grubbs’ test (α=0.001) により省いています。
結果 有効測定数 除外数 エラー 中央値 平均値 ばらつき
Raw (未加工) 414回
(864)
- 52.08%
(450回)
6.78秒 6.89秒 0.80秒
Grubbs' test 0.00%
(0回)
エラー  
404 Not found 450回

Z.com WordPress専用サーバーの評価

測定結果の約半数がエラーということで、詳しく評価しても意味がありません。一つ言えることは、やはりWordPressを介さないアクセスは不可解なエラーが頻発します。下記でWebサイトのレスポンス測定を実施していますが、WordPress以外へのアクセスは非常に不安定 (仕様?) であることが分かります。

Z.com WordPress専用サーバーのレスポンス性能を他のレンタルサーバーと比較・評価する

サービス開始間もないため、どうにも設定の詰めが甘いような気がします。もちろんWordPress のみ 利用するだけなら、なんら問題ありません。しかし、「単純にWordPressを使う」以外のことにトライすると、すぐに破綻しそうな感じはあります。

例えば、Z.comのWordPressサービスには cron がありません。この測定では外部サーバーから定期的にアクセスしスクリプトを実行しています。つまり、コンテンツの自動更新などを同様の方法で実行すると、同じ症状に悩まされることになります。

エラーの原因はフロントエンドの処理にありそうです。(Z.comの) サーバー側でもログを保存していますが、エラー時はアクセスそのものが発生していません。つまり、スクリプトが呼び出されるより前に、エラーレスポンスが返されています。しばらく時間が経つと不具合が解除されるため、キャッシュに関連する何らかの処理が発生しているようです。つまり、他のレンタルサーバーの測定結果と異なり、このエラーはPHPやデータベースを起因とするものではありません。

この測定結果だけを見ると、あまりサーバー性能は高くないようです。基本的な処理時間が遅く、時間帯による変動も小さくありません。他のタンタルサーバーと比較しても、安定はしていないようです。

仕様上の問題かもしれませんが、癖のあるレンタルサーバーです。とは言え、単純にWordPressを使ってみたいという初心者であれば、特に問題は発生しないでしょう。しかし、他のサービスからZ.comへ引っ越すなら、本稼働前に1週間程度のテストは必要でしょう。

ばらつき (標準偏差)
統計的な話ですが、処理の約68% が 平均値 ± ばらつき に、約95% が 平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど処理性能が安定しているといえます。

Z.com (共用サーバー)、ロリポップ!、エックスサーバーとの比較

  Z.com WP Z.com 共用 ロリポップ! エックスサーバー
有効測定数 414 864 858 864
除外数 (回) 0.00%(0) 0.00%(0) 0.58%(5) 0.23%(2)
エラー (回) 52.1%(450) 0.00%(0) 0.00%(0) 0.00%(0)
中央値 6.78秒 3.00秒 3.86秒 3.91秒
平均値 6.89秒 3.14秒 3.87秒 4.00秒
ばらつき 0.80秒 0.53秒 0.17秒 0.63秒

同社の共用レンタルサーバー、ロリポップ!、エックスサーバーとの比較です。

Z.comのWordPress専用サーバーの有効測定数は半分程度しかありませんが、それでも明らかに処理性能が劣ることが分かります。しかし、関連記事を確認すると分かりますが、Webサイトのレスポンス性能は上位の性能があります。つまり、他より劣るサーバー性能をキャッシュ機能で補っているようです。

キャッシュ機能はレスポンス性能が大きく改善されるというメリットもありますが、デメリットもあります。一般的な用途であれば問題は少ないでしょうが、キャッシュ機能を原因となるトラブルが発生した場合、個人での対処が困難に思えます。

例えば、エックスサーバーが運営するWordPress専用サービス wpX であれば、キャッシュ機能に詳細な設定があり、キャッシュの適用範囲を自由に調整可能です。Z.comでは有効と無効の切り替えかしかなく、トラブルが発生した場合、キャッシュを無効にするか、キャッシュを削除するかの二択となります。

(少なくとも現時点では) あまり良いサービスとは言えません。それでも興味があれば、初期費用が不要かつ時間単位 (1.3円/時間)で利用できるので、とりあえず1週間程度試用してから本格利用を検討しても良いでしょう。1週間ならたったの約220円 (1.3×24×7) です。

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト 環境 平均値 ミリ秒中央値 ミリ秒標準偏差 ミリ秒エラー %

1.71.670.070

PHP7/CGI

1.821.830.220

1.941.950.070

PHP7/CGI

2.0220.140

PHP7

2.152.120.321

2.162.170.080

PHP7

2.172.130.240

2.182.150.30

2.242.250.280

PHP7/FastCGI

2.282.230.250

PHP5/CGI

2.42.410.270

PHP5/CGI

2.412.390.150

2.522.430.330

PHP7

2.712.680.348

2.722.660.3735

PHP7/FastCGI

2.732.70.30

PHP5/FastCGI

2.732.680.270

2.862.860.090

PHP5

3.032.960.380

3.13.150.310

PHP7/Module

3.113.120.080

PHP&MySQL

3.113.010.330

3.133.140.070

PHP5/FastCGI

3.143.090.210

3.142.90.630

3.142.960.680

PHP7/CGI

3.193.190.130

3.23.180.110

PHP5

3.513.470.398

PHP5/FastCGI

3.613.60.40

3.643.60.290

WordPress

4.183.891.090

PHP7

4.224.070.470

4.224.270.30

4.424.430.180

4.54.470.580

PHP5/CGI

4.564.450.560

PHP5

4.964.860.450

PHP5/Module

5.124.960.80

PHP7

5.164.242.230

5.184.691.240

5.255.210.320

PHP7

5.255.170.370

5.315.320.110

PHP5

5.315.230.560

PHP7

5.675.520.740

5.715.590.450

PHP5

5.885.80.360

6.055.920.580

PHP5

6.455.152.640

PHP5

6.456.330.770

6.526.490.760

PHP5/FastCGI

6.646.670.330

6.96.910.130

ライト

7.416.932.160

8.37.313.550

14.49.341461

hostingstock.netで測定した他レンタルサーバーとの比較です。

Grubbs' test
測定実行のタイミングによりサーバーの状態 (混雑具合) が変動するため、集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定Grubbs’ testにより省いています。

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス (プラン) に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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