サービス開始から1年、安定したWebサイトの表示速度!Z.com WordPressサーバーの評価と比較

Z.comのWordPress専用サーバーは、WordPressサイトを誰でも簡単に運用可能とすることを目的にしたービスです。WordPressがインストールされたサーバー環境が提供されるため、初心者でも簡単にWordPressを楽しむことができます。さらにWordPress専用のキャッシュ機能を装備しており、Webサイトの高速な表示速度も特徴です。

Z.comに対して約半年前にWebサイトの レスポンス性能測定(その1その2)を実施しています。そのときはサービス開始間もないため、やや不安定な印象が残りました。サービス開始より1年が過ぎるたこともあり、おそらく運用も安定しているでしょう。そこで、改善具合を確認するために再測定しています。

レンタルサーバーを選択する際、大切なポイントは「Webサイトの表示速度」です。いくら豊富な機能に対応しても、運営サイトのレスポンスが悪ければ絵に描いた餅です。訪問者を自分に置き換えれば、なかなか開かないページにイライラすることは想像に難くないでしょう。そして、レスポンスの悪さは検索順位にも悪影響です。

Z.com WordPressレンタルサーバーの全てが分かる
Z.com WordPressレンタルサーバーのレビュー

表示速度の重要性

様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。

コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 訪問者の40%がサイトから離脱(データによっては57%)
    • 訪問者の47%は2秒以内の読み込みを希望
  • 訪問者の79%は、そのサイトを再訪しない

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • 10万ドル/日を売り上げるサイトであれば、1秒の遅れで250万ドル/年の損失
    • Amazonであれば1秒の遅れで、16億ドルの機会損失
  • モバイル環境(スマートフォンなど)ではネットワーク環境が貧弱なこともあり、より厳しい評価となります

快適なWebサイトの条件は、 「最低でも3秒以内」 「理想は2秒以内」 のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要な情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。

参考
How Loading Time Affects Your Bottom Line
The Cost of Poor Web Performance - INFOGRAPHIC ^ hostingstockの測定結果について
端末(パソコンやスマートフォン)のレンダリング等の処理時間を含みません。理由は訪問者の端末性能やブラウザの種類により、処理時間が大きく異なるためです。つまり、測定結果はWebページを構成するデータを受信するために必要な時間を示しています。実際にWebページが表示されるまでには、HTML解析やJavaScript処理などを含む描画時間が加算されます。

測定方法

測定用サーバーから定期的にアクセスして、Webページの取得に要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。より詳しい内容は こちら を参考にしてください。

測定対象  
動的ページ(WordPress) WordPressサイト(PHP&データベース)。コンテンツは平均的なウェブページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。
静的ページ(HTML) HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとデータベースを使用しません。
外部サービスを利用しない理由
PingdomやGTmetrixでレンタルサーバーの性能を評価しても意味がありません

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに2回の測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)×2回」の約4,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「利用者や訪問者が測定時だけ少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者や訪問者が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、訪問者が多くなり負荷が高くなる夜間と、負荷の下がる深夜との差が小さければ、負荷に強いサーバーであることを推測できます。

測定経路

以前は複数のリージョン(東京、アメリカ、シンガポール)から選択できましたが、国内向けサービスは東京に固定されたようです。

あくまでも推測ですが、データセンターの所在地は東京都品川区のようです。GMO系列のサービスが収容されているデータセンターであり、Z.comの他サービスやロリポップ!なども運用されています。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(インターネットプロバイダ)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定環境
測定用サーバーは 測定専用 として、測定以外に利用していません。
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターとサーバーは有線接続

測定結果

  WordPress
キャッシュ有効
HTML
キャッシュ有効
WordPress
キャッシュ無効
HTML
キャッシュ無効
有効測定 4,032回 4,032回 4,032回 4,032回
棄却検定除外 1.09% (44) 3.15% (127) 0.47% (19) 2.78% (112)
棄却検定閾値 0.75秒 0.58秒 1.22秒 0.61秒
エラー 0% (0) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
3秒以上 0.17% (7) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
中央値 0.35秒 0.35秒 0.61秒 0.37秒
平均値 0.37秒 0.36秒 0.62秒 0.38秒
ばらつき/標準偏差 0.08秒 0.05秒 0.12秒 0.05秒
変動係数 21.6% 13.9% 19.4% 13.2%
測定結果について
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定Grubbs' test(α=0.001)により省いています。これはネットワークを含む測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、レスポンスの 約68%平均値 ± ばらつき に、 約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。ばらつきが小さいほどレスポンスが安定します。

Z.com WordPressレンタルサーバーの評価

サーバー本来の性能を評価するために、キャッシュを無効にした状態でも測定しています。コントロールパネルで無効にするだけでなく、キャッシュ無効化の一般的な手法であるダミーパラメータの付与を組み合わせています。

棄却検定による除外数が少し目立ちますが、おそらく5日目夜間のデータが影響しています。最後に掲載している未加工データを確認すると分かるでしょう。一時的に高負荷となりレスポンス速度が低下したようです。除外データの平均値は「1.59秒」であり、問題となるような結果ではありません。

高負荷となってもエラーは発生していないため、サーバーは安定稼働しています。Z.com独自の「オートスケール」が効果的に機能しているのかもしれませんね。

オートスケール

突発的にWebサイトのトラフィックが増加した場合でも、サービス側が自動対応し、快適なサイトアクセスを可能にしています。

全ての測定を同じ時期に実施しているため、レスポンス速度の変動は同じ傾向となります。とは言え、目立つような変動はなく、アクセスが増加し負荷の高くなる夜間帯でも良好なレスポンス性能を維持しています。

キャッシュ有効の結果は、他社を含めてトップクラスの性能であり、静的ページ(HTML)の結果とほとんど変わらなくなります。キャッシュ機能は動的ページの静的化を目的としたものなので、当然といえば当然の結果です。

しかし、キャッシュ無効の場合、同社の共用レンタルサーバー(キャッシュ機能なし)に劣る結果となっています。サーバー自体の性能は凡庸であり、キャッシュ機能で補っているような印象です。

前回の測定(その1その2)ではサービス開始間もないこともあり、キャッシュの動作がやや不安定な印象でした。しかし、今回の測定では安定しており、様々な部分が改善されているようです。

wpXレンタルサーバー、COREPRESS Cloud、エックスサーバーとの比較

  Z.com wpX COREPRESS Cloud XSERVER
有効測定 4,032回 4,032回 4,032回 4,028回
棄却検定除外 1.09% (44) 2.46% (99) 1.04% (42) 0.77% (31)
棄却検定閾値 0.75秒 0.50秒 0.66秒 0.91秒
エラー 0% (0) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
3秒以上 0.17% (7) 0.02% (1) 0.17% (7) 0% (0)
中央値 0.35秒 0.22秒 0.37秒 0.40秒
平均値 0.37秒 0.24秒 0.38秒 0.40秒
ばらつき/標準偏差 0.08秒 0.05秒 0.05秒 0.12秒
変動係数 21.6% 20.8% 13.2% 30.0%
測定結果について
動的ページ(WordPress)の比較です。グラフのX軸は7日間を4時間毎に区切ったものです。
変動係数は「平均値に対する変動の割合」を示します。平均値(処理時間)が同じであっても、数値が大きいほどばらつきます。

他社サービスと比較してみましょう。

比較対象は、WordPress専用のwpXレンタルサーバー(エックスサーバー社)、COREPRESS Cloud(GMO DigiRock)です。そして、汎用的なレンタルサーバーのXSERVER(エックスサーバー社)を加えています。

COREPRESS CloudはZ.comの姉妹サービスです。料金体系が異なるだけで、仕様(機能)は完全に同じです。同じデータセンターで運用されており、同じような測定結果となっています。料金体系を比較して選択するとよいでしょう。

エックスサーバー社が運営するwpXは、一般的なサービスの中では最高性能のハードウェアを採用しています。残念ながらZ.comが採用するサーバーとは比較になりません。もちろんサーバー性能が全てではありませんが、測定結果を見れば大きな差となって表れています。

wpXは負荷の高くなる夜間にレスポンス性能が低下する傾向にあります。しかし、その状態でさえ他を大きく上回る性能を維持しています。はっきり言えることは、WordPress専用サーバーを検討しているなら、wpXしか選択肢はありません。より高性能なサービスもありますが、個人で簡単に契約でき、さらに抜群のコストパフォーマンスを考えればベストな選択でしょう。

同社のエックスサーバーもwpXと同等のサーバーを採用しており、レスポンス性能はトップクラスです。キャッシュ機能がないにも関わらず、キャッシュありのZ.comと同等の性能があります。WordPress以外も利用する予定があれば、おすすめのサービスです。

  Z.com wpX COREPRESS Cloud XSERVER
基本料金 無料 5,000円 無料 3,000円
月額料金 900円 1,200円 500円〜16,000円 1,200円〜4,800円
転送量制限 無制限 50GB/日 無制限 70GB/日〜100GB/日
訪問者数による
従量制課金
あり なし あり なし

Z.comとCOREPRESS Cloudは初期費用不要ですが、「訪問者数による従量制課金」が適用されます。一定数までは基本料金に収まりますが、規定値を超過すると追加料金が発生します。wpXとXSERVERにはデータ転送量の制限がありますが、超過しても追加料金は発生しません。

訪問者数を予測できない初心者なら、wpXやXSERVERがおすすめです。多くの訪問者を想定したサイトを運営する予定があれば、転送量や訪問者数の制限がないZ.comやCOREPRESS Cloudがよいでしょう。

各サービスの公式サイト
  Z.com WordPress / wpXレンタルサーバー / COREPRESS Cloud / エックスサーバー

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450
注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

未加工データ

  WordPress
キャッシュ有効
HTML
キャッシュ有効
WordPress
キャッシュ無効
HTML
キャッシュ無効
3秒以上 0.17% (7) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
中央値 0.35秒 0.35秒 0.61秒 0.37秒
平均値 0.39秒 0.38秒 0.63秒 0.39秒
ばらつき/標準偏差 0.18秒 0.12秒 0.15秒 0.10秒
変動係数 46.2% 31.6% 23.8% 25.6%

測定結果について
レンタルサーバーは1つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。測定結果はその中の1つに過ぎません。契約時期で割り当てられるサーバーのスペックは異なり、さらに、同じサーバーに収容される他契約者の負荷に大きく左右されます。

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