Z.com WordPress専用サーバーのレスポンス性能を他のレンタルサーバーと比較・評価する 【2016】

Z.com (ゼットコム) WordPress専用サーバーは、GMOインターネットが運営する、WordPressの快適な運用を目的としたレンタルサーバーです。そのため、基本的にWordPress以外でのサイト運営はできませんが、ステージング機能やキャッシュ機能など、WordPressに特化した機能が盛り込まれています。もし、WordPressだけでWebサイトを運営するなら、おすすめのサービスの一つです。

レンタルサーバーは使い勝手や機能よりも安定性とレスポンス性能が重要です。いくら機能が充実していても、Webサイトの表示に時間がかかれば、訪問者はすぐに別のサイトへ移動してしまうでしょう。また、レスポンスの悪いサイトは検索エンジンの評価も低くなります。

それでは、Z.com WordPress専用サーバーのレスポンス性能 (応答性能) を評価し、他のレンタルサーバーと比較してみましょう。

測定方法

家庭用回線に接続したサーバーから定期的にアクセスして、Webページの取得に要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。

動的ページ
WordPress によるサイト(PHP&データベース)
コンテンツは平均的なWebページの構成を採用 (HTTP Archiveの統計データより)
静的ページ
htmlファイルによるサイト
WordPressが生成したデータをhtmlファイル化

レンタルサーバー性能の測定方法

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定と言っても一度きりでは意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果を出すことが (完全ではありませんが) 省けます。

一定期間測定することで、利用者数 (訪問者数) が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということを推測できます。

測定経路

家庭用回線からの測定となります。測定用サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

家庭用回線の測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  動的ページ 静的ページ
有効測定数 (回) 4,018 2,408
Grubbs' testによる除外割合 (回) 0.65% (26) 0.42% (10)
Grubbs' testによる閾値 1.44秒 1.47秒
エラーの割合 (回) 0.30% (12) 67.36% (1622)
3秒以上の割合 (回) 0.00% (0) 0.00% (0)
中央値 (秒) 0.53秒 0.51秒
平均値 (秒) 0.59秒 0.58秒
ばらつき/標準偏差 (秒) 0.17秒 0.19秒
エラー内容  
動的ページ (12) Connection time-out (4), name lookup timed out (2), 403 Forbidden / 404 Not Found (4), 500 Internal Server Error (2)
静的ページ (1622) Connection time-out (4), name lookup timed out (2), 500 Internal Server Error (2), 403 Forbidden / 404 Not Found (1614)

有効測定数はエラーを省いた回数を示します。測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態 (混雑具合) が変動するため、集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定Grubbs' test (α=0.001) により省いています。生データ (未加工データ) の測定結果は最後に掲載しています。

Z.com WordPress専用サーバーの評価

様々な調査結果により 3秒 という時間がキーワードとなります。コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 過半数(57%)の訪問者がサイトから離脱
  • 80%のユーザーは、そのサイトを再訪しない
  • 1秒と3秒のサイトを比較すると、3秒のサイトはページビュー22%減、コンバージョン率38%減、直帰率50%増

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • Amazonであれば0.1秒の短縮で収益が1%向上
  • モバイル環境(スマートフォンやタブレット)ではより厳しくなる
参考
3秒が許容範囲 - Webサイトのパフォーマンスが重要な理由 | マイナビニュース
サイト表示が2秒遅いだけで直帰率は50%増加! DeNA事例から学ぶWebの自動最適化手法/日本ラドウェア | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2014 Spring | Web担当者Forum

快適なWebサイトの条件は、 最低でも3秒以内 のレスポンスということになります。

グラフを見ればキャッシュ機能の効果が非常に高いことが分かります。測定対象ページはコンテンツの更新がないため、常にキャッシュデータが利用されます。そのため、PHPやデータベースの処理が入らず、静的ページと同等のレスポンス性能となっています。応答時間の平均値は 1秒未満 であり、他のレンタルサーバーと比較しても優秀な結果です。WordPressを運用するなら、文句のない性能であることが分かります。

他のレンタルサーバーと比較するとエラーが若干多めに発生していますが、全体的に見れば時間帯による応答時間の変動が少なく、終日レスポンスが安定しており好印象です。測定値のばらつきの小ささからも、レスポンスの安定度がわかります。

ばらつき (標準偏差)
統計的な話ですが、アクセスの約68% が 平均値 ± ばらつき に、約95% が 平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほどレスポンスが安定しているといえます。

静的ページのエラー

しかし、静的ページのグラフで0となっている期間は全てエラーであり、この異常な数は気になるところです。

Z.com WordPress専用サーバーは、ディレクトリの編集権限が厳しく、wp-content/ 配下のみ自由に操作できます。そのため、この測定では、wp-content/index.html として静的ページの測定を行っています。

たまたま測定期間中にログを確認すると、ある日時を境に全ての結果が 403 or 404 エラーとなっていました。さらに調査すると、この症状が発生する直前に 500 (サーバー内部エラー) エラーが発生しており、それ以降の全てのアクセスがエラーとなっていました。

配備したファイルに問題はなく、他の端末、回線、ブラウザでアクセスしても同様のエラーとなります。解決方法は「同じディレクトリ内で何かしらのファイル操作を行う。」でした。例えば、適当に新規ファイルを作成するとエラーは解除されます。

偶然かと思い、他の期間にも同様の測定を行いましたが、やはり 500エラー が発生した後は同様のエラー (404 or 403) が発生し続けます。どうやらサーバー内部エラー後にキャッシュ関連の処理が行われているようです。なぜなら、キャッシュ機能をオフにするとこの症状は発生しないためです。

開始間もないサービスなので、キャッシュ機能の調整が甘いのかもしれません。しかし、これが仕様だとすると、あまりにも使い勝手が悪いような気がします。

しかし、今回のようなWordPressを介さないアクセス方法はイレギュラーです。キャッシュ機能を有効にしてもWordPressの動作自体には全く問題ないため、気にする結果ではありません。もし、同様の問題で困る場合はキャッシュ機能をオフにすることで回避できます。

コアプレス・クラウド、wpX、エックスサーバーとの比較

動的ページ (WordPress) の比較となります。グラフのX軸は7日間を4時間毎に区切ったものです。つまり、7×(24÷4)=42 となります。また、色の付いている部分は夜間(18:00~02:00)を示しています。

比較データについて
各レンタルサーバーで条件をそろえるために、集計期間が少し異なる場合があります。
  Z.com コアプレス・クラウド wpX エックスサーバー
有効測定数 (回) 4,018 4,032 4,032 4,026
除外割合 (回) 0.65% (26) 0.67% (27) 1.36% (55) 0.72% (29)
エラーの割合 (回) 0.30% (12) 0.00% (0) 0.00% (0) 0.00% (0)
3秒以上の割合 (回) 0.00% (0) 0.07% (3) 0.00% (0) 0.15% (6)
中央値 (秒) 0.53 0.51 0.27 0.80
平均値 (秒) 0.59 0.59 0.36 0.83
ばらつき/標準偏差 (秒) 0.17 0.19 0.21 0.30

WordPress専用レンタルサーバーであるコアプレス・クラウド、wpX、汎用的な共用レンタルサーバーであるエックスサーバーと比較してみましょう。

やはりキャッシュ機能の恩恵もあり、汎用的なエックスサーバーで動作するWordPressと比較するとレスポンス性能が優秀です。さすがに、WordPress専用を謳うだけあります。

コアプレス・クラウドの結果と似ているのは、両サービスが内部的には同じ仕様だからでしょう。両サービスは同じデータセンターにあり、仕様もほとんど同じです。おそらく、料金的な仕様が少し異なるだけです。Z.comを検討しているのであれば、コアプレス・クラウドも確認してみましょう。

wpX (レンタルサーバー、クラウド) は別格のレスポンス性能があります。また、Z.comと比較すると、ディレクトリへのアクセス権限の自由度が高いため、普通のレンタルサーバーと変わらない使い勝手が確保されています。もし予算に余裕があれば、wpXも検討した方が良いでしょう。

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450

hostingstock.netで測定済みのレンタルサーバーとの比較です。他のレンタルサーバーと比較しても、非常に優秀なレスポンス性能です。

Grubbs' test
棄却検定により異常値を除外しています。一時的なネットワークやサーバーの高負荷状態による異常値 (外れ値) を省きます。棄却検定を適用していないデータと比較して、良い結果となる傾向があります。

測定結果 (未加工データ)

  動的ページ 静的ページ
3秒以上の割合 (回) 0.00% (0) 0.00% (0)
中央値 (秒) 0.53秒 0.51秒
平均値 (秒) 0.59秒 0.58秒
ばらつき/標準偏差 (秒) 0.19秒 0.20秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス (プラン) に対して多数のサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他ユーザーの負荷も影響します。

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