Hostingerのレスポンスの遅さとエラーの多さは常用するにはつらい

Hostinger (ホスティンガー) は2004年に開始された、無料レンタルサーバーとして有名なサービスです。最も大きな特徴は無料プランであっても広告が表示されないことでしょう。また、PHPやMySQLに対応するなど、有料サービスと変わらない使い勝手も魅力です。もちろん独自ドメインにも対応しています。

しかし、海外のデータセンターであるため、レスポンスには期待できません。さらに無料プランのサーバーは有料プランの廉価仕様ということで、かなり低スペックです。レスポンスが悪ければ、サイトへの訪問者にストレスを与えてしまい、さらに検索エンジンの評価も悪くなります。

それでは、無料プランのレスポンス性能 (応答性能) を評価し、サイト運営に常用できるか確認してみましょう。詳細な仕様については、下記レビューを参考にしてください。

測定方法

測定用サーバーから定期的にアクセスして、Webページの取得に要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。

動的ページ
WordPress によるサイト(PHP&データベース)
コンテンツは平均的なWebページの構成を採用 (HTTP Archiveの統計データより)
静的ページ
htmlファイルによるサイト
WordPressが生成したデータをhtmlファイル化

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定と言っても一度きりでは意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果を出すことが (完全ではありませんが) 省けます。

一定期間測定することで、利用者数 (訪問者数) が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということを推測できます。

測定経路

Hostingerのデータセンターは複数ありますが、無料プランかつ日本からの利用の場合、イギリスのデータセンターが割り当てられるようです。経路図はtracerouteの結果と、Geolocation APIを利用しています。明らかに不適切な経路は省いています。

測定用サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

ネットワーク環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  動的ページ 静的ページ
有効測定 3,426回 3,434回
棄却検定除外 0.35% (12) 0.41% (14)
棄却検定閾値 23.3秒 24.14秒
エラー 0.93% (32) 0.70% (24)
3秒以上の割合 99.65% (3,414) 99.59% (3,420)
中央値 7.51秒 7.11秒
平均値 8.44秒 8.16秒
ばらつき/標準偏差 3.02秒 3.21秒
測定結果について
有効測定はエラーを省いた回数を示します。
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態 (混雑具合) が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定 Grubbs' test (α=0.001) により省いています。
生データ (未加工データ) の測定結果は最後に掲載しています。
ばらつき (標準偏差)
統計的な話ですが、レスポンスの 約68%平均値 ± ばらつき に、 約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほどレスポンスが安定していることになります。
エラー内容  
動的ページ [32] Empty reply from server[22] / 403[6] / 500[2] / Operation timed out[1] / 404[1]
静的ページ [24] Empty reply from server[20] / Connection reset by peer[1] / Connection timed out[2] / 403[1]

レスポンスの基準

様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。

コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 訪問者の40%がサイトから離脱 (データによっては57%)
    • 訪問者の47%は2秒以内の読み込みを希望
  • 訪問者の79%は、そのサイトを再訪しない

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • 10万ドル/日を売り上げるサイトであれば、1秒の遅れで250万ドル/年の損失
    • Amazonであれば1秒の遅れで、16億ドルの機会損失
  • モバイル環境 (スマートフォンなど) ではネットワーク環境が貧弱なこともあり、より厳しい評価となります
参考
How Loading Time Affects Your Bottom Line
The Cost of Poor Web Performance - INFOGRAPHIC

快適なWebサイトの条件は、 「最低でも3秒以内」 「理想は2秒以内」 のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要な情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。

Hostingerの評価

測定期間は7日間の予定でしたが、7日目の朝にアカウント停止のメールが届きました。原因は「アクセス過多」となっていました。この測定では1,000件/日ほどのアクセスが発生します。有料サービスであれば何てことのない頻度ですが、コントロールパネルを開くと「無料プランを毎日数千件のアクセスのあるサイトに利用しないでください。」とありました。上限が分かれば対応できそうですが、明確な基準は非公開です。分かることは転送量制限の上限に達しなくても、アクセス数によるペナルティが優先されると言うことでしょう。

レスポンスはお世辞にも良くありません。ほとんどのレスポンスが3秒を超えており、前述した基準を満たすことは不可能です。しかも、エラーが非常に多く安定とはほど遠い感じです。

サーバーの性能云々よりもネットワーク環境が貧弱なのかもしれません。無料プランの場合ネットワーク速度がわずが10Mbpsとなっており、ここがボトルネックとなっているようです。今時10Mbpsはさすがに絞りすぎではないでしょうか。動的ページと静的ページとを比較すると、PHPやデータベースが動作しない静的ページがやや速いことが分かりますが、ネットワークの遅延が大きすぎるため気にしても仕方がないほどの差です。

時間帯による変化をみると、夜間ではなく午前10時前後 (日本時間) に負荷のピークを確認できます。イギリスにあるデータセンターなので、時差は -9時間 となります。つまりイギリスの午前1時頃にピークがあることが分かります。やはりリトアニア発のサービスなので、ヨーロッパ圏の利用者が多いのでしょうか。そう考えると夜間に負荷が高くなるのは全世界共通ですので、特におかしな結果ではありません。

PHPやMySQLが使え、広告が表示されないという特徴はありますが、サイトをまともに運営するには厳しいでしょう。理由も分からずにアカウントを停止されるという話をよく耳にするので、利用するにも定期的なバックアップは必須です。アカウントが停止されると、FTPを含めサーバーへのアクセスが不可能となります。

再測定

最初のサーバーアカウントが凍結 (停止) された時は、FTPの転送性能も同時に測定していました。これも原因の1つかと思い、再度アカウントを取得して、HTTPのみで再測定してみました。

残念ながら同じ結果となりました。7日目の午前7時頃にアカウント停止のメールが届きました。これで分かることは、1,000件/日程度のアクセスが6日間以上続くと、問答無用で停止となることです。

再測定の結果を掲載しますが、当然ながら傾向は変わりません。若干レスポンスは改善されましたが、エラーは増加しました。割り当てられるサーバーが変わったのでしょうか?どちらにしても、遅くて不安定なことにかわりません。

  動的ページ 静的ページ
有効測定 3,399回 3,408回
棄却検定除外 0.26% (9) 0.21% (7)
棄却検定閾値 22.9秒 23.6秒
エラー 1.68% (57) 1.41% (48)
3秒以上 99.7% (3390) 99.8% (3401)
中央値 6.72秒 6.40秒
平均値 8.05秒 7.82秒
ばらつき/標準偏差 3.08秒 3.23秒
エラー内容  
動的ページ [57] Connection timed out[45] / Empty reply from server[7] / 403[5]
静的ページ [48] Connection timed out[47] / 403[1]

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450

当サイトで測定済みのレンタルサーバーとの比較です。詳細は各リンク先を確認してください。

比較すると分かりますが、多くのレンタルサーバーの中でもかなり悪いレスポンス性能であり、海外サーバーとは言え我慢できるような性能ではありません。無料で多機能かつ広告が表示されないという特徴はありますが、国内にははるかに高性能な無料のサービスがいくつでもあります。この結果を見れば、あえてHostingerを選択する必要はないと思えませんか?

単純にレンタルサーバーを使ってみたいという、学習目的なら何ら問題ありません。しかし、アカウントに利用するメールアドレスは、Hostinger用のアカウントを用意した方が良いでしょう。Hostingerではユーザーアカウントを削除できないため、忘れた頃にスパムメールが届き始めるという話もあります (当サイトで利用した範囲では、そのようなことはありませんが) 。

レスポンスの悪さ、エラーの多さ、アクセス数上限の低さから、本格的なサイト運営には全く向きません。あまりアクセス数のないブログ程度の用途なら大丈夫かもしれません。しかし、アカウント停止を気にしながらサイトを運営するのも面倒です。

ペナルティ (アカウント停止) は有料プランへ移行すると解除されるようですが、有料プランを検討する必要はありません。公式サイトを見ると数百円/月の様に見えますが、あれは 3年間契約時の料金 です。最低利用期間である3ヶ月契約であれば、倍程度になります。それだけの予算があれば、国内のサービスを検討するべきでしょう。レスポンスもサポートもはるかに期待できます。

どうしても無料で利用したい場合は、XREA (エクスリア)、Netowl (ネットオウル) やXdomain (エックスドメイン) などの、国内大手の無料サービスを検討してください。広告は表示されますが、レスポンス性能は下手な有料サービスより優秀です。当サイト内に詳細なレビューがあるので、参考にしてください。

測定結果 (未加工データ)

  動的ページ 静的ページ
3秒以上の割合 16.0% (640) 2.92% (117)
中央値 1.71秒 1.18秒
平均値 2.18秒 1.46秒
ばらつき/標準偏差 1.64秒 2.50秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス (プラン) に対して多数のサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他ユーザーの負荷も影響します。

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