お名前.comレンタルサーバーが「mod_deflate」と「mod_expires」に対応しました。コントロールパネルに設定機能はなく、設定を記述した「.htaccess」を設置することで有効となります。
それぞれウェブサーバー(Apache)のモジュールであり、Webサイトの表示速度を改善させるものです。
お名前.comの公式アナウンスによると、モジュールの効果は以下の様になっています。
弊社でのモジュール設定前後の速度比較では、116%の速度となりました。
Pagespeed Insightsで同一環境/コンテンツ条件、PC速度における比較(2016年8月26日現在)
それでは、モジュールを有効することでWebサイトのレスポンス(表示速度)が、どの程度改善されるかを評価してみましょう。
お名前.comレンタルサーバーの詳細については レビュー を参考にしてください。
測定用サーバーから定期的にアクセスして、ウェブページの取得に要する時間を測定します。測定対象として「動的ページ」と「静的ページ」があります。
測定期間は 7日間 であり、5分ごとに2回の測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)×2回」の約4,000回となります。
測定方法の詳細は こちら も参考にしてください。
測定対象 | |
---|---|
動的ページ(WordPress) | WordPressサイト(PHP&データベース)。コンテンツは平均的なウェブページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。 |
静的ページ(HTML) | HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとデータベースを使用しません。 |
「mod_expires」はブラウザのキャッシュを利用するものです。そのため、サーバー性能の評価を目的としたこの測定では使用していません。「mod_deflate」の設定は以下の通りです。画像以外を圧縮対象としています。
<IfModule mod_deflate.c>
SetOutputFilter DEFLATE
SetEnvIfNoCase Request_URI \.(?:gif|jpe?g|png)$ no-gzip dont-vary
</IfModule>
mod _deflate WordPress | mod_ deflate HTML | 標準 WordPress | 標準 HTML | |
---|---|---|---|---|
有効測定 | 4,012回 | 4,012回 | 4,018回 | 4,018回 |
棄却検定除外 | 2.52% (101) | 0.30% (12) | 1.29% (52) | 0.82% (33) |
棄却検定閾値 | 3.03秒 | 1.45秒 | 2.43秒 | 1.96秒 |
エラー | 0.50% (20) | 0.50% (20) | 0.35% (14) | 0.35% (14) |
3秒以上 | 2.57% (103) | 0.12% (5) | 0.72% (29) | 0.07% (3) |
中央値 | 1.17秒 | 0.60秒 | 1.15秒 | 0.70秒 |
平均値 | 1.23秒 | 0.59秒 | 1.19秒 | 0.72秒 |
ばらつき/標準偏差 | 0.36秒 | 0.18秒 | 0.25秒 | 0.25秒 |
変動係数 | 29.3% | 30.5% | 21.0% | 34.7% |
約68%
が 平均値 ± ばらつき
に、 約95%
が 平均値 ± ばらつき×2
に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほどレスポンスが安定していることになります。エラー内容 | |
---|---|
mod_deflate WordPress [20] | 503 Service Temporarily Unavailable [13] / timed out [4] / Failed to connect: Connection refused [3] |
mod_deflate HTML [20] | 503 Service Temporarily Unavailable [13] / Failed to connect: Connection refused [4] / timed out [3] |
標準 WordPress [14] | 503 Service Temporarily Unavailable [6] / Failed to connect: Connection refused [4] / timed out [4] |
標準 HTML [14] | 503 Service Temporarily Unavailable [8] / Failed to connect: Connection refused [5] / timed out [1] |
お名前.comの公式アナウンスでは「116%」の高速化となっています。この測定結果でも 約18% の高速化となり、妥当な数値であることが分かります。
しかし、あくまでも「HTML(静的ページ)」の結果に限ります。WordPress(動的ページ)の場合、mod_deflateを有効にすることで、わずかですがレスポンスが落ちています。
どちらの比較も有意差(p<0.01)を確認できたため、mod_deflateの有無で差が発生する傾向が高いと言えます。データベースとPHPが動作しないHTMLは改善されましたが、WordPressは悪化するという残念な結果となりました。
理由は簡単であり、mod _deflateは魔法のツールではないということです。サーバー側で圧縮処理が実行されるため、サーバーに余計な負荷がかかります。お名前.comのサーバー自体の処理性能が低いため、PHPに加えmod_ deflateによる負荷は厳しいものがあります。エラーの発生回数も増えており、WordPressサイトならmod_deflateを有効にする意味がありません。
変動係数を比較しても、mod_deflateを有効にしたWordPressサイトの表示速度がばらつくことが分かります。不安定さが増しレスポンスも改善されないため、やはりmod_defleteを有効にする必要はないように思えます。
どうしても利用するなら、定期的にエラーの発生頻度をログで確認しましょう。
動的ページ | 静的ページ | |
---|---|---|
3秒以上 | 0.72% (29) | 0.07% (3) |
中央値 | 1.16秒 | 0.70秒 |
平均値 | 1.28秒 | 0.75秒 |
ばらつき/標準偏差 | 1.52秒 | 0.97秒 |
動的ページ | 静的ページ | |
---|---|---|
3秒以上 | 2.57% (103) | 0.12% (5) |
中央値 | 1.17秒 | 0.60秒 |
平均値 | 1.38秒 | 0.62秒 |
ばらつき/標準偏差 | 1.89秒 | 0.97秒 |