お名前.comで運用するウェブサイトの表示速度を測定すると、やや高額な基本料金に見合わない結果となりました。mod_deflateやmod_expiresにも対応しましたが、基本性能に問題があるためそれらを適用しても改善されません。
お名前.comでWebサイトの表示速度を向上させる、もう一つの方法は「PHP7」を使用することです。PHP7はPHP5と比較して実行速度が約2倍となっており、実際に他のレンタルサーバーで比較すると、1割〜2割はレスポンスが改善されます。お名前.comでもPHP7を使用することで、レスポンスは改善されるのでしょうか?
レンタルサーバーを選択する際、大切なポイントは「ウェブサイトの表示速度」です。訪問者を自分に置き換えれば、なかなか開かないページにイライラすることは想像に難くないでしょう。そして、レスポンスの悪さは検索エンジンの評価にも悪影響です。
様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。
コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、
レスポンス性能の影響は様々です。
快適なWebサイトの条件は、 「最低でも3秒以内」 「理想は2秒以内」 のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要な情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。
測定用サーバーから定期的にアクセスして、ウェブページの取得に要する時間を測定します。測定対象として動的ページと静的ページがあります。より詳しい内容は こちら を参考にしてください。
測定対象 | |
---|---|
動的ページ(WordPress) | WordPressサイト(PHP&データベース)。コンテンツは平均的なウェブページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。 |
静的ページ(HTML) | HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとデータベースを使用しません。 |
測定期間は 7日間 であり、5分ごとに2回の測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)×2回」の約4,000回となります。
一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「利用者や訪問者が測定時だけ少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。
一定期間測定することで、利用者や訪問者が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、訪問者が多くなり負荷が高くなる夜間と、負荷の下がる深夜との差が小さければ、負荷に強いサーバーであることを推測できます。
データセンターの所在地について、国内にあること以外は非公表です。独自に調査した範囲で推測すると、東京(品川区)にあるデータセンターで運用されているようです。
バリューサーバーやロリポップ!から相互にpingを実行すると、反応が1ms未満となります。おそらく関連グループ(GMO)のサービスは同じデータセンターで運用されているのでしょう。
経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(インターネットプロバイダ)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。
測定用サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。
PHP7.0 WordPress | PHP7.0 HTML | PHP5.6 WordPress | PHP5.6 HTML | |
---|---|---|---|---|
有効測定 | 4,018回 | 4,023回 | 4,012回 | 4,014回 |
棄却検定除外 | 0% (0) | 0.10% (4) | 0% (0) | 0.15% (6) |
棄却検定閾値 | 8.19秒 | 1.54秒 | 10.1秒 | 1.62秒 |
エラー | 0.35% (14) | 0.22% (9) | 0.50% (20) | 0.45% (18) |
3秒以上 | 40.3% (1,619) | 0% (0) | 42.25% (1,695) | 0.02% (1) |
中央値 | 1.57秒 | 0.72秒 | 1.53秒 | 0.72秒 |
平均値 | 3.18秒 | 0.71秒 | 3.30秒 | 0.72秒 |
ばらつき/標準偏差 | 2.34秒 | 0.18秒 | 2.47秒 | 0.18秒 |
変動係数 | 73.6% | 25.4% | 74.9% | 25.0% |
約68%
が 平均値 ± ばらつき
に、 約95%
が 平均値 ± ばらつき×2
に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほどレスポンスが安定していることになります。エラー内容 | |
---|---|
PHP7 WordPress [14] | 503 Service Temporarily Unavailable [14] |
PHP7 HTML [9] | 503 Service Temporarily Unavailable [9] |
PHP5 WordPress [20] | 503 Service Temporarily Unavailable [19] / Failed to connect: Connection refused [1] |
PHP5 HTML[18] | 503 Service Temporarily Unavailable[17] / Recv failure: Connection reset by peer [1] |
同じサーバーに対する測定ですが、前回の測定より少し改善されています。しかし、他社には遠く及ばずばらつき(標準偏差)やエラー発生率の増加など、不安定さがさらに目立つ結果となりました。
不安定さが増した理由の一つに、前回はPHP5のみの測定でしたが、今回はPHP7も同時に測定していることが挙げられます。とはいえ、アクセスのタイミングはずらしており、少しアクセスが増える程度でここまで不安定になることに驚きます。前回と同様にエラーの大部分が「HTTP 503」であり、サーバーが高負荷状態であることを示します。
この測定対象はドメイン非公開であり、外部からのアクセスはありません。わずか5分毎のアクセスにもかかわらず、このエラー発生率は異常です。測定結果から言えることは、あまり負荷に強いサービスではないということです。負荷が原因でなければ、同時アクセス数の上限が極端に低いことになります。
契約したサーバーがハズレという可能性もありますが、それはそれでこの性能が許容されるという運用方針に疑問を感じます。
理由は不明ですが、初回アクセス時のレスポンスが悪くなる特性(傾向)があります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
初回というのは5分毎に測定するときの「1回目」にあたります。その十数秒後に2回目の測定を実行しています。これらを分離して集計すると、以下の様な結果となります。
PHP7 WordPress | PHP7 HTML | PHP5 WordPress | PHP5 HTML | |
---|---|---|---|---|
初回(秒) | 5.00 | 0.71 | 5.21 | 0.72 |
2回目(秒) | 1.36 | 0.71 | 1.38 | 0.72 |
初回アクセス時、それもWordPressの結果が著しく悪いことが分かります。この現象については、先ほどの記事で詳しく説明しています。
PHP7とPHP5の比較という内容になるはずでしたが、PHP7にしても大きな改善は見込めません。PHP7にすることでやや安定する傾向にありますが、それ以前の問題です。
2回目の平均値を比較しても他社ほどの差はありません。PHPのバージョンがどうこうではなく、「初回アクセス時の何かしらの制御」と「基本的な性能の低さ」がある限り、どうにもならない印象です。
PHP(WordPress)を使用しないHTMLのみの静的サイトなら、表示速度も平均的で安定しています。しかし、こちらもエラーが発生しており、やはりおすすめしにくいサービスです。
動的ページ(WordPress) | 静的ページ(HTML) | |
---|---|---|
3秒以上 | 42.3% (1,695) | 0.02% (1) |
中央値 | 1.53秒 | 0.72秒 |
平均値 | 3.30秒 | 0.72秒 |
ばらつき/標準偏差 | 2.47秒 | 0.19秒 |
動的ページ(WordPress) | 静的ページ(HTML) | |
---|---|---|
3秒以上 | 40.3% (1,619) | 0% (0) |
中央値 | 1.57秒 | 0.72秒 |
平均値 | 3.18秒 | 0.71秒 |
ばらつき/標準偏差 | 2.34秒 | 0.18秒 |