Hostingerの完全レビューと無料プランで注意するポイント

2004年からサービスが開始されたHostinger (ホスティンガー) は無料レンタルサーバーとして有名です。最も大きな特徴は無料プランであっても広告が表示されないことでしょう。機能的にも有料のサービスに劣りません。

本社の所在地ですが、公式サイトを見ると2カ所あります。Hostinger International Ltd. がキプロス共和国のラルナカ、Hostinger UAB (Uzdaroji Akcine Bendrove 非上場企業 / リトアニア語 ) リトアニアのカウナスにあります。ラルナカは観光地ですから、Hostinger UABが本社なのでしょう。日本も含め世界展開していますが、最近のことのようです。

もちろん海外のサービスなので、データセンターも海外にあり国内のレンタルサーバーと比較するとレスポンスが劣ります。また、Hostingerでよくあるトラブルは、何かしらの理由でアカウントが停止となることです。予告なく、突然サーバーへのアクセスが不可能になります。特に無料プランでは厳しくなります。

それでは、Hostingerについてまとめてみましょう。

プランの比較

Hostingerには無料プランが1つ、有料プランが2つあります。

悪質とは思いませんが、公式サイトの料金は 3年間契約 時のものです。最低契約期間は3ヶ月となっており、その場合の月額費用は倍程度になります。

とは言え、有料プランであれば無料ドメイン (更新費用も不要) を利用できるので、他社と比較して年間1,500円ほどはお得になります。ドメインは、「xyz / com / net / org / info / biz / name / mobi / co.uk / pw / ru / in / be / asia / ch」から選択できます。

プレミアムとビジネスの差は独自SSL (専用SSL) だけのように思えますが、ハードウェアやリソースにも差があります。比較すればプラン間に相当な性能差があることを理解できます。

商用利用について

商用利用に関する記述は見つかりませんが、利用規約に以下の一文があります。

7.許可されていない、または対象者が望まない広告、宣伝内容、迷惑メール、チェーンメール、マルチ商法に関する情報等をアップロード、投稿、メール、送信、またはその他の方法で公開する事は禁止します。ただし、ショッピングページなど、それらの広告・宣伝を主たる運営の目的とする物は除きます。

とあるため、アフィリエイトも問題ないでしょう。ただし、アダルトコンテンツは禁止されています。

データセンター

複数地域のデータセンターで運用されており、イギリス、アメリカ、シンガポールにあります。ただし、無料プランで選択できるのはイギリスのみです。有料プランの場合、自由に選択できます。

無料プランの場合、イングランドのマンチェスターにある M247 というデータセンターに割り当てられるようです。おそらく契約者の住所によって異なるのでしょう。

コントロールパネル

無料プランの場合、Webサイトのレスポンスは良くありません。しかし、コントロールパネルは、ストレスとならない程度には動作します。どちらも同じデータセンターにありますが、サーバーが異なるためレスポンスに差が生じるのでしょう。

転送量制限よりアクセス数制限に厳しい

転送量の上限は無料プランでも 100GB/月 と、下手な有料サービスより充実しています。しかし、この転送量制限はあまり意味がありません。

転送量制限以外にも アクセス数 による制限があります。実際に利用してみると、こちらの制限が厳しいように感じます。 例えば、1,000件/日ほどのアクセスが続くと、5日から6日でサーバーアカウントが予告なく凍結されます。この処置は一時的ではないため、サポートに問い合わせない限り解除されません。

凍結されると、その (ユーザー) アカウントでは新規無料プランを追加することはできません。また、コントロールパネルやサーバーへのアクセスが禁止されるため、データの回収が不可能となります。前述通りサポートに依頼するか、有料プランへ移行するしかありません。

無料プランではアクセス数の少ないサイトしか利用できませんね。

Hostingerを利用してみたら1日1,000件のアクセスでアカウント停止となりました

SSL

共有 (共用) SSLには非対応です。専用 (独自) SSLはビジネスプランのみ対応しています。

コントロールパネルで、SSLサーバー証明書 Comodo PositiveSSL (のみ) を購入することができます。格安証明書であり、Hostingerでの料金は不明ですが、平均的な価格は10ドル程度です。

SSLに関する機能があるため、他社の証明書も利用できそうですが、あえてHostingerでSSL対応サイトを運営するメリットはないように思えます。ビジネスプランの料金であれば、国内で使い勝手の良いサービスを契約できます。

ドメイン

有料プランであれば簡単に多くのサイトを運営することが可能です。

ドメインを後から変更できないので、独自ドメインを利用するなら、サーバーアカウントを追加するときに設定する必要があります。

無料プランだけかもしれませんが、ドメイン (サーバー) の追加は24時間に1回の制限があります。もし設定を間違えた場合、翌日まで待つ必要があります。サブドメインについては制限がありません。

独自ドメインがなくても、Hostingerが保有するドメイン (のサブドメイン) を利用できます。初期ドメインは「esy.es / 16mb.com / 96.it / hol.es / pe.hu / 890m.com」から選択できます。

もちろん他社で取得してるドメインを利用できます。その際はhostingerのネームサーバーを設定します。

有料プランの場合、独自ドメイン (.com) が 無料 で付属します。新規取得はもちろん移管にも対応し、有料プランを継続する限り更新費用も無料となります。

DNSレコード

A、CNAME、MX、TXT、AAAA、NS、SRVに対応しています。

日本語ドメイン

日本語ドメインも Punycode で登録すれば問題なく動作しますが、公式にはサポートしていません。

パーキングドメイン

1つのサイトに複数のドメインを割り当てることができます。異なるドメインで同じサイトにアクセスできます。

データベース

MySQL互換のMariaDBが採用されています。phpMyAdminも設定済みとなっています。

データベース名とユーザー名は、「u数字(サーバーID)_任意の文字列」となります。有料プランであれば、リモートMySQLに対応しています。外部からの接続が可能となり、普段利用しているMySQLクライアントでデータベースの操作が可能です。

FTPとディレクトリ構造

無料プランはFTP (暗号化無し) しか利用できないため、重要なデータを転送するには不向きです。有料プランであればセキュアなFTPS (FTP over SSL/TLS) に対応しています。とは言え、無料プランで重要なデータを扱うこともないので、あまり気にする必要もないでしょう。

追加アカウントはアクセス可能なディレクトを指定できます。指定ディレクトリより上位へは移動できません。

net2ftp というファイルマネージャ (Webアプリケーション) があり、簡単な操作であればFTPクライアントは不要です。

net2ftp

新規作成、コピー、移動、名称変更、パーミッション変更、ZIP、UNZIP、検索、アップロード、ダウンロード

シンプルなディレクトリ構造

独自ドメイン毎にディレクトリが割り当てられます。そのため、FTPアカウントも別々となり、1つのアカウントで異なる独自ドメインのデータを管理することはできません。ドメイン毎にアカウントを切り換える必要があります。サブドメインは /public_html 直下に公開ディレクトリが生成されます。

FTPクライアントでは /public_html 配下のみアクセスできますが、ファイルマネージャでは 上位のディレクトリにアクセスでき、PHPのエラーログなどを取得できます。

メール

他のレンタルサーバーと異なり、Hostingerのドメイン (例 esy.es) でもアカウントを作成することがでるため、独自ドメインがなくともメールを利用できます。

ただし、仕様を見ると気付きますが、無料プランの場合は SMTPサーバー を利用できません。メールクライアントを利用しても受信はできますが、送信することはできません。他社のSMTPサーバーで送信する必要があります。

Webメーラからは送信可能なので、メールクライアントは使わずにWebブラウザで対応すると良いでしょう。

Webメーラー

多くのレンタルサーバーで採用されている、RoundCube、SquirrelMailに対応してます。

PHPや他の言語

PHPは CGI/FastCGI で動作しています。複数のバージョンが用意され、サーバー (ドメイン) 毎に切り換えることが可能です。

コントロールパネルに、動作設定に関する機能はありません。PHP5.3以上であれば .user.ini を利用できます。php.iniは認識されないようです。

利用不可の関数

exec(), shell exec(), proc open(), passthru(), system(), popen()

SSH

有料プランならSSHに対応しています。

無料プランでも、コントロールパネルの SSHウェブコンソール を利用して、コマンドによる操作が可能です。

対応コマンド

clear / exit / arch / bzip2 / cal / cksum / cmp / cp / crontab / basename / cd / chmod / ls / date / df / du / dos2unix / unix2dos / file / getfacl / gzip / head / hostid / tail / mkdir / mv / nslookup / sdiff / uptime / whois

Cron

無料プランでもCronが使えます。ただし、無料プランでは 分単位 の設定ができないため、最短実行間隔は1時間となります。

全プラン、サーバーアカウント (ドメイン) 毎に2個まで設定できます。

簡易Cronでは、wgetでスクリプトを実行させています。有料プランであれば、実行コマンドを指定できるなど、より高機能なCronを利用できます。

注意

あまりにも高負荷な処理を実行させると、アカウントが停止される可能性があります。無料プランでは特に注意が必要です。

ログ

Webサーバー (Apache) のエラーログやアクセスログは提供されません。アクセス解析については、Googleアナリティクスなど、外部サービスの利用が推奨されています。

ページアクセス数や訪問者数 (ユニーク)、転送量といった簡易なデータはコントロールパネルで確認できます。

バックアップ

バックアップ機能があります。バックアップと言っても、サーバーのデータをアーカイブするのみです。手動で実行し、バックアップ完了後にファイルをダウンロードします。MySQLのデータと /home/サーバーID 以下が対象です。

有料プランであれば、一定期間毎の自動バックアップ機能やリストア機能を利用できます。

自動インストール対応

その他の機能

コントロールパネルに備わっている機能です。

BASIC認証

任意のディレクトにパスワードを設定することができます。

Git

任意のGitレポジトリを設定できます。

パーミッションの修復

ファイルの操作で問題が生じた場合に実行します。

直リンク保護

他のドメイン (サイト) から、画像などを無断で利用されることを防止できます。

IP拒否・許可

任意のIPアドレスからのアクセスを許可・拒否することができます。

プラン変更

コントロールパネルで手続きが可能です。最初は無料プランで契約しておき、問題がないことを確認してから、有料プランへ移行することができます。

サポート対応

契約後であれば、コントロールパネルにあるヘルプデスク (サポート・チケット機能) からの問い合わせが可能です。2015年10月から、英語のみ対応となっています。

他にサポート・フォーラム (掲示板) があります。こちらは、2015年まで日本語での対応が行われていたようですが、現在 (2016年4月) ではヘルプデスクと同様に英語による対応となっています。

支払い方法

2種類の支払い方法に対応しています。

解約方法

サーバーアカウントはコントロールパネルから削除できます。しかし、Hostingerのユーザーアカウントは削除することができません。

アカウント情報が残ることに不安があれば、下記の記事を参考にしてください。

アカウントを削除できないHostingerで念のためにやっておきたい手続き

同社の他の無料レンタルサーバー

• 000webhost
  • https://www.000webhost.com/

まとめ

FAQの情報が古く、コントロールパネルの詳細なマニュアルもありません。トラブルが生じると英語での問い合わせが必要となり、初心者が気軽にWebサイトを運営する用途としては敷居が高いでしょう。

予告なく (サーバー) アカウントが停止されるため、ブログ程度であれ大事なサイトには利用できません。停止されるとサーバーへのアクセスが不可となるため、それまでに作成したデータの回収も困難です。理解して利用するなら、こまめなバックアップが必須となります。

特にアクセス数の制限が厳しい無料プランはおすすめできません。かといって、無料プランの対応を考えると、有料プランも品質も不安になります。

アクセス数だけでなく、「1ヶ月間Webサイトへのアクセスがなかった」「Webサイトが完成していない」という理由でもアカウントが停止されます。他にも、1年に最低1回はコントロールパネルにログインすることも、アカウント継続に必要です。無料プランをエサにして「データを回収したければ有料プランへ移行しなさい」と言われているような気がしないでもありません。無料サービスなので当然の対応なのかもしれませんが・・・

それでも、これだけの機能を備えて無料かつ広告も表示されないという素晴らしいサービスです。それほどアクセスが多くない、サーバーに負荷を与えないような用途であれば問題はないと思いますが。

しかし、何かの拍子に容赦なくアカウントが停止されます。心配しながらサイトを運営するなら、月に数百円程度の国内サービスを利用した方がよいでしょう。