Hostingerの高いサーバー性能とレスポンスの悪さが矛盾している理由

Hostinger (ホスティンガー) は、無料レンタルサーバーとして有名なサービスであり、無料レンタルサーバーを探していれば、一度は検討したことがあると思います。グローバル展開されており、世界中のデータセンターで運用されていることも特徴です。日本もサービス対象となっていますが、国内にデータセンターはないため海外のデータセンターを利用することになります。

レンタルサーバーの選択基準はサーバーの性能でしょう。いくら多機能であっても処理性能が悪ければ、エラーが発生しやすくなり、Webサイトのレスポンスも悪くなります。この記事では、ネットワークの負荷状況に左右されない、サーバーそのものの性能を確認します。

この測定には無料プランを利用しています。上位プラン (有料プラン) ほどサーバー性能が高くなることが明記されており、この評価結果がHostingerの最低限の性能を示すことになります。

Hostingerの詳細な仕様については、当サイトのレビューを確認してください。

測定方法

WordPressをインストールしたサイト (サーバー) を利用します。

  • 「ランダムな3,000文字/記事 (の自動生成) 」の投稿と削除
    • 100記事をまとめて投稿、投稿後に全削除
  • 投稿と削除はWordPressの標準関数を利用
    • wp insert post、wp delete post

これらの処理を 5分間隔 で実行し、処理時間を測定します。つまり、 PHPとデータベースの処理性能 を確認することになります。

Cron非対応のレンタルサーバーもあるため、別のサーバーから定期的に測定用プログラムを実行させています。データセンター内で完結する処理なので、ネットワーク環境 (速度) の影響は受けません。

負荷について
100件程度の処理は大した負荷ではありませんが、共用サーバーなので連続処理とならないように、1件毎にwait処理を差し込んでいます。

測定結果

結果 有効測定数 除外数 エラー 中央値 平均値 ばらつき
未加工 829回 - 4.05%
(35回)
2.66秒 2.75秒 0.49秒
棄却検定 1.33%
(11回)
2.72秒 0.37秒
測定結果
72時間 (3日間) の測定結果となります。X軸は時刻(0時~24時)を表し、各時刻の値は3日間の平均値です。有効測定数はエラーを省いた実測定数です。
棄却検定
測定実行のタイミングによりサーバーの負荷状態 (混雑具合) が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値 (外れ値) を棄却検定 Grubbs' test (α=0.001) により省いたデータも掲載しています。
ばらつき (標準偏差)
統計的な話ですが、処理の 約68%平均値 ± ばらつき に、約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど処理性能が安定しているといえます。
エラー内容  
エラー[35] Server returned nothing (レスポンスなし) [19] / 500 Internal Server Error [7] / 403 Forbidden [5] / Timeout [2] / 不明 [2]

Hostingerの評価

Webサイトのレスポンスが非常に悪いため、サーバーの処理性能も悪いと予想していました。しかし、測定結果を見れば分かりますが、予想とは反して素晴らしい結果となっています。レスポンス性能については下記を参考にしてください。

サーバーの処理性能は安定しており、時間帯による変化はほとんどありません。処理時間の変動の少なさからも処理性能に余裕があることを確認できます。

しかし、異常に高いエラー発生率が気になります。

この測定は、別のサーバーからネットワーク越しにHostingerにある測定プログラムを定期実行しています。ログを確認してみると、サーバーからのレスポンスに異常があるエラーは35個 (4%) でしたが、実質的なエラー (未処理) は19回 (2.2%) です。エラー内容にある「レスポンスなし」がそれに該当します。

実際の測定処理でエラーはなく、何かしらの原因でサーバーにリクエストが届いていないことが原因となります。つまり、リクエストさえ届けば安定して処理するだけの性能はあります。しかし、サーバー (サイト) へのアクセス時にエラーが多いことは事実です。無料サービスとは言え、1/25のエラー率を許容できるかを考える必要はあります。

レスポンスの悪さを考慮すると、ネットワーク性能に問題があることを推測できます。

プラン 無料 プレミアム ビジネス
ネットワーク 10Mbps 100Mbps 1,000Mbps
メモリ 8GB 16GB 16GB
CPU Xeon E3-1230 Xeon W3680 Xeon W3680

これは、プラン毎のハードウェア性能差です。無料プランの場合、ネットワーク速度が僅か10Mbpsとなっています。これがボトルネックとなり、処理性能に余裕がある割にはレスポンスが悪かったり、エラーが多くなっているのでしょう。

有料プランを選択すれば解決しそうですが、コストパフォーマンスは良くありません。

プラン 無料 プレミアム ビジネス
初期費用 無料 無料 無料
月額費用(3年契約時) 0 340円 795円
標準月額(3ヶ月契約時) 0 637円 1,250円

公式サイトに掲載されている月額料金は 3年契約 時のものです。最低利用期間である 3ヶ月契約の場合、倍近い料金となります。この料金を支払うのであれば、国内の優良サービスも対象となり、あえてHostingerを選択するメリットはなくります。レスポンスは改善される可能性はありますが、海外サーバーである限り (まともな) 国内サーバーに勝ることはありません。

XREA、Xdomain、Webcrowとの比較

  Hostinger XREA Xdomain Webcrow
有効測定 829 803 864 864
棄却検定除外 1.33%(11) 0.87%(7) 0.69%(6) 0.23%(2)
棄却検定閾値 4.37秒 76.95秒 4.64秒 23.35秒
エラー 4.05%(35) 7.06%(61) 0%(0) 0%(0)
中央値 2.66秒 9.34秒 3.01秒 7.31秒
平均値 2.72秒 14.41秒 3.11秒 8.30秒
ばらつき 0.37秒 13.98秒 0.33秒 3.55秒

国内の無料レンタルサーバーと比較してみましょう。エックスサーバーのXdomain (エックスドメイン)、GMOデジロックのXREA (エクスリア)、ネットオウルのWebcrow (ウェブクロウ) との比較です。当サイトに各サービスのレビューやレスポンス性能測定の記事があるので、興味があればご覧ください。

この比較結果を見ると、Hostingerの処理性能の高さが分かります。しかし、レスポンス性能が悪いことから、やはりネットワークの帯域幅 (回線速度) を調整して、サーバーへの負荷を調整していることを推測できます。もちろん、サーバーがイギリスにあるため、単純に日本から経由するネットワーク品質に問題がある可能性もあります。

サーバーの処理性能なら、これら国内の大手サービスと比較して最も優秀です。しかし、レスポンス性能やエラー数は比較にならず、広告が表示されないというメリット以外で選択する理由はありません。XREAはエラーが多く、処理時間も遅いのですが、国内にサーバーがあるためレスポンス性能は上回ります。

「他のレンタルサーバーとの比較」を見ても分かりますが、多くのレンタルサーバの中でも上位の性能があります。しかし、ネットワーク性能はそれを生かすような仕様や環境となっていません。

Hostingerは国内のサービスと比較して、アカウント停止 (凍結) となる基準が厳しく、停止されると復帰が難しいようです。サポートに問い合わせれば解除される可能性はありますが、英語が必須となります。

何かしら理由がない限りHostingerを選ぶ必要はないでしょう。国内でも大手事業者が無料サービスを開始しており、機能性ならXREAが圧倒的に優れ、レスポンス性能ならXdomainが優れます。広告が気になるようなら、ミニバードやロリポップ!などの安いレンタルサーバーでも十二分なスペックを備えています。特にミニバードはお手軽料金の割には非常に性能が良くお薦めです。もう少し予算があれば、ロリポップ!のスタンダードプランがお薦めです。

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト 環境 平均値 ミリ秒中央値 ミリ秒標準偏差 ミリ秒エラー %

1.71.670.070

PHP7/CGI

1.821.830.220

1.941.950.070

PHP7/CGI

2.0220.140

PHP7

2.152.120.321

2.162.170.080

PHP7

2.172.130.240

2.182.150.30

2.242.250.280

PHP7/FastCGI

2.282.230.250

PHP5/CGI

2.42.410.270

PHP5/CGI

2.412.390.150

2.522.430.330

PHP7

2.712.680.348

2.722.660.3735

PHP7/FastCGI

2.732.70.30

PHP5/FastCGI

2.732.680.270

2.862.860.090

PHP5

3.032.960.380

3.13.150.310

PHP7/Module

3.113.120.080

PHP&MySQL

3.113.010.330

3.133.140.070

PHP5/FastCGI

3.143.090.210

3.142.90.630

3.142.960.680

PHP7/CGI

3.193.190.130

3.23.180.110

PHP5

3.513.470.398

PHP5/FastCGI

3.613.60.40

3.643.60.290

WordPress

4.183.891.090

PHP7

4.224.070.470

4.224.270.30

4.424.430.180

4.54.470.580

PHP5/CGI

4.564.450.560

PHP5

4.964.860.450

PHP5/Module

5.124.960.80

PHP7

5.164.242.230

5.184.691.240

5.255.210.320

PHP7

5.255.170.370

5.315.320.110

PHP5

5.315.230.560

PHP7

5.675.520.740

5.715.590.450

PHP5

5.885.80.360

6.055.920.580

PHP5

6.455.152.640

PHP5

6.456.330.770

6.526.490.760

PHP5/FastCGI

6.646.670.330

6.96.910.130

ライト

7.416.932.160

8.37.313.550

14.49.341461

hostingstock.netで測定した他レンタルサーバーとの比較です。

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス (プラン) に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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