さくらインターネットのレスポンス(応答速度)と安定性を評価しよう

新しい測定記事があります。

さくらインターネットは、日本のインターネット黎明期である1996年よりレンタルサーバーの提供を行っている国内最大手のホスティングプロバイダであり、老舗中の老舗です。インターネットの普及とともにサービスを展開しており、レンタルサーバーなら「さくらインターネット」と呼ばれるほど、 レンタルサーバーの代名詞的存在です。

レンタルサーバーでは機能よりレスポンス(反応速度)性能が重要となります。機能が充実していてもサイトスピード(ページスピード)が悪ければ、 訪問者の満足度を高めることはできません。

この記事ではさくらインターネットのレスポンス性能についてまとめています。

測定方法

測定方法の詳細は下記のページを参照してください。

レンタルサーバー性能の測定方法

家庭用回線に接続したサーバーから定期的にアクセスして、Webページのダウンロードに要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。

動的ページ
WordPressによるサイト(PHPとデータベースを利用)
コンテンツは平均的なWebページの構成を採用
HTTP Archiveの統計データを利用
静的ページ
htmlファイルによるサイト
WordPressが生成したデータを静的ファイルに変換したものを利用

測定期間

測定期間は 7日間 です。

測定と言っても一度きりでは意味がないので、一定期間の継続した測定を行っています。一定期間測定することで、夜間と日中の差を確認することもできます。

測定経路

データセンターの所在地については、以下の記事を参考にしてください。

さくらインターネットのデータセンターを探してみよう

家庭用回線からの測定となります。家庭用回線は測定中であってもサーバー以外のPCで普通にインターネットを利用しています。サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

家庭用回線の測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  動的ページ 静的ページ
測定回数 4,032 4,032
測定失敗 0.05%(2) 0%(0)
3秒以上 0.35%(14) 0%(0)
10秒以上 0%(0) 0%(0)
平均時間(秒) 1.04 0.46
ばらつき(秒) 0.41 0.28
測定失敗 ダウンロードが失敗した割合。()内は回数
3秒以上 ダウンロードに要した時間が3秒を超えた割合。()内は回数
10秒以上 ダウンロードに要した時間が10秒を超えた割合。()内は回数
平均時間 ダウンロードに要した時間の平均値
ばらつき 母標準偏差(グラフ上の値は標本標準偏差)
エラー内訳  
動的ページ(2) Operation timed out(2)

訪問者が待てる時間は 3秒 が限界

様々な調査結果により 3秒 という時間がキーワードとなります。コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと・・・

  • 過半数(57%)の訪問者がサイトから離脱
  • 80%のユーザーは、そのサイトを再訪しない
  • 1秒と3秒のサイトを比較すると、3秒のサイトはページビュー22%減、コンバージョン率38%減、直帰率50%増

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • Amazonであれば0.1秒の短縮で収益が1%向上
  • モバイル環境(スマートフォンやタブレット)ではより厳しくなる
参考
3秒が許容範囲 - Webサイトのパフォーマンスが重要な理由 | マイナビニュース
サイト表示が2秒遅いだけで直帰率は50%増加! DeNA事例から学ぶWebの自動最適化手法/日本ラドウェア | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2014 Spring | Web担当者Forum

快適なWebサイトの条件(ページスピード)は、 最低でも3秒以内 のレスポンスが必要となります。

さくらインターネットの測定結果を見ると、動的ページの平均時間が 1.04秒 、静的ページの平均時間が 0.46秒 となっており、十二分な性能であることが分かります。

最近ではPHP(または他の言語)やデータベースを使わないサイトはほとんどないので、動的ページの測定結果を検証してみましょう。

「ばらつき」は標準偏差を示し、総アクセスのうち 約68% の訪問者に、 1.04秒±0.41秒以内 でコンテンツを転送できる性能があります。同様に、 約95%1.04秒±0.41×2秒 に収まる傾向にあります。つまり、ほとんどの訪問者に対して、遅くとも 「1.86秒以内」 にコンテンツを転送できる性能があります。

一般的なコンテンツであれば、訪問者のWebブラウザでのレンダリング時間を考慮しても、十分に 3秒以内 に収まるでしょう。

他のレンタルサーバーと同様に、利用者の多くなる夜間にレスポンスが遅くなる傾向があります。遅くなると言ってもその差はわずかなので、負荷の高くなる時間帯でも問題のない性能があることが分かります。

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450

hostingstock.netで測定した他のレンタルサーバーとの比較です。今回の測定で利用したプランは「スタンダード」です。スタンダードプランの月額料金は515円(年間契約なら429円)です。利用料金を考慮するとコストパフォーマンスの高い結果と言えます。初めてレンタルサーバーを利用する初心者であれば、ほとんど不満が出ることはないでしょう。

今回の測定は「スタンダード」でしたが、他のプランであっても転送速度に明確な違いはないように思います。プラン間の差は機能や仕様の差となります。もし、転送速度に差があるのであれば、上位プランのメリットしてアピールするはずですが、そのような記述はありません。

同じプランでも契約時期や収容されるサーバーで性能が違う?

    測定回数 平均時間 ばらつき
動的ページ 前回 7,006 0.79 0.26
  今回 4,032 1.04 0.41
静的ページ 前回 7,006 0.45 0.21
  今回 4,032 0.46 0.28

前回の測定と比較して結果が変わっています。測定環境(測定元)に変化はないので、契約時に収容されるサーバーの差であることが分かります。前回のサーバーと性能が違うのかも知れませんが、共用サーバーなので同居人(他ユーザー)の影響が大きいでしょう。

なぜかというと「静的ページ」にはほとんど差がありません。つまり、PHPやデータベースの処理に差が出ていることになります。そう考えると、サーバーのスペックは同じで、同じサーバーをシェアしているWebサイト(ユーザー)の負荷が前回より高い可能性があります。

ただし、さくらインターネットのデータベースは別サーバーなので、 PHP (契約サーバー)が遅いのか、データベースサーバーが遅いのかは判断できません。

前回より少し遅くなっていますが、それでも快適なサイトを運営するのに、十二分な性能であることに変わりはありません。

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