表示速度は平均的だが処理性能は?さくらインターネットの評価と比較

さくらインターネットは国内大手のレンタルサーバーです。大阪、東京、北海道(石狩)でデータセンターを運営しており、他社のサービスでも採用されています。例えば人気の高いエックスサーバーもさくらインターネットのデータセンターを採用しています。hostignstockで調査した範囲内では、さくらインターネットを採用するサービスは高品質である傾向にあります。

レンタルサーバーを選択する際、大切なポイントは「ウェブサイトの表示速度」です。いくら豊富な機能に対応していても、運営サイトのレスポンスが悪ければ絵に描いた餅です。訪問者を自分に置き換えれば、なかなか開かないページにイライラすることは想像に難くないでしょう。そして、レスポンスの悪さは検索エンジンの評価を低下させます。

ここではさくらインターネットで稼働しているウェブサイトのレスポンス性能を評価し、他のレンタルサーバーとの比較を行います。

表示速度の重要性

様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。

コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 訪問者の40%がサイトから離脱(データによっては57%)
    • 訪問者の47%は2秒以内の読み込みを希望
  • 訪問者の79%は、そのサイトを再訪しない

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • 10万ドル/日を売り上げるサイトであれば、1秒の遅れで250万ドル/年の損失
    • Amazonであれば1秒の遅れで、16億ドルの機会損失
  • モバイル環境(スマートフォンなど)ではネットワーク環境が貧弱なこともあり、より厳しい評価となります

快適なWebサイトの条件は、 「最低でも3秒以内」 「理想は2秒以内」 のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要な情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。

参考
How Loading Time Affects Your Bottom Line
The Cost of Poor Web Performance - INFOGRAPHIC
hostingstockの測定結果について
端末(パソコンやスマートフォン)のレンダリング等の処理時間を含みません。理由は訪問者の端末の性能により、処理時間が大きく異なるためです。つまり、測定結果はウェブページを構成するデータを受信するために必要な時間を示しています。実際にウェブページが表示されるまでには、HTML解析やJavaScript処理などを含む描画時間が加算されます。

測定方法

測定用サーバーから定期的にアクセスして、ウェブページの取得に要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。より詳しい内容は こちら を参考にしてください。

測定対象  
動的ページ WordPressサイト(PHP&データベース)。コンテンツは平均的なウェブページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。
静的ページ HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとデータベースを使用しません。

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに2回の測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)×2回」の約4,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「利用者や訪問者が測定時だけ少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者や訪問者が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、訪問者が多くなり負荷が高くなる夜間と、負荷の下がる深夜との差が小さければ、負荷に強いサーバーであることを推測できます。

測定経路

当然ですが自社のデータセンターで運用されています。さくらインターネットのデータセンターは、大阪・東京・北海道(石狩)にあります。プランにより割り当てられるデータセンターは異なります。これまでの利用経験から推測すると、ライトプランが東京、それ以外は大阪という傾向にあるようです。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(インターネットプロバイダ)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定用サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

ネットワーク環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターとサーバーは有線接続

測定結果

  動的ページ 静的ページ
有効測定 4,032回 4,032回
棄却検定除外 2.18% (88) 7.51% (303)
棄却検定閾値 0.98秒 0.29秒
エラー 0% (0) 0% (0)
3秒以上 0.02% (1) 0.15% (6)
中央値 0.71秒 0.24秒
平均値 0.72秒 0.24秒
ばらつき/標準偏差 0.05秒 0.01秒
測定結果について
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定「Grubbs' test(α=0.001)」により省いています。これは測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、レスポンスの 約68%平均値 ± ばらつき に、 約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほどレスポンスが安定していることになります。

さくらインターネットの評価

レスポンスが非常に安定しています。ウェブページがいつでも同じ速さで表示されることは、訪問者にとって快適なウェブサイトの最低条件です。平均値は上位クラスに劣りますが、レンダリング時間を含めても理想値(2秒未満)をクリアするでしょう。

静的ページはトップクラスの性能ですが、棄却数の多さが気になります。理由は簡単であり、棄却対象となる閾値(0.29秒)が非常に低いためです。レスポンスのばらつきが非常に小さく、少しでもレスポンスが低下すると除外対象となりやすくなります。除外されたデータの平均値でさえ「0.61秒」であり、問題のない結果であることが分かります。

最も気になる点は、静的ページと動的ページの差です。静的ページの性能はトップクラスであり、バックボーン(ネットワーク)の優秀さが分かります。しかし、動的ページの結果には反映されていません。動的ページと静的ページの差は、PHPとデータベースの処理時間であるため、サーバーの処理性能が低いことになります。

実際にサーバーの処理性能を測定すると、それほど高くありません。詳しくは こちらの記事 をご覧ください。

測定対象のWordPressは「プラグインなし」「デフォルトテーマ」の構成です。シンプルな構成では問題なくとも、PHPやデータベースの処理が増えれば、レスポンスが低下しやすいということになります。

気になる場合はお試し期間を利用して、実際にレスポンスを確認してみるとよいでしょう。

ロリポップ、エックスサーバー、バリューサーバーとの比較

測定結果について
動的ページ(WordPress)の比較となります。グラフのX軸は7日間を4時間毎に区切ったものです。また、色の付いている部分は夜間(18:00~02:00)を示しています。
変動係数は「平均値に対する変動の割合」を示します。平均値(処理時間)が同じであっても、変動係数が大きい方の処理時間がばらつくことになります。
  さくらインターネット エックスサーバー ロリポップ! バリューサーバー
有効測定 4,032回 4,028回 4,032回 4,032回
棄却検定除外 2.18% (88) 0.77% (31) 1.17% (47) 0.27% (11)
棄却検定閾値 0.98秒 0.91秒 1.15秒 2.30秒
エラー 0% (0) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
3秒以上 0.02% (1) 0% (0) 0.07% (3) 0.05% (2)
中央値 0.71秒 0.40秒 0.43秒 0.94秒
平均値 0.72秒 0.40秒 0.48秒 1.02秒
ばらつき/標準偏差 0.05秒 0.12秒 0.14秒 0.26秒
変動係数 6.94% 30.0% 29.2% 25.5%

他のサービスと比較してみましょう。比較対象は、ロリポップ(Lolipop)、エックスサーバー(XSERVER)、バリューサーバー(VALUESERVER)です。

グラフを見ればすぐに分かりますが、高性能なレンタルサーバーを探しているならエックスサーバーが文句なくおすすめです。エックスサーバーのレスポンス速度と安定性は、他のサービスを含めてもトップクラスです。

エックスサーバーとさくらインターネットは同じデータセンターで運用されており、静的ページの結果はほとんど同じです。つまり、動的ページの差は、単純にサーバー性能の差となります。エックスサーバーは非常に高性能なサーバーを導入しており、他社とは比較にならないほどの性能があります。

バリューサーバーは常時高負荷な印象があり、グラフの変動もそれを示しています。これはコアサーバーも同様です。非常にコストパフォーマンスの高いサービスなので、トレードオフと考えるできでしょう。ランニングコスト重視のウェブサイト運営が目的なら悪くない選択です。

以前のロリポップ!の性能は褒められたものではありませんでしたが、2015年末にサーバー環境が刷新され大幅に改善されました。しかし、スタンダードプラン以上と未満とで大きな性能差があるため、スタンダードプラン以上がおすすめとなります。平均的には非常に優秀ですが、時間帯による変動があります。基本料金を考えれば、十二分な性能と言えるでしょう。この結果はスタンダードプランを利用したものです。

さくらインターネットは平均的な性能ですが、非常に安定していることが分かります。しかし、処理性能はあまり高くないため、高負荷時の挙動が気になります。ただし、これまで3回ほど測定していますが、高負荷らしい挙動は一度も確認できず、いつでも安定している印象があります。あくまでも推測ですが、ユーザー収容数を控えめにすることで、安定させているのかもしれません。

しかし、さくらインターネットはPHP7に非対応(2016年10月現在)など、共用レンタルサーバーに力を入れていない印象があります。人気の高いサービスであり、問題があるわけではありませんが、プレミアムプラン以上なら他サービスとの比較検討をおすすめします。

それぞれ仕様や機能に差はありますが、ウェブサイトの表示速度だけならどのサービスを選択しても問題ありません。ただし、エックスサーバーとバリューサーバーを比較すれば、訪問者が確実に体感するほどの表示速度差があります。

比較対象サービスのレビュー
エックスサーバーのレビュー / ロリポップのレビュー / バリューサーバーのレビュー

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450

当サイトで測定済みのレンタルサーバーとの比較です。詳細は各リンク先を確認してください。

注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

測定結果(未加工データ)

  動的ページ 静的ページ
3秒以上 0.02% (1) 0.15% (6)
中央値 0.71秒 0.24秒
平均値 0.74秒 0.27秒
ばらつき/標準偏差 0.12秒 0.40秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス(プラン)に対して多数のサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他ユーザーの負荷も影響します。

関連記事

BLOG

UPDATE