他社に見劣りしてしまう⋯⋯さくらインターネットのベンチマーク結果と比較

前回の測定 から約1年経過したので、久々にさくらインターネットの処理性能を測定しました。

さくらインターネットと言えば、モリサワのWebフォントを無料で提供するなど、有用かつユニークなサービスを積極的に導入しています。仕様は平凡ですが、過不足なくあまり不満の出にくいサービスとなっています。しかし、測定結果を見ると分かりますが、前回からハードウェアの変更(強化)はないようです。

レンタルサーバーを検討する際、重要なポイントはウェブサイトのレスポンス速度です。遅すぎる表示速度は訪問者にストレスを与え、さらに検索エンジンの評価も下がるため、何一つ良いことはありません。もう一つは処理性能であり、高負荷時(アクセス増時)の安定性に影響します。

この記事ではさくらインターネットの処理性能を評価した結果を掲載します。サーバーの処理性能はレスポンス性能や安定性能に大きく影響するため、レンタルサーバー選びでは重要な要素です。

測定方法

WordPressをインストールしたウェブサイト(サーバー)を利用します。

  • 「ランダムな3,000文字/記事」の投稿と削除
    • 100記事をまとめて投稿、投稿後に全削除
    • 1記事ごとの生成処理を含む
  • 投稿と削除はWordPressの標準関数を利用
    • wp insert post、wp delete post

これらの処理を 5分間隔 で実行し、一連の処理時間を測定します。つまり、 PHPとデータベースの処理性能 を確認します。データセンター内(またはサーバー内)で完結する処理なので、外部ネットワーク環境の影響を受けません。

負荷について
100件程度は大した負荷ではありません。しかし、共用サーバーなので高負荷とならないように、1件ごとにwait処理を差し込んでいます。

測定結果

結果 有効測定数 除外数 棄却閾値 エラー 中央値 平均値 ばらつき
Raw(未加工) 864回 - - 0%
(0回)
5.59秒 5.73秒 0.55秒
棄却検定 0.93%
(8回)
7.73秒 5.59秒 5.71秒 0.45秒
測定結果について
72時間(3日間) の測定結果です。X軸は時刻(0時~24時)を表し、各時刻の値は3日間の平均値です。有効測定数はエラーを省いた実測定数です。
測定のタイミングによりサーバーの負荷状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定「Grubbs' test(α=0.001)」により省いたデータも掲載しています。
ばらつき(標準偏差)は、処理の 約68%平均値 ± ばらつき に、約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど処理性能が安定しているといえます。

さくらインターネットの評価

前回(約1年前)の測定 と比較して大きな変化はありません。

平均値を比較すると少し処理速度が落ちていますが、収容されるサーバーの誤差の範囲内でしょう。どのサービスでも同じですが、サーバーのスペックが統一されていることは珍しく、契約時期(タイミング)による当たり外れは避けられません。

前回と同様に、訪問者が多くなり負荷の高くなる夜間帯に、処理速度が低下する傾向にあります。極端な変動ではないため気にするほどではありませんが、突発的な高負荷時の挙動は気になるところです。

この一年間でハードウェアが更新されたというアナウンスもないため、これがさくらインターネットの標準的な性能なのでしょう。大手事業者のサービスにしては、少し残念な結果となりました。

とはいえ相変わらず安定しており、エラーが発生することもありません。そして、ウェブサイトのレスポンス性能 は平均以上です。サーバーの性能はイマイチですが、バックボーン(ネットワーク性能)は優秀です。そのため、PHPやデータベースを使わなければ、トップクラスのレスポンス性能があります。

スタンダードプランならお得感がありますが、プレミアムプラン以上となれば他サービスとの比較が必要でしょう。

エックスサーバー、ロリポップ!、ヘテムルとの比較

変動係数
変動係数は「平均値に対する変動の割合」を示します。平均値(処理時間)が同じであっても変動係数が大きい方の処理時間がばらつくことになります。
  さくらインターネット エックスサーバー ヘテムル ロリポップ!
有効測定数 864 864 864 858
棄却検定除外 0.93%(8) 1.27%(11) 1.62%(14) 0.58%(5)
棄却検定閾値 7.73秒 3.41秒 5.25秒 4.52秒
エラー 0%(0) 0%(0) 0%(0) 0%(0)
中央値 5.59秒 2.23秒 3.69秒 3.86秒
平均値 5.71秒 2.28秒 3.74秒 3.87秒
ばらつき 0.45秒 0.25秒 0.35秒 0.17秒
変動係数 7.88% 11.0% 9.36% 4.39%

他社サービスと比較してみましょう。

比較対象はエックスサーバー、ヘテムル、ロリポップ!です。ロリポップ!は上位プラン(スタンダード以上)と下位プランで性能差があります。ここでは、さくらインターネットのスタンダードと同クラスのスタンダード(同名)を利用してます。

処理性能に差があることは明確ですが、800回以上の測定にも関わらずエラーは発生していません。突発的なアクセスでもない限り、不安定になることはありません。それぞれウェブサイトの表示速度も平均以上であり、仕様(機能)が用途に合えばどれを選択しても問題ありません。

残念ながらさくらインターネットの処理性能は、比較対象以外と比較しても高くありません。処理性能だけが全てではありませんが、最近はハイスペックサーバーを採用するサービスが増えており、どうしても見劣りしてしまいます。

ロリポップ!とヘテムルは同じ運営会社、さらに同じデータセンターにあります。それが理由か分かりませんが、同じスペックのサーバーを採用しているのかなと思うほど、似たような結果となっています。

優れているのは間違いなくエックスサーバーです。おそらく一般的なレンタルサーバーでは最高スペックのハードウェアを採用しており、処理性能だけでなく、実際のウェブサイトの表示速度も群を抜きます。特にX10プランのコストパフォーマンスの高さは素晴らしく、予算に余裕があればおすすめしたいサービスの一つです。

比較対象サービスのレビュー
エックスサーバー / ヘテムル / ロリポップ!

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト 環境 平均値 ミリ秒中央値 ミリ秒標準偏差 ミリ秒エラー %

1.71.670.070

PHP7/CGI

1.821.830.220

1.941.950.070

PHP7/CGI

2.0220.140

PHP7

2.152.120.321

2.162.170.080

PHP7

2.172.130.240

2.182.150.30

2.242.250.280

PHP7/FastCGI

2.282.230.250

PHP5/CGI

2.42.410.270

PHP5/CGI

2.412.390.150

2.522.430.330

PHP7

2.712.680.348

2.722.660.3735

PHP7/FastCGI

2.732.70.30

PHP5/FastCGI

2.732.680.270

2.862.860.090

PHP5

3.032.960.380

3.13.150.310

PHP7/Module

3.113.120.080

PHP&MySQL

3.113.010.330

3.133.140.070

PHP5/FastCGI

3.143.090.210

3.142.90.630

3.142.960.680

PHP7/CGI

3.193.190.130

3.23.180.110

PHP5

3.513.470.398

PHP5/FastCGI

3.613.60.40

3.643.60.290

WordPress

4.183.891.090

PHP7

4.224.070.470

4.224.270.30

4.424.430.180

4.54.470.580

PHP5/CGI

4.564.450.560

PHP5

4.964.860.450

PHP5/Module

5.124.960.80

PHP7

5.164.242.230

5.184.691.240

5.255.210.320

PHP7

5.255.170.370

5.315.320.110

PHP5

5.315.230.560

PHP7

5.675.520.740

5.715.590.450

PHP5

5.885.80.360

6.055.920.580

PHP5

6.455.152.640

PHP5

6.456.330.770

6.526.490.760

PHP5/FastCGI

6.646.670.330

6.96.910.130

ライト

7.416.932.160

8.37.313.550

14.49.341461

hostingstock.netで測定した他レンタルサーバーとの比較です。

注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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