PHP7対応で改善される表示速度、しかし⋯!バリューサーバーの評価と比較

バリューサーバー(VALUESERVER)は同社コアサーバーの後継サービスであり、ハードウェアのスペックが大幅に向上しています。どちらも仕様(機能)が変わらないため、初期費用無料のコアサーバーを選ぶ方が多いようです。しかし、全体的な性能はバリューサーバーが優れており、初期費用を許容できるならバリューサーバーを選ぶべきでしょう。とくにスタンダードプランは(1年契約時の)コストパフォーマンスが非常に高く、データベースやマルチドメインが無制限対応となります。詳しくはレビューを参考にしてください。

hostingstockでは継続的にサービスの性能測定を実施しており、バリューサーバーに対しても 約一年前 に測定しています。バリューサーバーはこれまでにPHP7やSNI SSL(TLS拡張)に対応するなど、しっかりとメンテナンスが実施されています。残念ながらハードウェア更新に関するアナウンスはないため、ウェブサイトの表示速度に変化はないかもしれません。とはいえ、ネットワークなど周辺環境が改善されている可能性もあるため再測定を実施しました。

レンタルサーバーを選択する際、大切なポイントは「ウェブサイトの表示速度」です。いくら豊富な機能に対応していても、運営サイトのレスポンスが悪ければ絵に描いた餅です。訪問者を自分に置き換えれば、なかなか開かないページにイライラすることは想像に難くないでしょう。そして、レスポンスの悪さは検索エンジンの評価にも悪影響です。

ここではバリューサーバーで稼働しているウェブサイトのレスポンス性能を評価し、他のレンタルサーバーとの比較を行います。

表示速度の重要性

様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。

コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、

  • 訪問者の40%がサイトから離脱(データによっては57%)
    • 訪問者の47%は2秒以内の読み込みを希望
  • 訪問者の79%は、そのサイトを再訪しない

レスポンス性能の影響は様々です。

  • 1秒遅くなると、ページビュー11%減、コンバージョン率7%減、顧客満足16%減
  • 10万ドル/日を売り上げるサイトであれば、1秒の遅れで250万ドル/年の損失
    • Amazonであれば1秒の遅れで、16億ドルの機会損失
  • モバイル環境(スマートフォンなど)ではネットワーク環境が貧弱なこともあり、より厳しい評価となります

快適なWebサイトの条件は、 「最低でも3秒以内」 「理想は2秒以内」 のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要な情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。

参考
How Loading Time Affects Your Bottom Line
The Cost of Poor Web Performance - INFOGRAPHIC
hostingstockの測定結果について
端末(パソコンやスマートフォン)のレンダリング等の処理時間を含みません。理由は訪問者の端末の性能により、処理時間が大きく異なるためです。つまり、測定結果はウェブページを構成するデータを受信するために必要な時間を示しています。実際にウェブページが表示されるまでには、HTML解析やJavaScript処理などを含む描画時間が加算されます。

測定方法

測定用サーバーから定期的にアクセスして、ウェブページの取得に要する時間を測定します。測定対象として 動的ページ静的ページ があります。より詳しい内容は こちら を参考にしてください。

測定対象  
動的ページ(WordPress) WordPressサイト(PHP&データベース)。コンテンツは平均的なウェブページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。
静的ページ(HTML) HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとデータベースを使用しません。

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに2回の測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)×2回」の約4,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「利用者や訪問者が測定時だけ少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者や訪問者が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、訪問者が多くなり負荷が高くなる夜間と、負荷の下がる深夜との差が小さければ、負荷に強いサーバーであることを推測できます。

測定経路

データセンターの所在地について、国内にあること以外は非公表です。独自に調査した範囲で推測すると、東京(品川区)にあるデータセンターで運用されているようです。

バリューサーバーからコアサーバーへpingを実行すると、反応が1ms未満となります。おそらく同社のサービスは全て同じデータセンターで運用されているのでしょう。ロリポップ!なども同じデータセンターにあるようです。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(インターネットプロバイダ)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定用サーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

ネットワーク環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターとサーバーは有線接続

測定結果

  PHP7 WordPress PHP7 HTML PHP5 WordPress PHP5 HTML
有効測定 4,014回 4,031回 4,031回 4,031回
棄却検定除外 0.75% (30) 0.97% (39) 0.82% (33) 0.94% (38)
棄却検定閾値 1.66秒 1.11秒 1.88秒 1.11秒
エラー 0.40% (16) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
3秒以上 0.12% (5) 0.10% (4) 0.05% (2) 0.02% (1)
中央値 0.84秒 0.57秒 1.05秒 0.56秒
平均値 0.88秒 0.61秒 1.10秒 0.60秒
ばらつき/標準偏差 0.16秒 0.10秒 0.16秒 0.10秒
変動係数 18.2% 16.4% 14.6% 16.7%
測定結果について
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定「Grubbs' test(α=0.001)」により省いています。これは測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、レスポンスの 約68%平均値 ± ばらつき に、 約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほどレスポンスが安定していることになります。
エラー内容  
PHP7 WordPress [16] HTTP 500 Internal Server Error[16]

バリューサーバーの評価

バリューサーバーはPHP7.0に対応したため、PHP5.6とPHP7.0、それぞれで稼働させたWordPressで測定しています。同じサーバーかつ測定期間も同じなので、レスポンス速度の変動は似たような傾向となっています。静的ページ(HTML)の条件は全く同じとなるため、ほとんど差はありません。

前回の測定はPHP5で実施していますが、今回のPHP5の結果と比較して大きな差はありません。おそらくハードウェアやネットワークの環境に変化はないようです。

新しく追加されたPHP7はPHP5より実行速度が改善されており、WordPressの測定結果にも反映されています。今回の測定環境に限れば、PHP7で稼働させることで 約2割 の改善となっています。しかし、他のレンタルサーバーの多くは、PHP5とPHP7とで有意差(t検定)を確認できましたが、バリューサーバーでは確認できませんでした。評価は「改善される傾向がある」程度に留めますが、少しでも表示速度を向上させる必要があるならPHP7を使用するとよいでしょう。

しかし、PHP7の測定ではエラーが発生しています。同時期に同じサーバーで ベンチマーク測定 を行っており、こちらも同じ時間帯(ある早朝の約45分間のみ)にエラーが発生しています。原因はMySQLの接続確立エラーとなっています。

どちらも同じ時期に測定しているPHP5.6は問題なく、PHP7.0のみで生じています。同じデータベースを参照しており、違いはCGI版PHP(7.0)とモジュール版PHP(5.6)ということです。モジュール版が安定動作することは明確ですが、おそらく一時的なエラーの可能性が高いでしょう。公式的には5.6が標準(推奨)となっていますが、今後はPHP7が標準となります。バリューサーバーでPHP7を使用する場合、定期的に不具合がないかをログで確認することをおすすめします。

平均的なレスポンス速度は十分なものですが、上位クラスのサービスと比較してかなりばらつく印象です。とはいえ、安価な利用料金を考慮すれば気になるほどではありません。

コアサーバー、さくらインターネット、エックスサーバー、ロリポップとの比較

  バリューサーバー PHP7 コアサーバー PHP7 さくらインターネット PHP5 エックスサーバー PHP7 ロリポップ PHP5
有効測定 4,014回 4,032回 4,032回 4,028回 4,032回
棄却検定除外 0.75% (30) 1.17% (47) 2.18% (88) 0.77% (31) 1.17% (47)
棄却検定閾値 1.66秒 2.10秒 0.98秒 0.91秒 1.15秒
エラー 0.40% (16) 0% (0) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
3秒以上 0.12% (5) 0.32% (13) 0.02% (1) 0% (0) 0.07% (3)
中央値 0.84秒 0.80秒 0.71秒 0.40秒 0.43秒
平均値 0.88秒 0.84秒 0.72秒 0.40秒 0.48秒
ばらつき/標準偏差 0.16秒 0.26秒 0.05秒 0.12秒 0.14秒
変動係数 18.2% 31.0% 6.94% 30.0% 29.2%
測定結果について
動的ページ(WordPress)の比較となります。グラフのX軸は7日間を4時間毎に区切ったものです。また、色の付いている部分は夜間(18:00~02:00)を示しています。
変動係数は「平均値に対する変動の割合」を示します。平均値(処理時間)が同じであっても、変動係数が大きい方の処理時間がばらつくことになります。

他のレンタルサーバーと比較してみましょう。

比較対象は、姉妹サービスのコアサーバー(CORESERVER)、さくらインターネット、エックスサーバー(XSERVER)、ロリポップ(Lolipop)です。ロリポップ!はモジュール版PHPに対応するスタンダードプランの結果です。

PHPのバージョンについて
記事作成時、さくらインターネットとロリポップ!はPHP7に対応していません。

バリューサーバーとコアサーバーは同じような平均値となっています。しかし、変動係数を比較すれば、似た平均値であってもバリューサーバーが安定していることが分かります。バリューサーバーは後発サービスであり、ハードウェア性能がコアサーバーより優れていることが理由でしょう。

さくらインターネットは良くも悪くも平均的な性能であり、可もなく不可もなくという結果です。レンタルサーバーの標準的な性能と考えてもよいでしょう。ロリポップ!はサーバー環境が刷新され、飛躍的に表示速度が向上しましたが、上位クラスと比較すればばらつきます。しかし、利用料金を考えれば十分なものです。

これらの中ではエックスサーバーの高性能さが際立ちます。他のサービスが時間帯によりレスポンスが変動するのに対して、エックスサーバーはいつでも安定した表示速度を維持しています。それだけ負荷耐性も高いことになり、安定したウェブサイトの運営が可能です。他のサービスと比較して基本料金は高めですが、間違いなくそれだけの価値があります。妥協して500円前後のサービスを契約しするなら、エックスサーバーのX10プラン(900円〜1,200円)を選択した方が満足度は高いでしょう。

各サービスの公式サイト
  バリューサーバー / コアサーバー / さくらインターネット / エックスサーバー / ロリポップ!

他のレンタルサーバーとの比較

公式サイト   WordPress Static
環境 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.210.210.0100.210.210.010

PHP5/CGI

0.240.220.0500.430.540.20

PHP7/CGI

0.240.210.0700.240.210.060

0.250.230.060.020.260.230.080.42

Xキャッシュ

0.290.250.0900.280.250.070

0.370.350.0800.360.350.050

0.380.370.0500.570.660.190

PHP7/FastCGI

0.40.40.1200.230.220.030

WordPressサーバー

0.420.350.200.40.350.150

0.430.470.2100.430.220.310

PHP7/FastCGI

0.450.450.1500.290.260.090

PHP7

0.460.450.030.050.350.310.10.02

キャッシュ無効

0.470.520.1500.430.540.210

PHP5/FastCGI

0.470.470.1200.230.220.030

0.540.70.2500.360.330.090.02

PHP5/FastCGI

0.550.540.1700.330.290.110

0.620.620.030.10.410.340.140.17

PHP7

0.620.590.3200.380.310.20

PHP7/Module

0.620.590.1100.40.390.040

キャッシュ無効

0.620.610.1200.380.370.050

PHPサーバー

0.620.70.2600.340.290.10

PHP5

0.630.620.0300.320.310.030

PHP7

0.630.590.3300.370.310.180

0.640.610.100.480.450.090

PHP7/CGI

0.660.620.1200.390.380.050

0.6600.2200.6600.230

0.670.650.070.150.520.470.140.15

キャッシュ

0.680.680.0600.690.690.060

PHP7/CGI

0.70.680.0900.510.490.070

PHP5

0.710.690.3300.370.30.180

0.710.730.300.350.310.110

0.720.710.0500.240.240.010

0.750.630.3100.560.470.290

PHP5

0.750.70.3700.370.310.160

モジュール

0.80.750.160.150.370.360.060.1

0.830.790.3900.340.280.150

PHP7

0.840.80.2600.740.690.160

PHP7

0.840.840.1400.670.670.060

PHP7

0.850.840.0600.670.660.050

PHP7

0.880.840.160.750.610.570.10

0.910.860.1600.510.490.070

0.920.880.200.640.610.240

0.930.920.0500.650.650.040

PHP5

0.930.920.1600.670.670.060

0.950.950.1200.520.50.080

CGI

0.950.90.1600.390.370.070

PHP5/FastCGI

0.970.960.40.150.420.410.070.07

PHP5

10.980.3100.770.80.140

PHP5/CGI

1.040.80.7700.530.490.110

1.051.010.1200.810.740.190

PHP5

1.11.050.1600.60.560.10

1.141.140.0400.270.260.020

ライトプラン

1.441.221.300.510.370.670

1.961.920.630.021.631.560.590.02

2.091.71.070.931.241.170.420.6

2.2300.650.111.9100.60.07

PHP5/FastCGI

2.722.550.670.072.412.170.660.07

PHP5/FastCGI

2.92.780.510.352.522.370.430.15

PHP7/FastCGI

2.922.80.530.272.572.460.360.22

PHP7

3.181.572.340.350.710.710.180.22

PHP5

3.31.532.470.50.720.720.180.45

3.363.090.630.022.892.720.350

3.7800.50.073.7700.510.1

4.564.530.3104.244.220.340

5.75.720.830.025.135.140.810.02

8.056.723.081.687.826.43.231.41

00000.340.290.150

00006.136.270.450

当サイトで測定済みのレンタルサーバーとの比較です。詳細は各リンク先を確認してください。

注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

各バージョンの未加工データ

PHP5.6

  動的ページ 静的ページ
3秒以上 0.05% (2) 0.02% (1)
中央値 1.05秒 0.56秒
平均値 1.11秒 0.61秒
ばらつき/標準偏差 0.20秒 0.15秒

PHP7.0

  動的ページ 静的ページ
3秒以上 0.12% (5) 0.10% (4)
中央値 0.84秒 0.57秒
平均値 0.89秒 0.62秒
ばらつき/標準偏差 0.21秒 0.16秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス(プラン)に対して多数のサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他ユーザーの負荷も影響します。

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