転送速度のばらつきが気になる!バリューサーバーのFTP性能の評価と比較

バリューサーバー(VALUESERVER)のファイル転送性能を測定してから1年ほど経過しました(前回の測定結果はこちら )。PHP7やSNI SSL(TLS拡張)に対応するなど、ソフトウェアは更新されていますが、ハードウェア更新に関するアナウンスはありません。

おそらくFTP性能に変化はないと思いますが、ネットワーク環境などの周辺が改善されている可能性があるため、同じ条件で再測定を実施しました。

レンタルサーバーを選ぶときに、ファイル転送性能(FTP性能)を気にする人はほとんどいません。例えば、第三者が開発したプラグインやテーマを利用するだけのWordPress運用なら、FTPの使用頻度は高くありません。しかし、WordPressテーマ(デザイン)の開発やオリジナルサイトの運用なら、転送速度の遅さは作業効率を悪化させ、ストレスの原因にもなります。

用途や目的によって、ファイル転送性能も重要な検討項目です。レンタルサーバーを選ぶときの絶対的な条件ではありませんが、あらかじめ確認しておけば後悔することもないでしょう。ここではバリューサーバーのファイル転送性能の評価と比較を行います。

バリューサーバーのファイル転送機能に関する仕様

プラン まるっと エコ スタンダード ビジネス
アカウント 1 25 無制限 無制限
FTP/FTPS/SFTP

通常のFTPだけでなく、セキュアなFTPSやSFTPに対応しています。

スタンダード以上であれば 無制限 (9,999個)にアカウントを発行できます。追加アカウントのユーザー名は「アカウント名.任意の文字列」と、契約時のアカウント名が付与されます。

アカウントごとにアクセス可能なディレクトリを設定できます。設定したディレクトリより上位ディレクトリへは移動できないため、第三者へのアカウント発行にも便利な仕様です。

測定方法

  • Webページを構成するファイルのアップロードとダウンロード
    • テキストファイルや画像ファイル
    • (HTTP)レスポンス性能の評価に利用しているサイト(ページ)を構成するデータ群
  • 合計ファイルサイズは約2MB(約20ファイル)

最大3つのファイルを並列転送します。レンタルサーバーがそれ以上の同時接続を許可していて、FTPクライアントも並列転送に対応していれば、この測定結果より早く転送できることになります。

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)」の約2,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者数(訪問者数)が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということを推測できます。

測定経路

国内にあること以外は非公表です 。hostingstockで調査した範囲で推測するなら、東京(品川区)にあるデータセンターで運用されているようです。

バリューサーバーからコアサーバーへpingを実行すると、反応が1ms未満となります。おそらく同社のサービスは全て同じデータセンターで運用されているのでしょう。ロリポップ!なども同じデータセンターにあるようです。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(関西電力)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定元のサーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  Up Down SFTP Up SFTP Down
有効測定 2,016回 2,016回 2,016回 2,016回
棄却検定除外 2.58% (52) 2.78% (56) 2.88% (58) 4.02% (81)
棄却検定閾値 2.94秒 1.74秒 3.10秒 2.06秒
エラー 0% (0) 0% (0) 0% (0) 0% (0)
中央値 1.80秒 1.04秒 1.85秒 1.29秒
平均値 1.77秒 1.08秒 1.83秒 1.33秒
ばらつき/標準偏差 0.24秒 0.14秒 0.27秒 0.15秒
変動係数 13.6% 13.0% 14.8% 11.3%
測定結果について
有効測定はエラーを省いた回数です。
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定「Grubbs' test(α=0.001)」により省いています。これは測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、転送時間の 約68%平均値 ± ばらつき に、約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど転送性能が安定しているといえます。
未加工データ(生データ)は最後に掲載しています。

バリューサーバーの評価

前回の測定結果と比較して改善されています。サーバー自体のハードウェアは更新されていないはずなので、データセンター内の周辺環境が改善されたのでしょうか。

今回はFTPだけでなくSFTPも同時に測定しています。レンタルサーバーによってはSFTPがFTPを上回りますが、バリューサーバーではSFTPが遅くなる結果となりました。SFTPを利用するには、30日毎にアクセス元(IPアドレス)の登録が必要であり、転送速度のメリットもないため積極的に使用する意味はないでしょう。

時間帯による変動がありますが、かなり素直な傾向です。訪問者(利用者)の少ない午前から、多くなる夜間にかけて徐々に転送速度が遅くなります。遅くはなりますが大きな変動ではないので、体感するほどではありません。

2,000回以上もの測定ですが、エラーもなく転送性能は安定しています。

サーバーごとのばらつき

  アプロード ダウンロード
有効測定 2,016回 2,016回
棄却検定除外 1.79% (36) 0.30% (6)
棄却検定閾値 8.43秒 7.59秒
エラー 0% (0) 0% (0)
3秒以上 17.6% (355) 13.4% (271)
中央値 2.59秒 1.39秒
平均値 2.87秒 1.89秒
ばらつき/標準偏差 1.18秒 1.20秒

これは同じ時期に別のサーバーで測定した結果です。測定環境は同じですがかなり大きなばらつきが発生しており、とても同じサービスとは思えません。

さらに、同じデータセンターで運用されているコアサーバーでも測定していますが、このようなばらつきはありません。つまり、測定元やネットワークの問題ではありません。

前回の測定を含めて、ハードウエアのスペックに変更はありません。基本的なハードウェア性能は高いのですが、コアサーバーやバリューサーバーは、サーバーにより当たり外れが大きい印象があります。

低価格なのに多機能であり、やや玄人向けのサービスです。あくまでも推測ですが、収容数が多いわけ(詰め込み過ぎ)ではなく、一部のヘビーユーザーによる負荷が高いことが原因のような気がします。

他のレンタルサーバーとの比較

プロバイダー 環境など アップロード ダウンロード
公式サイト 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.750.740.050.10.480.440.10.05

0.750.750.050.20.490.440.130.1

0.840.740.2400.730.640.180

0.860.850.060.10.590.510.190.1

0.90.70.4200.690.580.30

0.950.880.240.20.710.620.260.1

0.950.830.320.20.720.660.270.1

WordPress

0.990.880.320.250.710.590.280.35

1.040.780.4900.720.620.30

1.050.860.440.250.720.610.320.05

1.10.840.480.20.860.720.380.2

1.111.10.083.170.730.70.111.87

1.211.10.330.350.750.690.250.3

PHP&MySQL

1.331.270.260.11.131.010.250.1

SFTP

1.391.350.1401.061.030.110

1.441.210.6701.191.110.290

1.51.490.0701.331.20.540

1.531.530.090.90.890.870.091

1.561.550.100.970.960.070

1.581.580.060.050.980.870.210

SFTP

1.611.60.0701.721.690.120

1.611.560.1901.131.210.250

1.611.60.101.080.970.210

1.621.550.190.051.211.20.10.05

1.671.660.150.250.980.970.070.25

1.731.730.1101.061.050.090

1.771.80.2401.081.040.140

SFTP

1.831.850.2701.331.290.150

1.881.710.6901.531.520.330

1.9820.3301.191.150.110

新サーバー

2.112.030.350.41.441.360.40.2

2.141.920.6901.251.220.160

2.262.030.630.31.331.270.150.3

2.382.310.30.052.462.420.290.05

旧サーバー

2.482.280.550.151.921.780.520.05

2.622.41.022.81.841.740.631

2.922.51.1202.992.481.410

2.972.441.190.051.390.541.760

SFTP

32.990.2401.931.90.130

3.093.120.1601.361.330.120.05

3.413.410.0901.861.840.080

5.533.923.450.355.863.954.10.25

6.7500.730.28.7200.980.1

海外

11.611.60.4806.796.740.280

海外

12.112.10.507.477.450.190

海外

12.312.30.52010.910.31.350.05

海外

16.616.50.560.210.110.20.860.25

海外

33.430.27.130.1520.5201.830.05

hostingstockで測定した各レンタルサーバーのファイル転送性能です。詳細はリンク先をご覧ください。

注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

測定結果(未加工データ)

FTP

  アップロード ダウンロード
中央値 1.81秒 1.04秒
平均値 1.87秒 1.16秒
ばらつき/標準偏差 0.73秒 0.62秒

SFTP

  アップロード ダウンロード
中央値 1.85秒 1.30秒
平均値 1.95秒 1.47秒
ばらつき/標準偏差 0.87秒 0.83秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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