Electron(Chromium)を用いた新しい測定方法による、バリューサーバーの性能評価をまとめています。
バリューサーバーはコストパフォーマンスの高い、安価ながらも多機能なレンタルサーバーです。 年間契約ならわずか360円/月で、無制限にデータベースやマルチドメインを利用できます。 機能的に似ている初期費用不要のコアサーバーを選ぶ方が多いようですが、バリューサーバーのハードウェア性能は上位クラスであり、しっかりと比較検討する必要があるでしょう。
ここでは、バリューサーバーで稼働するWebサイトのレスポンス性能をレビューし、他社との比較を行います。
少し古い情報ですが、様々な調査結果により 3秒 という時間がレスポンス性能のキーワードとなります。現在はよりシビアになっているでしょう。
コンテンツが表示されるまでに3秒を超えてしまうと、
レスポンス性能の影響は様々です。
快適なWebサイトの条件は、「最低でも3秒以内」「理想は2秒以内」のレスポンスとなります。それを越えてしまうと、どうしても必要とする情報がない限り目に触れる機会すらなくなります。
レンタルサーバー選びで大切なポイントは「Webサイトの表示速度」です。いくら豊富な機能に対応しても、不安定であったりレスポンスが悪かったりすれば絵に描いた餅です。訪問者を自分に置き換えれば、なかなか開かないページにイライラすることは想像に難くないでしょう。そして、レスポンスの悪さはSEO的(検索順位)にも悪影響です。
測定用サーバーから定期的にアクセスして、コンテンツの取得に要する時間を測定します。測定対象として「WordPress(動的ページ)」と「HTML(静的ページ)」があります。より詳しい内容は下記を参考にしてください。
測定対象 | |
---|---|
動的ページ(WordPress) | WordPressサイト(PHP&MySQL)。コンテンツは平均的なWebページの構成を採用(HTTP Archiveの統計データを利用)。 |
静的ページ(HTML) | HTMLファイルによるサイト。WordPressが生成したデータをHTMLファイル化。PHPとMySQLを使用しません。 |
一度きりの測定では全く意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。例えば、訪問者の少ない深夜または早朝に測定すれば、最も良い結果を得ることが可能です。反対に、悪い結果が欲しければ負荷ピーク時に測定すればよいだけです。継続した測定により、「訪問者が測定時だけ少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを防げます。
測定期間は 7日間 とし、6分ごとに2回の測定を行うため約3,300回となります。
一定期間測定することで、訪問者数が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、訪問者が多くなり負荷が高くなる夜間と、負荷の下がる深夜との差が小さければ、負荷に強い安定したサービスであることを推測できます。
データセンターの所在地について、国内にあること以外は非公表です。独自に調査した範囲で推測すると、東京(品川区)にあるデータセンターで運用されているようです。
バリューサーバーからコアサーバーへpingを実行すると、反応が1ms未満となります。おそらく同社のサービスは全て同じデータセンターで運用されているのでしょう。 ロリポップ!なども同じデータセンターにあるようです。
経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。
WordPress (PHP7/CGI) |
HTML | |
---|---|---|
有効測定数 | 3,195 | 3,277 |
除外数 (割合) 異常値 (標準偏差) [ミリ秒] |
165 (4.91%) 1591 (299) |
83 (2.47%) 1176 (561) |
エラー (割合) | 0 (0%) | 0 (0%) |
中央値 [ミリ秒] | 896 | 702 |
平均値 [ミリ秒] | 907 | 711 |
標準偏差 [ミリ秒] | 66 | 30 |
HTML取得 [ミリ秒] | 244 | 45 |
すでに PHP5とPHP7との比較 をしており、バリューサーバーでもPHP7が有利なのを確認しています。 今後はPHP7が標準となるため、互換性の問題を除けばPHP5を利用する理由はほとんどないでしょう。 バリューサーバーではPHP5(モジュール版)が標準設定となっていますが、WordPressを含む多くのアプリケーションはすでにPHP7対応となっています。
測定結果を見れば非常に安定していることが分かります。 棄却検定による除外数の多さ(約5%)が気になりますが、他サービスと異なり異常値(除外データの平均)が小さいため悪いデータではありません。 除外数が多い理由は、大部分のデータが平均値付近に集中しており、少し外れた値でも異常値となるためです。 それだけ安定していることになり、「除外数が多い=ばらつく」という訳ではありません。 異常値は約1.6秒であり、遅延が発生した場合でも冒頭で説明した3秒に収まります。
グラフでも安定した傾向が一目で分かります。 非常にフラットであり、訪問者が増える夜間でさえ一定のレスポンス性能を維持しています。 最後に掲載している未加工データと比較しても大きな差はなく、上位クラスのレンタルサーバーの特性です。
バリューサーバー PHP7/CGI |
ロリポップ! PHP5/Module |
コアサーバー PHP7/FastCGI |
|
---|---|---|---|
有効測定数 | 3,195 | 3,240 | 3,344 |
除外数 (割合) 異常値 (標準偏差) [ミリ秒] |
165 (4.91%) 1591 (299) |
119 (3.54%) 3163 (2495) |
16 (0.48%) 2356 (716) |
エラー (割合) | 0 (0%) | 0 (0%) | 0 (0%) |
中央値 [ミリ秒] | 896 | 1087 | 822 |
平均値 [ミリ秒] | 907 | 1137 | 919 |
標準偏差 [ミリ秒] | 66 | 186 | 198 |
変動係数 | 7.3% | 16.4% | 21.5% |
HTML取得 [ミリ秒] | 244 | 450 | 178 |
ロリポップ!そして姉妹サービスであるコアサーバーと比較してみましょう。
ロリポップ!は公式サイトでおすすめとなっているスタンダードプランの結果です。 公式サイトでは高性能を謳っていますが、実際に測定してみると夜間帯にかなりのレスポンス性能低下を確認できます。 このような傾向となるのは低価格帯サービスの特性とも言え、ロリポップ!に限りません。 このような結果を見ると、バリューサーバーは低価格帯サービスの割に優秀であることが分かるでしょう。
コアサーバーと比較すると平均値はそれほど変わりません。 しかし、ばらつき(標準偏差)や異常値はバリューサーバーが優れており、性能を優先するならバリューサーバーとなります。 さらに詳細な比較内容は、後述するおまけ記事を参考にしてください。
バリューサーバーは他社と比較しても、上位クラスの速度と安定性があります。 1ヶ月契約の料金で比較するとそれほど割安感はありませんが、年間契約なら非常にコストパフォーマンスの高いサービスです。
バリューサーバー 1st |
バリューサーバー 2nd |
コアサーバー 1st |
コアサーバー 2nd |
|
---|---|---|---|---|
有効測定数 | 1,578 | 1,615 | 1,676 | 1,648 |
除外数 (割合) 異常値 (標準偏差) [ミリ秒] |
102 (6.07%) 1580 (306) |
65 (3.87%) 1603 (287) |
4 (0.24%) 2349 (52) |
32 (1.9%) 1483 (760) |
エラー (割合) | 0 (0%) | 0 (0%) | 0 (0%) | 0 (0%) |
中央値 [ミリ秒] | 899 | 893 | 833 | 816 |
平均値 [ミリ秒] | 909 | 906 | 1005 | 831 |
標準偏差 [ミリ秒] | 65 | 67 | 252 | 48 |
変動係数 | 7.2% | 7.4% | 25.1% | 5.8% |
HTML取得 [ミリ秒] | 243 | 244 | 265 | 93 |
両者はPHPの実行環境に大きな差があります。 バリューサーバーは標準設定の5.6がモジュール版PHP、他はCGI版PHPとなっています。 コアサーバーは全てFastCGIで動作します。
今回の測定ではPHP7を対象にしているため、CGIとFastCGIとの比較になります。 詳細を省きますが、FastCGIは連続的なアクセスに強い方式であり、初回と2回目のアクセスを分離して集計すると、グラフのような結果となります。 CGI版のバリューサーバーは1回目も2回目も変化はありません。 FastCGI版のコアサーバーは2回目のアクセスが高速化されています。
平均してしまうと同程度の性能でも、データを詳細に確認すると面白い差が見つかります。 ただし、差があると言っても、普通にWebサイトを運営するならどちらでも問題ありません。 サーバーのハードウェア性能はバリューサーバーが優れているため、高負荷時は有利でしょう。
公式サイト | WordPress | HTML | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
環境 PHP/WordPress/Theme | 平均値 秒 | 標準偏差 | HTML取得 | エラー % | 異常値 | 除外数 | 平均値 秒 | 標準偏差 | HTML取得 | |
WordPress PHP7/FastCGI | 722 | 153 | 88 | 0 | 4911 | 12 | 683 | 61 | 36 | |
PHP7/CGI | 907 | 66 | 244 | 0 | 1591 | 165 | 711 | 30 | 45 | |
PHP7/FastCGI | 1014 | 246 | 305 | 0 | 5093 | 44 | 797 | 154 | 82 | |
PHP7/FastCGI | 1099 | 467 | 408 | 0 | 4933 | 38 | 710 | 126 | 48 | |
PHP7/CGI | 1116 | 122 | 371 | 0 | 2074 | 29 | 806 | 92 | 77 | |
PHP5/Module | 1137 | 186 | 450 | 0 | 3163 | 119 | 741 | 122 | 50 | |
PHP5/FastCGI | 1216 | 349 | 548 | 0 | 3580 | 8 | 802 | 144 | 79 | |
PHP5/Module | 1274 | 141 | 861 | 0 | 2529 | 26 | 652 | 23 | 25 | |
PHP5/CGI | 1504 | 348 | 793 | 0 | 5690 | 80 | 786 | 207 | 54 |
WordPress | HTML | |
---|---|---|
中央値 [ミリ秒] | 897 | 703 |
平均値 [ミリ秒] | 941 | 722 |
標準偏差 [ミリ秒] | 174 | 117 |
HTML取得 [ミリ秒] | 270 | 45 |