レンタルサーバーのスタンダード!さくらインターネットのレビュー

さくらインターネット(SAKURA Internet)は、日本のインターネット黎明期である1996年よりレンタルサーバーを提供している国内最大手のホスティングプロバイダです。新しいサービスをいち早く提供しており、 レンタルサーバーなら「さくらインターネット」 と呼ばれるほど、レンタルサーバーの代名詞的存在です。

契約者が非常に多く(40万件以上)、昔からの玄人ユーザーもいるためノウハウが蓄積されています。問題が生じても、検索すればすぐにユーザーによるトラブルシューティングが見つかります。サーバーに致命的なトラブルでもない限り、サポートを必要とすることは少ないでしょう。

国内各地でデータセンターを運営しており、それらは 稼働率99.99%以上 の安定性を誇ります。同じデータセンターにある他社サービス(エックスサーバーなど)も安定性には定評があるため、データセンターそのものの品質が高いといえます。

正直なところ特徴的な機能はそれほどありません。しかし、標準的かつ過不足のない堅実な仕様となっており、どのような構成のウェブサイトを運営するにも困らないでしょう。スペックシートに表れない、ノウハウの蓄積、高い技術力、サポート品質なども検討材料となります。マニュアルやFAQも充実しており、フリーダイヤルによる電話サポート対応など、初心者にもおすすめできるサービスです。

公式サイトから見る特徴

  • 国内自社データセンターで運用され、サーバー稼働率は99.99%以上(実績値)を誇ります。
  • RAID1(ミラーリング)採用による冗長化で耐障害性を高めています。さらに別サーバーへのバックアップが定期的に実施されています。
  • 利用者数が多いため(40万件以上)、困ったときでも情報(解決方法)がすぐに見つかります。
  • SNI SSL(SSL/TLS拡張)に対応しており、ウェブサイトのSSL化コストを抑えることができます。
    • 定期的な更新を必要としますが「Let's Encrypt」を導入できます。
  • 美しいモリサワのWebフォントを無料で使えます(スタンダードプラン以上)。

各プランの比較

各プランを比較してみましょう。プランごとに差のある項目(機能)のみ掲載しています。

料金 ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
初期費用 1,029円 1,029円 1,029円 5,142円 5,142円
月額(1ヶ月契約) 129円 515円 1,543円 2,571円 4,628円
月額(12ヶ月契約) 129円 429円 1,286円 2,143円 3,857円

年間一括契約なら「約2ヶ月分」お得です(ライトを除く)。

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
ディスク容量 10GB 100GB 200GB 300GB 500GB
SSH ×
マルチユーザー × × ×
Cron ×
SFTP/SCP ×
複数FTPアカウント × × ×
MySQL × 20 50 100 200
データベース容量 × 500MB 1GB 2GB 3GB
さくらぽけっと ×
マルチドメイン 20 20 30 40 40
共有SSL ×
独自SSL
IPアドレス
× × × ×
独自SSL
SNI
×
WAF ×
メーリングリスト × 10 20 30 50
メール自動返信 × × ×
メール振り分け転送 × × ×
Webフォント ×

ライトの料金は魅力的ですが、機能がかなり制限されています。データベースが使えないのでWordPress等のCMSを使用できません。さくらインターネットなら「スタンダード以上」でなければ意味がないでしょう。

ビジネス以上なら グループでウェブサイトを管理 するための機能が装備されます。詳細は後述しますが、ビジネス以上でなければ複数のFTPアカウントを発行することができません。また、メールアカウントの仕様も大きく変わります。

個人で利用するなら「スタンダード」「プレミアム」、グループで利用するなら「ビジネス」「ビジネスプロ」となります。

さくらインターネットはプラン変更に非対応なので、最初のプラン選択は重要です。もし、リソース(データ転送量やドメイン数など)が不足し、上位プランへ移行するにも簡単な方法はありません。新しいプランを契約して、ウェブサイトのデータを手動で移行する必要があります。もちろん、サーバーの設定もやり直しです。

お試し期間
全プランで2週間のお試し期間があります。
最低利用期間
契約日より3ヶ月。3ヶ月未満での解約はできません。

ビジネスとビジネスプロの特徴

下位プランとの大きな差は 「複数人管理機能」 (マルチユーザー機能)でしょう。個人では管理が難しい中規模以上のウェブサイトに必須の機能です。

下位プランの場合、コントロールパネルにログイン可能なアカウントは1つしかありません。もし共同管理をするなら、契約者以外の人間にそのアカウントを教えることになり、全ての権限を与えることになります。

マルチユーザー機能があれば、ユーザー毎に新しいアカウントを発行できます。メールのみのユーザー、FTPとメールのみのユーザー、などアカウントごとに機能を制限できます。

下位プランのFTPアカウントは1つだけですが、マルチユーザー機能によりFTPアカウントを複数発行できます。例えば、第三者にファイルを送ってもらう場合に、FTPのみのアカウントを発行することもできます。

アカウントの種類は以下の通りです。

アカウント  
管理者 新たな管理者ユーザの発行やドメイン設定変更などの権限が与えられます。
準管理者 管理権限を持たないユーザの発行権限が与えられます。メールアドレスの発行のみを行うユーザを作成したい場合に適しています。FTP転送の権限も付与できます。
ウェブ管理者 ウェブサイトの管理に特化した権限が与えられます。
FTP利用者 FTPによるファイル転送が可能になります。
メール利用者 メールの送受信が可能となります。

データセンター

自社の国内データセンターで運用されています。さくらインターネットのデータセンターは「大阪」「東京」「北海道(石狩)」にあります。プランにより割り当てられるデータセンターは異なります。

これまでの利用経験から推測すると、東京または大阪が割り当てられるようです。 大規模なバックボーンを有しており、データセンター間は専用回線で直結されています。 どのデータセンターが割り当てられてもレスポンスに大きな差は出ません。

コントロールパネル

さくらインターネットのコントロールパネルは2種類あります。契約情報を管理する「会員メニュー」、サーバーを管理する「サーバーコントロールパネル」です。会員アカウント1つで、複数のサービスを契約管理できます。「会員メニュー」と「サーバーコントロールパネル」へログインするためのアカウントはそれぞれ異なります。

コントロールパネルのレスポンスは快適であり、メニューも整理されています。機能が少ないこともありますが、各種設定は簡単であり使い勝手に優れます。

会員メニュー
契約者情報の編集 / パスワードの変更(再発行) / クレジットカード情報の管理 / 2段階認証の設定 / 契約サービス管理 / 契約ドメイン管理 / 請求書の確認 / SSLサーバー証明書の手続き / 支払い方法の変更

転送量制限

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
データ転送量 40GB/日 80GB/日 120GB/日 160GB/日 200GB/日

他社と同様にデータ転送量に上限がありますが、業界トップクラスであり余裕があります。

世界中のウェブサイトを調査している「HTTP Archive」によると、ウェブページの平均サイズは2.5MBとなっています(2016年)。

これを基準にすると、スタンダード(80GB/日)なら「約32,000PV/日」「約960,000PV/月」ものアクセスが可能となります。もちろん、1ページあたりのデータ量に依存するので、テキスト主体のサイトであればさらに余裕が出ます。ブラウザのキャッシュ機能も転送量削減に効果的です。

マルチドメイン対応なので、複数のサイト運営も容易です。例えば、10個のサイトを運営した場合、1サイトあたり「約10万PV/月」まで対応できます(ライト)。個人運営サイトの規模なら、転送量制限で困ることはありません。

SSL

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
共有SSL ×
独自SSL IPアドレス × × × ×
独自SSL SNI ×

独自SSLに対応しており、 IPアドレスベースSNI SSL (ドメインベース)の2種類があります。それぞれの違いは、以下の記事を参考にしてください。

大きな違いはウェブブラウザの互換性です。従来のIPアドレスベースであれば、ほとんどのブラウザが対応しており、フィーチャーフォン(ガラケー)でも問題ありません。SNI(SSL/TLS拡張)は比較的新しい規格なので、古いブラウザでは非対応となります。

しかし、IPアドレスベースに唯一対応するビジネスプロも、証明書を1つしか設定できません。今後はSNI SSLが主流となるため、IPアドレスベースにこだわる必要はないでしょう。個人運営サイトなら尚更です。

さくらインターネットが提供するSSLサーバー証明書は以下の通りです。認証レベルが上がるほど審査が厳しくなり、サイトの信頼性が向上します。

  1年 2年 3年
ドメイン認証SSL(認証レベル1)      
ラピッドSSL 1,500円 2,700円 3,200円
GeoTrust クイック認証プレミアム 14,500円 26,500円 38,500円
JPRS ドメイン認証型ワイルドカード 16,500円 - -
GlobalSign クイック認証SSL 34,800円 - -
企業認証SSL(認証レベル2)      
Cybertrust SureServer
for SAKURA
38,500円 - -
Cybertrust SureServer
for ワイルドカード for SAKURA
99,000円 - -
Symantec セキュア・サーバID 81,000円 - -
Symantec グローバル・サーバID 138,000円 - -
JPRS 組織認証型 44,000円 - -
JPRS 組織認証型ワイルドカード 88,000円 - -
GlobalSign 企業認証SSL 59,800円 - -
SECOM パスポート for Web SR3.0 55,000円 - -
EV認証SSL(認証レベル3)      
Cybertrust SureServer EV
for SAKURA
49,500円 - -
GeoTrust トゥルービジネスID with EV 115,200円 - -
Symantec セキュア・サーバID EV 162,000円 - -

個人で契約できるのはドメイン認証タイプのみです。「ライトプラン+ラピッドSSL」の組み合わせなら、SSL対応サイトを格安(580円/月〜)で運営できます。

さらに、他社で取得したSSL証明書を持ち込めます。コントロールパネルに証明書を設定する機能があるため、ユーザー自身による導入が可能です。

無料SSLサーバー証明書「Let's Encrypt」も導入できます。ただし、Let's Encryptの有効期間は「90日間」と短く、さらに手動で更新する必要があります。自動更新には対応していません。

共有SSL

ライトプランを除き共有SSL(共用SSL)に対応しています。URL形式は以下の通りです。

SSLサーバー証明書にGeoTrustのRapidSSLが採用されています。

種類 ドメイン URL形式
初期ドメイン example.sakura.ne.jp https://example.sakura.ne.jp/
独自ドメイン example.com https://secureNNN.sakura.ne.jp/example.com/

ドメイン

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
マルチドメイン 20 20 30 40 40

全てのプランで複数のウェブサイトを運営できます。

表のマルチドメイン数には、サブドメインと後述する初期ドメインも含まれます。スタンダードであれば計20個のウェブサイト運営が上限となります。他社では無制限対応が標準的なので少なく感じます。

契約時に初期ドメイン(アカウント名.sakura.ne.jp)が発行されます。そのため、独自ドメインがなくても、ウェブサイトを公開できます。アカウント名が「example」であれば「example.sakura.ne.jp」となります。

さらに60種類の中から好みのドメインを選択し、そのサブドメインを2つ追加できます。例えば「mail-box.ne.jp」や「from.tv」などユニークなドメインが用意されています。つまり、独自ドメインがなくても標準で「3つ」のサイトを運営できます。

しかし、これらのドメインは契約期間のみ有効です。長期運営を予定しているなら、独自ドメインの取得をおすすめします。さくらインターネットでも独自ドメインを取り扱っていますが、ドメイン専門業者と比較して割高です。他社で管理するドメインを使用できるため、ムームードメインやスタードメインで契約するとランニングコストを抑えることができます。

ドメイン 取得 更新 移管
com / org / net / info / biz 1,715円 1,715円 1,715円
汎用型JP / 地域名JP(移管のみ) 3,620円 3,620円 3,620円
属性型JP / 地域型JP 10,000円 7,000円 無料
日本語ドメイン
正式に対応していますが、サポート対象外です。メールに非対応です。
DNSレコード
さくらインターネットで管理するドメインであれば、DNSレコードの編集が可能です。
A / MX / CNAME の編集に対応します。

データベース

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
MySQL × 20 50 100 200
データベース容量 × 500MB 1GB 2GB 3GB
SQLite

ライトプランを除きMySQLに対応します。

データベースユーザーは予め用意された「1個」だけであり、パスワード変更のみ対応してます。つまり、一つのユーザーで全てのデータベースにアクセスすることになります。そのため、パスワードを変更した場合、全てのウェブサイト(アプリケーション)の設定変更が必要となります。

プランごとのデータベース容量は「総容量」であり、一つあたりの容量ではありません。

メモ
正確には、MySQLのバージョンごとにユーザーが1つ用意されます。

データベースはコントロールパネルで追加します。データベース名は「アカウント名_任意の文字列」となり、必ずアカウント名が付与されます。

データベース  
MySQL 5.5.51。ENGINES: MRG_MYISAM / MyISAM / BLACKHOLE / CSV / MEMORY / ARCHIVE / InnoDB(標準) / PERFORMANCE_SCHEMA
phpMyAdmin 3.3.10.5。
SQLite 3.8.10.2。SQLite3関数、PDO関数に対応します。
外部接続
標準では外部からの接続に非対応です。SSH対応プラン(スタンダード以上)であれば、ポートフォワーディング(トンネリング)による接続が可能です。

FTP、その他のファイル転送機能

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
FTP
FTPS
SFTP ×
SCP ×
複数アカウント × × ×

標準的なFTPだけでなく、セキュアなFTPSにも対応します。さらにライト以外はSFTP/SCPにも対応します。

下位プラン(ライト/スタンダード/プレミアム)のFTPアカウントは契約時に発行される「1つのみ」となっており、(サブ)アカウントを追加できません。

共同管理で複数のアカウントを発行するなら上位プラン(ビジネス/ビジネスプロ)が必要です。アカウントごとにアクセスできるディレクトリ(ドメイン)を制限できます。

非対応
WebDAV
アクセス制限
.ftpaccessに対応しています。

ファイルブラウザ

ファイルブラウザ(ウェブアプリケーション)を標準装備です。

新旧、2種類のデザイン(GUI)が用意されています。上図は標準(新デザイン)のファイルブラウザです。

機能
ファイル作成 / ディレクトリ作成 / プレビュー / 名称変更 / 削除 / パーミッション変更 / ダウンロード / アップロード / コピー / 移動 / 圧縮 / 展開 / 検索 / テキスト編集(文字コード UTF-8/EUC-JP/SJIS/JIS 改行コード CR+LF/CR/LF) / DirectoryIndex

ファイルブラウザにアクセス制限機能があります。「Basic認証」「IPアドレス・ホスト/ドメイン・リンク元URL指定による制限」の設定に対応しています。

ディレクトリ構成

ディレクトリ構成は柔軟であり、ドメイン(初期ドメインを除く)のドキュメントルートを自由に設定・変更できます。ただし、「~/www」以下に限られるため、初期ドメインでも他ドメインのコンテンツにアクセスできる点は注意が必要です。例えば、図のような構成の場合、「http://初期ドメイン/example.com/」でも「example.com」のコンテンツにアクセスできます。

  • 非公開領域であるホームディレクトリ(/home/アカウント名)に編集権があります。公開したくないファイルを隔離できます。
  • 異なるドメインで同じディレクトリを参照することができます。

メール

全てのプランでメールアカウントを無制限に発行できます。ただし、他のレンタルサーバーと仕様が異なります。詳しくは「メールアカウントの注意点」をご覧ください。

プロトコル 対応  
POP SSL/TLS / STARTTLS/STLS
SMTP SMTP-AUTH / サブミッションポート / POP before SMTP、SSL/TLS、STARTTLS/STLS
IMAP SSL/TLS、STARTTLS/STLS
APOP  

多くのプロトコルに対応しており、どの様なメール環境でも困ることはないでしょう。IMAPに対応しているので、複数端末でのメール管理も容易です。

あまり多機能ではありませんが、以下の機能に対応しています。下位プランと上位プランに明確な機能差があります。

プラン ライト/スタンダード/プレミアム ビジネス/ビジネスプロ  
ウィルスチェック F-Secure KasperskyとF-Secure アカウントごとに有効/無効を切り替え可能です。
迷惑メールフィルタ SpamAssassin SpamAssassin ホワイトリストとブラックリストを備えます。
メール転送 複数の転送先を設定できます。転送専用にすることもできます。
自動返信 × 送信者に予め用意した定型文を自動的に返信します。振り分け転送機能に含まれます。
振り分け転送 × 受信時の処理を設定できます。「Subject/From/To」を対象に、キーワードが「含まれる/含まれない」場合、「破棄/転送/自動応答」を実行できます。
非対応
メールマガジン / キャッチオール
メール制限
送受信容量200MB/通。送信数上限 250通/15分(非公開)

メールアカウントの注意点(ライト、スタンダード、プレミアム)

さくらインターネットのメール機能は少し変わっています。少しというかかなり珍しい仕様です。

独自ドメイン「example. com 」と「example. net 」を追加済みとして説明します。

メールアカウントの設定画面を見ると分かりますが、ドメインごとの設定ではありません。メールアカウント「support」を追加した場合、「support@example. com 」「support@example. net 」と、登録している全ドメインに対してアドレスが生成されます。

さらに、ドメインが異なっても同じアドレスと認識されます。つまり、「support@example. com 」へ送信したメールが、「support@example. net 」や他のドメインの同アカウントにも届くことになります。

ウェブサイトを運営していてドメインごとに「contact」や「info」というアドレス(アカウント)を作成することはできますが、別々のアドレスとしては機能しません。同じアカウント名は、ドメインが異なっても同じメールボックスで管理されることになります。

公式サイトにも注記があります。動作確認してみると確かにどのドメインにも同じメールが届きます。

同じアカウント名のメールアドレスについてドメインごとに分けて利用することはできません。

(例:「info@◯◯◯.com」と「info@△△△.net」の場合、同じ「info」のメールボックスに配信されます)

これは下位プランの仕様です。上位プラン(ビジネス/ビジネスプロ)の仕様は他の一般的なレンタルサーバーと同じです。

ウェブメーラー

ウェブメーラー(ウェブアプリ)を標準装備なので、ブラウザでメールを管理できます。

2種類(新・旧)のデザインを選択できます。上図は標準の新デザインです。

多機能ですが、スマートフォンには最適化されていません。どの端末でアクセスしても同じ画面が表示されます。画面の狭い端末ならIMAP対応のメールクライアントを使用するべきでしょう。

「メール転送」「パスワードの変更」「迷惑メールフィルタ」「受信拒否リスト」、それぞれの設定をウェブメーラーで行えます。他社ではコントロールパネルにある機能ですが、さくらインターネットには 複数人管理機能 (マルチユーザー機能)があるため、このような仕様となっているのでしょう。

例えば「メール利用者」というユーザーの種類がありますが、「メール利用者」はウェブメールの利用権限しかありません。メール関連の設定がウェブメーラーにあれば、コントロールパネルへのログイン権限が不要となります。

メーリングリスト

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
メーリングリスト × 10 20 30 50

メーリングリストに登録可能なユーザー(アドレス)は(仕様的に)無制限です。しかし、メールの送信数に制限値(非公開)があります。そのため、大規模なメーリングリストの運用は不可能です。これは、さくらインターネットに限った話ではありません。

メーリングリストには国産の fml (エフエムエル)を採用しています。「Mailman」とともに定番のメーリングリスト管理アプリケーションです。使い方の流れを簡単に説明しましょう。

まず、メーリングリストに参加する方法は2種類です。

  1. 例えば「ml@example.com」というメーリングリストを作ったとします。すると管理用アドレス「ml-ctl@example.com」が生成されます。
  2. 参加者はその管理用アドレスへ、本文に 「subscribe 名前」 とだけ記述したメール(タイトル不要)を送信します。すぐに参加確認のメールが届きます。そのメールにある 「confirm 長い数字 名前」 を本文にして返信します。
  3. 管理者宛に認証メールが届きます。参加を承認するなら本文に 「approve メーリングリストのパスワード 参加依頼者のアドレス」 とだけ記述し返信します。すぐに、(管理者に)登録完了メールが届きます。参加依頼者への通知は行われません。

もう一つは、管理者がコントロールパネルで手動追加する方法です。相手に確認メールが送られることもなく、すぐに登録されます。

退会処理も、メール本文に「bye」と書いて送るだけです。コントロールパネルでも削除できます。

機能  
件名編集 件名に任意のタイトルと連番を付与することができます。
投稿制限 「参加者のみ」「誰でも」「管理者の承認が必要」から選択できます。
記事公開 過去記事(メール)の公開機能もあります。ただし、閲覧制限機能はないので、参加者のみ利用するならBASIC認証等でアクセス制限する必要があります。
ウィルス対策 メールのウィルスチェックを行います。「有効・無効」の切替が可能です。
メッセージ編集 メーリングリストの紹介、メンバー以外から投稿があった際に返信するメッセージ、メーリングリストの目的、約束事 、メンバー用ヘルプファイル、管理者用ヘルプファイル、これらのメッセージをカスタマイズできます。

参加依頼や配信認証など、管理者に送られるメッセージは英語です。簡単な英語なので困ることはないでしょう。

PHPの仕様、他の言語について

PHPとPerlは複数のバージョンに対応しており、自由に切り換えることができます。しかし、他社のようにドメインやディレクトリごとの設定ではなく、全てのサイト(ドメイン)に反映されます。PHPはCGI(非FastCGI)で動作します。

「php.ini」をコントロールパネルで編集できます。ファイル自体は「/home/アカウント名/www/php.ini」にあるので、FTP等で直接編集することもできます。ドメインごとに設定を変えるなら、対象ドメインのドキュメントルートにphp.iniを用意しましょう。

php.ini  
設置場所 ホームディレクトリ(~/www)もしくはドメインごとのドキュメントルート
仕様 ホームディレクトリに設置すると、ホームディレクトリ配下全てのディレクトリで有効。
ドメイン毎のディレクトリに設置すると、そのディレクトリ配下のみ有効。
その他 PHP5.3以上なら「.user.ini」も有効です。

RubyやPythonにも対応します。

言語 バージョンなど
PHP CGI 7.1.0 / 5.6.27(標準) / 5.4.45 / 5.3.29 / 5.2.17 / 4.4.9。
ビジネスプロのみモジュール版PHPに対応。
Perl 5.14.4(標準) / 5.12.5 / 5.10.1 / 5.8.9
Python 2.7.6
Ruby 1.8.7
SSI

標準で読み込まれる拡張モジュール

Loaded extensions Core date libxml openssl pcre sqlite3 zlib ctype curl dom hash fileinfo filter gd gettext gmp SPL iconv json mbstring mcrypt session standard mysqlnd PDO pdo _mysql pdo_ sqlite Phar posix Reflection mysqli SimpleXML snmp soap exif tokenizer xml xmlreader xmlwriter xsl zip cgi-fcgi ereg mysql Zend OPcache SQLite cgi
7.1 - - - - -
5.6 - -
5.4 - - -
5.3 - -
5.2 - - - - - - - -

SSH

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
SSH ×

スタンダード以上でSSH(シェルログイン)に対応します。

パスワード認証 となっており、初心者でも簡単に利用できます。サポート対象外ですが正しく設定すれば 公開鍵認証 にも対応できます。

最初から有効となっており、コントロールパネルにSSHの設定はありません。他社の様に「IPアドレスによる接続制限」がないため、ネットワーク環境が変わっても問題なく接続できます。

複数人管理機能(ビジネス/ビジネスプロ)で追加したアカウントではSSHを利用できません。どのプランであっても「初期アカウント」だけが対応します。

Cron

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
Cron × 5 5 5 5

ライトプランを除き 5個まで 設定できます。他のレンタルサーバーと比較して少な目です。

Cronの設定方法ですが、初心者には少し難しいでしょう。他社だとプルダウンメニューから選択するだけのものもありますが、さくらでは crontab の書式で設定します。詳しくは説明しませんが、上図の設定の場合、毎時30分に「実行コマンド」の内容が実行されます。

登録後の編集に対応しています。意外かもしれませんが、設定済みのCronを編集可能なレンタルサーバーは多くありません。

最短実行間隔は 2分 となっていますが、負荷の高い処理は制限対象となります。

メモリやCPUに著しく負荷をかける処理は他のお客様にご迷惑がかかりますのでおやめください。

サーバ運用に支障をきたす場合はやむを得ない場合には、予告無く設定解除、機能制限することがあります。

実行頻度が1時間以内に連続 する場合や、 CPU処理時間が60秒以上連続 で利用される場合、予告なく設定解除される場合があります。

ログ

アクセスログとエラーログを取得できます。初期設定は無効なので、コントロールパネルで有効にしましょう。

  • アクセスログとエラーログは、サーバーにログファイルとして出力されます。保存期間は「1ヶ月〜24ヶ月」です。
  • 当日分のエラーログをコントロールパネルで閲覧可能です。

少し不便な仕様ですが、全てのドメインのログが1つのファイルにまとめられます。

ログ仕様  
アクセスログ  
保存周期 午前0時頃に前日のアクセスログを保存
保存場所 /home/アカウント名/log/access log [日付]
保存形式 テキスト形式 (前日のアクセスログはgzipで圧縮)
エラーログ  
保存周期 午前0時頃に前日のエラーログを保存
保存場所 /home/アカウント名/log/error log [日付]
保存形式 テキスト形式 (前日のエラーログはgzipで圧縮)

アクセス解析

多くのレンタルサーバーで標準となっている「Webalizer」を採用しています。

  • 午前0時頃に更新されます。
解析内容
月の統計 / 日ごとの統計 / 時間ごとの統計 / ヒット数ランキング(URL別、転送量別、Entry Pages別、Exit Pages別、サイト別、転送量別) / リファラー(どのリンクから訪問してきたか) / ユーザエージェント(ブラウザ、OS) / 国別の統計
訪問者数(Sites) / 転送データ量(KBytes) / 訪問者数(過去30分以内の重複IPアドレスを除く数 / Visits) / HTMLページ数(Pages)/ 正常なアクセス数(Files) / エラーを含む全てのアクセス数(Hits)

バックアップ

バックアップ環境が整備されており、万が一サーバーにトラブルがあっても高確率でデータが守られます。ただし、これらは事業者側の保守を目的としたものなので、ユーザーに提供されることはありません。

  • 同一のデータを複数のディスクに書き込むRAID1によるデータの冗長化
  • さらにサーバー全体のバックアップが毎日行われます(別サーバーへ保存)

残念ながら、ユーザー向けのバックアップ機能はありません。

セキュリティ

国外IPアドレスフィルタ

国外からの接続を制限する機能が初期設定で有効となっています。コントロールパネルで有効・無効を変更できます。

アクセス制限対象
メール送信(SMTP)/ ファイル転送(FTP/SFTP)/ シェルログイン(SSH)/ ウェブアクセス(HTTP/HTTPS 特定ファイルのみ)

HTTP/HTTPSについては一部(下表)の制限のみです。そうでなければ海外からウェブサイトにアクセスできなくなります。主にWordPressのセキュリティを向上させるための設定です。

HTTP(S)対象  
ディレクトリ /wp-admin/ (Wordpress 管理画面ディレクトリ)
ディレクトリ /phpmyadmin/ (phpMyAdmin ディレクトリ)
ファイル wp-login.php (Wordpress 管理画面ログイン)
ファイル mt.cgi (Movable Type 管理画面ログイン)
ファイル admin.cgi (各種CGI管理画面ログイン)

WAF

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
対象 ×

WAF(Webアプリケーションファイアウォール)は、ウェブサイトを対象としたクロスサイトスクリプティングやSQLインジェクションなどの攻撃を防ぎます。

採用されているWAFは、JP-Secureの「SiteGuard」です。レンタルサーバーとしてはさくらインターネットが国内で初めて採用しています(2008年12月)。今では多くのレンタルサーバーで採用されています。

コントロールパネルで操作可能な項目は、ドメインごとの有効/無効の切り換えのみです。ディレクトリやページ単位で設定することはできません。

初期設定は無効なので必要に応じて有効にします。WAFはウェブサイトとの相性があるため、サイト表示に不具合が出る場合は無効にします。mod_rewrite、CGI、PHP等の動作に影響を与える可能性があります。

WAFを無効にしたくない場合は、WAFの 検知ログ を確認して、該当箇所の修正により対処できる可能性があります。

  • 検知ログは「3ヶ月分」「最大1,000件」が保存されます。

Web改ざん検知サービス(オプション)

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
Web改ざん検知

さくらインターネットの Web改ざん検知サービス は、契約者のウェブサイトを毎日巡回し、サイトの改ざん状況をチェックするクラウドサービスです。

  • 改ざんが確認された場合、即座に登録したメールアドレスに通知します。
  • 二次被害を防ぐために、メンテナンス画面へ自動的に切り換えます。
  • 詳細なレポートが生成されるため、それを基にウェブサイトの復旧(修正)が可能です。

セキュアイレブンの「GRED Web改ざんチェック」が採用されています。

初期費用は無料です。詳細な料金は以下の通りです。

解析ページ数 解析対象
ドメイン
チェック回数 月額料金 年額料金
30ページ 5 1回/1日 972円 11,664円
100ページ 5 1回/1日 2,160円 25,920円
300ページ 5 1回/1日 5,400円 64,800円
1,000ページ 5 4回/1日 16,200円 194,400円

ハードウェアやソフトウェア

OS / ウェブサーバー(仮想環境)
FreeBSD 9.1-RELEASE-p24 / Apache 2.2.x
CPU/メモリ(スタンダードプラン参考)
Intel Xeon E312xx / 18GB
仮想環境なので本来のスペックは不明です。Sandy BridgeのXeon、2.6GHzクラスのCPUが採用されており、各仮想環境に18GB割り当てられています。推測ですがCPUはE5-2689、E5-2670、E5-4650Lなどが該当します。
もちろんユーザーごとの割り当てではなく、一つのサーバーに複数の仮想環境が用意され、それぞれに多くのユーザーが収容されています。
コマンドとライブラリ
さくらインターネットに導入されているコマンドとライブラリはこちらを参考にしてください。
ファイルの存在を確認しただけであり、パーミッションによっては動作しないものもあります。

インストール補助機能

  クイックインストール対応
CMS WordPress / concrete5 / XOOPS Cube Legacy / EC-CUBE
CGI tDiary(日記)/ npc(カウンター)/ TEXT COUNTER(カウンター)/ POSTMAIL(フォームメール)/ 書き込み隊(掲示板)/ LIGHT BOARD(掲示板)/ マルチゃん(掲示板)/ WEB FORUM(掲示板)

さくらのブログ

「さくらのブログ」 というさくらインターネットのオリジナルブログを無料で利用できます。一般的な無料ブログと同じような仕組みとなっており、誰でも簡単にブログを公開することができます。

独自ドメインにも対応しており、自由にドメインを設定できます。ただし、さくらのブログに設定した独自ドメインではメールの送受信ができなくなります。

例えば、独自ドメイン「example.com」でメールを利用したい場合、サブドメイン「blog.example.com」をさくらのブログに設定すると良いでしょう。サブドメインであれば「example.com」のメールは問題なく利用できます。

「example.com」でメインコンテンツ、「blog.example.com」でブログという構成も可能です。

さくらぽけっと

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
対象 ×

レンタルサーバーを借りてみたものの「容量が余って勿体ないな」と思うことがあります。レンタルサーバーのディスク容量は年々増加しており、多くの画像や動画を扱わなければ不足することもありません。

さくらぽけっと は、そのような余っているディスク容量を有効活用するためのサービス(簡易オンラインストレージ)です。オプションサービスですが、スタンダード以上なら 無料 で利用できます。いつでもどこでもスマートフォンやタブレットからサーバーのファイルへアクセスできます。

例えば、旅行先など、写真や動画を撮り過ぎてスマートフォンの空き容量がなくなってしまったときに、レンタルサーバーにアップロードすることで空き容量を作ることができます。

簡易的なFTPツールといった感じですね。iOS(8.0以上)とAndroid(4.4以上)に対応しており、簡単にレンタルサーバーのファイルにアクセスできます。

その他の機能

機能  
アクセス制限 BASIC認証。IPアドレス/ドメインによる制限。ファイルブラウザで設定できます。
.htaccess mod_rewrite / mod_deflate / mod_expires / mod_mime(AddType) / mod_dir(DirectoryIndex)

モリサワWebフォント

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
対象 ×

美しい日本語フォントを提供しているモリサワのWebフォントを無料で利用できます。条件は以下の通りです。

  • スタンダードプラン以上
  • 一つのドメイン(サイト)のみ
  • 上限は2.5万PV(超過すると訪問者のローカルフォントが利用されます)

WordPressならプラグイン「TS Webfonts for SAKURA RS」(TypeSquare Webfonts Plugin for さくらのレンタルサーバ)を導入します。クイックインストール機能でWordPressを導入した場合、自動的にプラグインが追加されます。

WordPress以外でも下記のタグを追加することで利用可能となります。

<script type="text/javascript"src="//webfonts.sakura.ne.jp/js/sakura.js"></script >

下記のフォントを利用できます。

フォント  
明朝体 リュウミン R-KL / リュウミン M-KL / 見出しミンMA31 / A1明朝
ゴシック体 新ゴ R / 新ゴ M / ゴシックMB101 B / 見出しゴMB31 / ナウ-GM
丸ゴシック体 じゅん 201 / じゅん 501 / 新丸ゴ
デザイン書体 フォーク R / フォーク M / 丸フォーク R / 丸フォーク M / カクミン R / 解ミン 宙 B / シネマレター / トーキング / はるひ学園 / すずむし / G2サンセリフ-B
装飾書体 新丸ゴ 太ライン
筆書体 正楷書CB1 / 隷書101
UD書体 UD新ゴ R / UD新ゴ M / UD新ゴ コンデンス90 L / UD新ゴ コンデンス90 M

設定方法

コントロールパネルで対象ドメインを選択するだけです。PV数を確認できます。

リソースブースト

HTTPの同時接続数と転送量上限を一時的に緩和する機能です。アクセス集中時の503エラー(Service Unavailable)の発生を抑えることができます。機能の持続期間は実行してから2日後の24時までです。再度利用可能となるのは(実行日から)14日後となります。

全プラン対応(無料)です。

プラン変更対応

廉価プランを契約していてリソースが不足した場合、普通なら上位プランへの移行を検討するでしょう。しかし、さくらインターネットはプラン変更に非対応です。プランごとに収容サーバーが異なることも原因でしょう。

プランを変更するには、対象プランを新規に契約する必要があります。そして、データ(ファイルやデータベース)を新しいサーバーへ移し、サーバー環境を再構築します。引っ越し作業の手間や初期費用を考えると、気軽にプラン変更はできません。

サポート対応

  • メール対応
    • 公式サイトにあるメールフォームからの問い合わせ。契約後なら会員メニュー内にお問い合わせ機能があります。
    • 原則当日対応
    • 10:00~18:00 / 平日、土日、祝日対応(年末年始/指定休日を除く)
  • 電話対応
    • フリーダイヤル
    • 09:45~18:00 / 平日のみ

支払い方法

支払い方法  
クレジットカード VISA、MasterCard、JCB、AMERICAN EXPRESS、Diners Club。デビッドカード対応です。
銀行振込 振込み手数料が必要です。
自動口座振替 金融機関口座からの自動引き落とし。「預金口座振替依頼書」の提出が必要です。
請求書払い コンビニエンスストア、郵便局・ゆうちょ銀行。請求発行手数料324円が必要です。

まとめ

基本料金とスペックだけを他社と比較すると、目立つ特徴がないように思えます。しかし、少し地味ですが基本的な仕様はしっかりと押さえてあり、不満の出にくいレンタルサーバーです。

とは言え、下位プラン(ライト/スタンダード/プレミアム)はメールアカウントの仕様が特殊であったり、複数のFTPアカウントが発行できないなど、割り切りが必要な部分もあります。

初心者なら「スタンダードプラン」がおすすめです。WordPress等のクイックインストール機能(補助機能)があり、すぐにウェブサイトを公開できます。また、Cronに対応しているので、定期的な自動処理が必要になったときにも対応できます。SSH(シェルログイン)も、最初は不要ですが慣れると手放せなくなります。

少しでも気になるなら、14日間のお試し期間(全プラン対応)を利用してはいかがでしょうか。


更新履歴  
2017年01月17日 記事を修正しました。
2016年12月23日 PHP7.1が追加されました。
2016年09月20日 レビュー改訂

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