VPSと共用サーバーの好いとこ取りレンタルサーバー Zenlogicのレビュー

Zenlogic(ゼンロジック)はファーストサーバが運営するちょっと変わったレンタルサーバーです。公式サイトを開くとVPSらしいスペック表が表示されるため、「なんだVPSか⋯⋯」とそのまま閉じてしまうかもしれませんが、Zenlogicは「いたって普通の共用レンタルサーバー」です。

他社との大きな違いは「VPSのメリットを生かしたレンタルサーバー」ということです。一般的な共用サーバーの場合、CPUやメモリなどのリソースを多くのユーザーで共有します。そのため、特定のウェブサイトに多くのアクセスが発生すると、他のサイトのレスポンスが低下したりエラーが発生するようになります。

VPSも複数のユーザーで共有することに変わりませんが、予めユーザー毎にリソースを割り当てます。そのため他のウェブサイトが高負荷となっても、自分のウェブサイトに対する影響がほとんどありません。つまり、割り当てられたスペックの範囲内で安定したサイト運営が可能となります。

また、VPSはサーバーの管理(セキュリティ対策など)を自己責任で行うことになり、多くの知識と技術が必要です。Zenlogicはサーバーの管理をファーストサーバに任せて、ユーザーはウェブサイトの運営にだけ集中できます。つまり「 VPSの安定性と共用レンタルサーバーの使いやすさ 」を組み合わせたサービスがZenlogicとなります。

Zenlogicはその仕様から法人や個人事業主を主対象としたサービスですが、個人でも問題なく契約できます。しかし、法人向けらしく「真っさらな」環境が提供されるため、「ウェブサイトの公開はワンクリック」ではありません。それでも使い勝手は一般的なレンタルサーバーと変わらず、豊富なマニュアルとFAQ、法人向けらしい手厚いサポートを考えれば、初心者にもおすすめできるサービスといえます。

Zenlogicは「Let's Encrypt」に正式対応した国内最初のサービスでもあります。さらにシマンテックグループの証明書も標準装備しているため、基本料金だけでウェブサイトの常時SSL化(HTTPS)が可能です。さらに、法人向けサービスらしくSLA(品質保証制度)にも対応しており、安定性や信頼性が必要となるウェブサイトに最適です。

各プランの比較

機能や仕様は一部を除き 全プラン共通 です。

2017年6月末 まで、創業20周年を記念したスペシャルプラン(プランS)が設定されており、このプランのみサポート対応が異なります。

プラン S 1 2 3 4 5 6 7
初期費用 0円 0円 0円 0円 0円 0円 0円 0円
月額料金(標準) 1,186円 3,300円 5,300円 7,500円 9,300円 11,500円 13,700円 22,600円
月額料金
(年間契約時)
890円 2,970円 4,770円 6,750円 8,370円 10,350円 12,330円 20,340円
vCPU/メモリ 1vCPU/1GB 1vCPU/1GB 2vCPU/2GB 2vCPU/4GB 4vCPU/4GB 4vCPU/6GB 4vCPU/8GB 4vCPU/16GB
ディスク容量 300GB 1TB 1TB 1TB 1TB 1TB 1TB 1TB
平日サポート 電話
平日サポート メール
休日サポート 電話 ×
休日サポート メール
サーバー設定
チューニング
×

スペシャルプランは通常の最廉価プラン(プラン1)のディスク容量を減らし、「休日の電話サポート」と「サーバー設定チューニング」を除いたものです。1TBものディスク容量が不要であれば驚くほどお得なプランです。

プラン1〜7の違いは 「vCPU/メモリ」のみ です。つまり上位プランほどサーバー性能が向上することになり、ウエブサイトの規模(アクセス数)に合わせて選択することになります。初めてレンタルサーバーを利用するのであれば、アクセス数の予測は難しいでしょう。Zenlogicでは上位プランへ即時変更できるため、とりあえず下位プランで様子を見ることをおすすめします(予算を抑えられます)。公式説明によると「プラン5以上は専用サーバーに相当」となっています。

契約期間は1ヶ月と12ヶ月の2種類となっており、年間契約(12ヶ月)なら10%以上お得な料金設定となっています。全てのプランで 2週間の無料お試し期間 があります。試用期限を過ぎると自動的に本契約となるため、もしお試し利用で不満があれば解約手続きが必要です。

データセンター

ファーストサーバがヤフーの子会社ということもあり「Yahoo! JAPANのIaaS型クラウド基盤」を採用しています。Yahoo!となっていますが、実際はグループ企業のIDCフロンティアのデータセンターでしょう。

データセンターの拠点は、東京(複数)、福島白河、神奈川横浜、大阪吹田、福岡九州となっています。あくまでも経路探索(traceroute)や反応速度(ping)による推測ですが、ZenlogicはIDCフロンティアの最も新しい福島白河のデータセンターで運用されているようです。

コントロールパネル

契約管理とサーバー管理を カスタマーポータル と呼ばれるコントロールパネルで行います。シームレスな設計となっており、他のレンタルサーバーのように契約管理とサーバー管理が別画面となりません。シンプルで使い勝手の良いコントロールパネルです。

ただしサーバー管理に関して、画面移動のレスポンスは快適ですが、何かを実行したときの待ち時間は長めです。例えば、PHPのバージョンを変更すれば、再起動が必要となりかなり待たされます。他の設定についても、すぐに設定が反映されるわけではありません。サーバーの設定は頻繁に行うものではありませんが、少し気になる部分です。

法人向けという性格もあり、初心者にはあまり優しくない仕様となっています。余計なアプリケーションが初期導入されていることは望ましくないため、比較的「真っさら」な環境が提供されます。例えば、デーベース操作用アプリケーションやウェブメーラーは標準で導入されません。

高性能なサービスですが、初心者が何も考えずに使えるサービスではありません。とはいえ、マニュアルやFAQが充実しており、電話サポート(フリーダイヤル)にも対応しているので、それらを活用すれば大きな問題とはなりません。

転送量制限

転送量に制限はなく、完全に「 無制限 」となっています。低価格帯レンタルサーバーのような「無制限風」や「なんちゃって無制限」ではないため、安心して利用できます。そもそも通常プランで1TBものディスク容量がありながら、転送量に制限があるようだと使い物になりません。

SSLの仕様

SNI SSL に対応しているため固定IPアドレス(グローバルIPアドレス)がなくても、ドメインごとにSSLサーバー証明書を設定できます。さらに、無料のSSLサーバー証明書「 Let's Encrypt 」と標準証明書(GeoTrustのRapidSSLベース)を利用できます。どちらの証明書も無料ながら自動更新に対応しています。

GoogleはSSL対応サイトの検索順位を優遇することを公表しており、これからは「常時SSL」が当たり前の時代となります。Zenlogicなら基本料金だけで全てのサイトをSSL化(HTTPS)できるためおすすめです。

もちろん法人向けらしく、様々な認証レベルの証明書が用意されています。

ブランド 証明書名 認証タイプ 法人/個人 料金
Zenlogic 標準独自SSL ドメイン認証 ○/○ 0円
Let's Encrypt 同名 ドメイン認証 ○/○ 0円
GeoTrust クイックSSLプレミアム ドメイン認証 ○/○ 2,000円/月
13,900円/年
GlobalSign クイック認証SSL ドメイン認証 ○/○ 2,500円/月
27,900円/年
GeoTrust トゥルービジネスID 企業認証 ○/× 49,800円/年
BIZCERT 同名 企業認証 ○/○ 5,000円/月
54,000円/年
CyberTrust SureServer 企業認証 ○/× 74,000円/年
Symantec セキュア・サーバID 企業認証 ○/× 80,000円/年
GeoTrust トゥルービジネスID with EV EV ○/× 97,000円/年
シマンテック セキュア・サーバID EV EV ○/× 161,000円/年

認証レベルは基本的に3段階であり、信頼性は「EV > 企業認証 > ドメイン認証」となります。個人では(一部を除き)企業認証以上の証明書を取得できないため、個人利用ならドメイン認証の「Let's Encrypt」や「標準証明書」で充分でしょう。

共有(共用)SSLは標準ドメイン(契約時に発行されるドメイン)にファーストサーバが提供する証明書(GlobalSign社のドメイン認証)が設定されています。主にFTPやメールの暗号化通信のために利用されます。

CSRの発行や他社で取得したSSLサーバー証明書の持ち込みにも対応しています。

ドメイン

一般的なレンタルサーバーと比較してドメインの仕様が少し変わっています。マルチドメイン(バーチャルドメイン)の設定可能数は 全プラン無制限 ですが、Zenlogicのネームサーバー(DNSサーバー)には制限があります。

例えば、他社で取得した独自ドメインをZenlogicで利用する方法は2つあります。一つは「Zenlogicのネームサーバーを利用する」、もう一つは「ドメインを管理するレジストラのネームサーバーを利用する」です。

一つ目のZenlogicのネームサーバーを利用する場合、DNSゾーンの設定が必要となります。このDNSゾーンは標準で 6個 まで利用できます。つまり、Zenlogicのネームサーバーを利用するなら、基本料金で設定できる独自ドメイン数は6個が上限となります。サブドメイン(例 blog.example.com)については、親ドメイン(example.com)のゾーンを利用するため無制限に設定できます。

DNSゾーンの追加
オプションとして1セット(5ゾーン)単位で無制限に追加できます。料金は1セット500円/月(年間契約なら450円/月)となっています。

もう一つの方法ならDNSゾーンを使用しないため、無制限に独自ドメインを設定できます。ただし、DNSレコード編集の知識が必要となります。

独自ドメインの設定方法については下記を参考にしてください。

サーバー毎に「長いランダムな文字列.znlc.jp」という標準ドメインが割り当てられます。名前が意味不明な文字列となるため、ウェブサイトへの利用には向きません。主にテストやFTPサーバー、メールサーバーなどの接続先として利用することになります。

独自ドメインはZenlogicでも取得できますが、あまり安くありません(それほど高いわけでもありませんが)。他社で管理する独自ドメインを設定できるため、ムームードメインやスタードメインなど、格安レジストラ(リセラー)で取得管理するとよいでしょう。

DNSレコード設定
A / CNAME / MX / NS / TXT / SPF / AAAA / SRV に対応しています。
日本語ドメイン
対応しています。

データベース

MySQL、PostgreSQL、SQLiteに対応しており、データベース数は 無制限対応 です。

コントロールパネルにMySQLとPostgreSQLの初期化(起動)以外の機能はありません。データベースの編集は基本的にphpMyAdminやphpPgAdminを利用しますが、初期状態では未導入です。簡単インストール機能があるため、必要に応じてユーザー自身で導入します。

他のレンタルサーバーのようにコントロールパネルから簡単に操作できないため、少なくともphpMyAdmin(やphpPgAdmin)の操作に慣れている必要があります。単純にWordPressサイトを運用するだけなら、データベースの設定も自動化されている簡単インストールを利用するとよいでしょう。

詳しくはphpMyAdminの導入から、データベースの作成、そして、WordPressのインストールまでを説明した記事を参考にしてください。

仕様  
MySQL 5.1.73。ENGINES: MRG_MYISAM / CSV / MyISAM(標準)/ InnoDB / MEMORY。phpMyAdmin: 4.0.10.6。
PostgreSQL 8.4.20。phpPgAdmin: 5.1。
SQLite 3.6.20。PHPならSQLite3関数とPDO関数に対応します。
外部接続
外部からの接続には非対応です。

FTP、その他のファイル転送機能

通常のFTPだけでなく、セキュアなFTPSとSFTPに対応しているため、安全なファイル転送が可能です。FTPアカウント数は 無制限 、さらにFTP同時接続数が 100 となっており、グループでのサイト運営にも問題ありません。

FTPアカウントを作成する際、ホームディレクトを自由に設定できます。ホームディレクトリより上位ディレクトリへは移動できないため、共同作業者など第三者へのアカウント発行にも便利な仕様です。FTPアカウント名は「任意の文字列」を設定でき、他社のようにアカウント名が接頭辞として付与されることはありません。

アクセス制限にも対応しており、指定したIPアドレス(サブネットマスクも可)からのアクセスを許可または拒否することができます。コントロールパネルでの設定は全てのアカウントに適用されます。

残念ながら他社にあるファイルマネージャ(ウェブアプリケーション)はありません。ファイルやディレクトリ操作にはFTPクライアントが必要です。

ディレクトリ構成

Zenlogicのディレクトリ構成は非常に柔軟です。標準ドメインを含むドメインごとにドキュメントルート(公開ディレクトリ)を自由に設定できます。「/htdocs」以下ならどこでも可能です。

ホームディレクトリ(/virtual)にフォルダやファイルを作成することはできませんが、「/virtual/cgi-data」内は自由に編集できるため、非公開としたいファイルを置くために利用できます。

メール

プロトコル  
POP SSL/TLS、STARTTLS
IMAP SSL/TLS、STARTTLS
SMTP SSL/TLS、STARTTLS、SMTP-AUTH、サブミッションポート
非対応 POP before SMTP、APOP

メールアドレス数は 無制限 となっています。セキュアなSSL/TLSにも対応しており、どのようなメール環境でも困らない標準的な仕様となっています。

メールの機能は以下の通りです。

メール機能  
ウイルス・スパム対策 Dr.WEBが採用されています。ウイルス検出は自動的に行われ、検知時にメール通知が可能です。スパムチェックも自動的に行われ、ホワイトリストとブラックリストも利用できます。
自動返信 送信者に登録した定型文を自動返信することができます。同一の送信者から同日に複数のメールが届いても自動返信は1回のみとなります。
フィルタ 条件(キーワード)に一致したメールを自動的に破棄(削除)します。対象はメールヘッダ(From / Subject / To / Cc / Return-Path / X-ML-Name / List-ID / Content-Type)となります。9,999個まで設定できますが、多くなるほど負荷が高くなります。
メール転送 フィルタと同様の設定でメールの転送が可能です。キーワード未指定の場合、すべてのメールが転送されます。
メール保管 届いたメールをサーバーに保存するかまたは削除するかを設定できます。
メール送信元制限 メール配送時の接続元を、IPアドレス(サブネットマスク対応)で拒否または許可できます。
メーリングリスト 国産のfmlが採用されています。設定数やメンバー数は無制限です。
非対応 メールマガジン、キャッチオール

制限
1通あたり100MB。送受信数に制限はありませんが、多くなるほど高負荷となります。

ウェブメーラー

データベースと同様にウェブメーラーも初期導入されていません。簡単インストール機能に「Roundcube」があるので、必要に応じてインストールするとよいでしょう。Roundcubeは他社でも採用されている高機能なウェブメーラーです。インストールディレクトリを選択するだけで導入できるため、誰でも簡単に利用できます。

メーリングリストの仕様

コントローパネルから簡単に使えるようになっています。国産メーリングリストの「 fml 」が採用されていますが、全ての機能が使えるわけではありません。

機能  
投稿者の制限 投稿者の制限が可能です。「誰でも投稿可能 / 管理者が許可した場合のみ / 登録メンバーのみ」から選択できます。
メールサイズ制限 標準では100MBが上限となりますが、KB単位で制限できます。
サブジェクトタグ タイトルの先頭に任意の文字列と連番を自動的に付与することができます。
返信先 返信先の指定ができます。「メーリングリストアドレス / 送信者 / 任意のアドレス」から選択できます。

投稿者の制限で「管理者が許可した場合のみ」を選択すると、メンバー以外から投稿されたメールはまず管理者だけに届きます。管理者が許可するとそのメールがメンバーに配信されます。しかし、配信されるのはそのメールのみであり、その送信者が自動的にメンバー登録されるわけではありません。

「登録メンバーのみ」を選択すると、メンバー以外から投稿された時の挙動を選択できます。「拒否する」と「無視する」があり、「拒否する」を選択した場合、管理者だけに届き送信者に「案内メッセージ」が自動返信されます。「無視する」を選択した場合、管理者だけに届き送信者には何もレスポンスがありません。

設定数やメンバー数は無制限となっていますが、機能が制限されているため、あくまでも簡易的なメーリングリストとなっています。例えば、ベースとなっているfmlはメール内に記述したコマンドで管理できるることも特徴ですが、一部を除き制限されています。メンバー管理も手動対応となるため、小規模なグループでの利用に限られるでしょう。

PHPの仕様、他の言語について

5系と7系に対応しており、どちらもモジュールモードで動作します。PHPのバージョンはコントロールパネルで簡単に切り換えることができます。

モジュールモードで動作するため、PHPの動作設定を変更するなら「.htaccess」内で指定する必要があります。

例)PHPのエラーを出力するなら
.htaccessで「php_flag log_errors On」と「php_value error_log」を設定します。
  Loaded extensions
PHP 5.6 Core / date / ereg / libxml / openssl / pcre / zlib / filter / hash / Reflection / SPL / session / standard / apache2handler / bcmath / bz2 / calendar / ctype / curl / dba / dom / enchant / mbstring / fileinfo / ftp / gd / gettext / gmp / iconv / imap / intl / json / ldap / exif / mcrypt / mysqlnd / odbc / PDO / pgsql / Phar / posix / pspell / recode / shmop / SimpleXML / snmp / soap / sockets / sqlite3 / sysvmsg / sysvsem / sysvshm / tidy / tokenizer / xml / xmlwriter / xsl / zip / mysql / mysqli / pdo_mysql / PDO_ODBC / pdo_pgsql / pdo_sqlite / wddx / xmlreader / xmlrpc / mhash / Zend OPcache
PHP 5.3 Core / date / ereg / libxml / openssl / pcre / zlib / bz2 / calendar / ctype / hash / filter / ftp / gettext / gmp / SPL / iconv / Reflection / session / standard / shmop / SimpleXML / sockets / exif / tokenizer / xml / apache2handler / apc / bcmath / curl / dba / dom / enchant / fileinfo / gd / imap / intl / json / ldap / mbstring / mcrypt / mysql / mysqli / odbc / PDO / pdo_mysql / PDO_ODBC / pdo_pgsql / pdo_sqlite / pgsql / Phar / posix / pspell / recode / soap / sqlite3 / sysvmsg / sysvsem / sysvshm / tidy / uuid / wddx / xmlreader / xmlrpc / xmlwriter / xsl / zip
仕様  
PHP 5.3.3 / 5.6.21 / 7.1.x
Perl 5.10.1
SSI
Python 2.6.6
Ruby ×

Cron

コンテンツの自動更新などに利用されるCronに対応しています。設定数は 無制限 となっていますが、負荷の高い処理をさせるとウェブサイトのレスポンスにも影響が出るため利用には注意が必要です。

最短実行間隔は 1分間 となっています。Cron専用の設定画面が用意され、初心者でも簡単に設定できます。実行時刻や間隔などの再編集は可能ですが、一時停止の機能はありません。

他社の様にメールによる実行通知の設定はありません。もし、実行結果などの通知が必要であれば、スクリプト内からメールを送信する必要があります。

動作可能なスクリプトは「bash / sh / perl / php」となります。他のレンタルサーバーのようにコマンド(phpの実行パスなど)の設定はできないため、ファイルの先頭にshebang(#!/usr/bin/phpなど)を記述しておく必要があります。

ログ

法人向けらしく多彩なログ環境となっており、以下のログが「~/logs」ディレクトリに出力されます。ログファイルのデータ形式は「Apache標準仕様 NCSAタイプ(combinedフォーマット)」です。

ログファイルは日別に出力されます。ログは深夜にまとめて更新(出力)されるタイプでないため、当日分のログも確認できます。

ログの種類  
メールログ 受信ログ、配送ログ。
ウェブログ アクセスログ、エラーログ、SSLアクセスログ、SSLエラーログ。ドメインごとに出力されます。
FTPログ FTP/FTPSアクセスログ、SFTPアクセスログ、簡易ファイル共有機能ログ。
データベースログ MySQLとPostgreSQLの操作やアクセスのログ。
cronログ プログラム実行のログ。
WAFログ SiteGuard Liteの動作ログ。

初期設定の保存期間は12ヶ月となっていますが、コントロールパネルでログの種類ごとに変更できます。最長は初期設定の12ヶ月であり、3ヶ月または6ヶ月も選択できます。保存しないという設定はありません。

アクセス解析

アクセス解析には多くのレンタルサーバーで採用されている「Webalizer」が採用されています。ドメインごとにアクセス解析適用の有無を選択できます。

解析内容
月の統計 / 日ごとの統計 / 時間ごとの統計 / ヒット数ランキング(URL別、転送量別、Entry Pages別、Exit Pages別、サイト別、転送量別) / リファラー(どのリンクから訪問してきたか) / ユーザエージェント(ブラウザ、OS) / 国別の統計
訪問者数(Sites) / 転送データ量(KBytes) / 訪問者数(過去30分以内の重複IPアドレスを除く数 / Visits) / HTMLページ数(Pages)/ 正常なアクセス数(Files) / エラーを含む全てのアクセス数(Hits)

バックアップ

Zenlogicにユーザーが利用できるバックアップ機能はありません。

システム側では1日1回(計3日分を保管)のバックアップが自動的に行われていますが、あくまでもZenlogicの保守目的であり、ユーザーがそのバックアップデータを利用することはできません。しかし、このバックアップを含めて、ユーザーのデータは異なる3つサーバーに分散保存されます。そのため、他のレンタルサーバーよりデータロスの可能性は低いでしょう。

どのレンタルサーバーであれ、データのバックアップはユーザーの責任で行うべきです。例え有料のバックアップサービスであっても「絶対」はありません。あくまでも「保険」程度に考えるべきでしょう。

データベースのバックアップ

バックアップ機能とは呼べませんが、データベース(MySQL/PostgreSQL)のダンプファイルをワンクリックで生成することができます。全データベースが対象となります。

セキュリティ対策

WAF (ウェブアプリケーションファイアウォール)

多くのサービスで採用されているJP-Secure社の「SiteGuard Lite」が標準装備されており、初期状態で有効となっています。WAFとはウェブサイト(ウェブアプリ)に特化したファイアウォールのことであり、脆弱性を悪用する攻撃からサイトを保護します。例えば以下の様な攻撃に対して有効です。

  • SQLインジェクション
  • クロスサイトスクリプティング
  • ディレクトリトラバーサル
  • OSコマンドインジェクション
  • HTTPヘッダインジェクション
  • ブルートフォース(ログインアタック等)

WAFを有効にして問題が発生することは稀ですが、過去にはWordPressのダッシュボード操作が不正なアクセスと判断されることもあり少し話題となったこともあります。もし運用しているウェブサイトで不明なエラーが発生した場合は、最初にWAFを無効にするとよいでしょう。ドメイン単位で適用の有無を切り換えることができます。

ウェブサイト不正改ざん検知

ガンブラー(Gumblar)ウイルスなどのマルウェア、悪意のあるスクリプトの埋め込みなど、ウェブサイトの不正な改ざんを自動監視するオプションサービスに対応しています。セキュアブレイン社の「gred セキュリティサービス」が採用されており、定期的(1日1回)なウェブサイトのチェックが実施されます。

ウェブサイトの改ざんを検知すると管理者にアラートメールが送信されます。すぐにウェブサイトを安全なメンテナンスページに切り換え、復旧するまでの被害拡大を防ぐことができます。改ざん内容はレポートとして提供されるため、管理者はそれを元にサイトの修復を行えます。

利用料金
2,000円/月。年間契約なら1,800円/月。

マルチユーザー対応

コントロールパネルへアクセスができるアカウントを発行(追加)することができます。契約に関する操作を除けば、ほとんどの機能へアクセスできるアカウントとなります。サービス(サーバー)ごとに複数のアカウントを発行できるため、例えば会社で契約して実作業は担当者が行うときにも役立ちます。

コントロールパネルで全アカウントの「操作ログ」を確認できるため、どのアカウントで何の作業が行われたのかを把握できます。設定ミスの原因調査やセキュリティ対策など、ウェブサイトを複数人で安全に運用するために役立つでしょう。

ログについて
ログ項目: 操作ページ(メニュー) / 操作内容 / 結果 / ユーザーID / IPアドレス / 操作日時 / ログイン履歴
ログは12ヶ月分保存されます。

有料オプション

ディスク容量増加
10GB単位でディスク容量の拡張が可能です。100円/月(年間契約なら90円/月)で10GB増加となっており、最大2TBまで拡張可能です。プランSは非対応です。
運用支援サービス
サーバーの初期設定やアプリケーションのインストールをファーストサーバが代行します。例えばサーバーの初期設定が5,000円〜/ホストとなっています。
CDN
詳細は省きますが、大規模なアクセスのあるウェブサイトに必須のCDN(Content Delivery Network)に対応しています。Zenlogic CDNというサービス名で、Jストリーム社の「J-Stream CDNext」を採用しています。基本月額料金はライトプランの5,000円/100GB、スタンダードプランの30,000円/1TBとなっています。

ソフトウエア

OS
CentOS release 6.6 (Final)
簡単インストール対応
WordPress / EC CUBE / phpMyAdmin / phpPgAdmin / Roundcube
動作確認済み
Movable Type / ownCloud / concrete5 / a-blog cms / Joomla! / XOOPS / Drupal / ZEN PHOTO / SOY CMS / PukiWiki / baserCMS / Geeklog / LimeSurvey / NetCommons / サイボウズ Office10 / team:on
公式サイトの情報ですが、アプリケーションの完全な動作を保証するものではありません。

コマンドラインツール

ツール  
対応 sendmail / nkf / gzip gunzip / zip unzip / ImageMagick (convert) / gs / curl / traceroute / tracepath / wget / ping / sh (bash) / Netpbm (jpegtopnm, pngtopnm) / iconv / vi / base64
非対応 uuencode uudecode / gcc / lynx / elvis /
注意
インストール状況を独自に調査した結果です。動作を保証するものではありません。

その他の機能

SSHについて
シェルログイン対応と勘違いするかもしれませんが、シェルログインには非対応です。あくまでもSFTPに対応しているだけです。
SSLデフォルトページ設定
「IPアドレス」や「SSLサーバー証明書を適用していない独自ドメイン」でHTTPSアクセスがあった場合に表示させるウェブページのドメインを設定できます。
アクセス制限
IPアドレス(サブネットマスク対応)によるウェブサイトへのアクセスの許可または拒否をディレクトリ単位で設定できます。また、BASIC認証(パスワードとIDによる制限)の設定も可能です。

SLA対応

SLA(品質保証制度)に対応しており、サービスの障害時間に応じて利用料金が返金されます。

ZenlogicのSLA仕様は「稼働率が99.5%を下回る場合に利用料金の30%を返金」と一律の設定となっています。つまり、1ヶ月間に障害時間が合算で3時間36分(30日換算/24時間×60分×30日×0.5%)を越えた場合に返金対象となります。

同じように法人向けサービスであるCPI(KDDI)の場合、保証値が100%となっており少しでもサービスに障害が発生すれば返金対象となります。また、稼働率が90%を下回った場合は100%返金となります。

SLAは安定稼働の目安であり、SLA100%対応は安定稼働に絶対の自信があるともいえます。安定性が最優先のサービスが必要であればCPIも選択肢となるでしょう。

Zenlogicと比較してCPIが絶対に優れるという訳ではありません。そもそも一般的なレンタルサーバーであればSLAに非対応です。ZenlogicのSLAは100%保証ではありませんが、他のサービスと比較して安定度が高いことに変わりはありません。

プラン変更

プラン変更に対応しています。

  • プランSへは変更できません。
  • リソースの割り当てだけ更新され、サーバー環境は同じままです。そのため、ウェブサイトの再設定は不要です。
  • 再起動のため15分程度サービスが停止します。、

条件により幾つかの違いがあります。

条件 更新のタイミング 支払い キャンセル
上位プランへの移行 即時更新 旧プランの有効期間分に対する差額が請求されます。 即時更新のためキャンセルできません。
下位プランへの移行 現プランの契約満了日の翌日 新しいプランの料金が請求されます。 現プランの契約満了日までキャンセル可能です。

サポート対応

Zenlogicの特徴はサポート対応にもあります。

365日対応の電話サポート(フリーダイヤル/9時〜18時)に対応しています。法人向けサービスなので当たり前に感じるかもしれませんが、休日(土日祝日)に対応するサービスは多くありません。

メールサポートのレスポンスは素晴らしく、15時までの問い合わせであれば原則当日中に回答があります。公式サイトのお問い合わせフォームは契約前の方が利用するものであり、契約後はカスタマーポータル(コントロールパネル)内にあるフォームを利用します。

最近では珍しくありませんが、サーバー障害の発生情報やメンテナンスの予告情報をTwitterでも配信しています。

プランSについて
プランSのみ休日の電話サポートに非対応です。メールサポートは対応しています。

Zenlogic Cafe

関西圏に住んでいる方に限られるかもしれませんが、本社ビルで「無料対面サポート」を行っています。豊富な知識を持つファーストサーバのスタッフが、どのような相談でもマンツーマンで対応する少しユニークなサービスです。契約前でも利用できます。

予約制となっており、Zenlogicの公式サイトから手続きが可能です。

サーバー設定チューニング

サーバー運用経験が豊富な専門チームがユーザーの課題をヒアリングし、相談しながらサーバー環境の個別チューニングに対応する標準サービスです。一例ですが、以下のような設定に対応しています。

設定項目例  
Apache StartServers、MinSpareServers、MaxSpareServers、ServerLimit、MaxClients、KeepAlive)
MySQL innodb_flush_log_at_trx_commit、innodb_data_file_path、query_cache_limit、query_cache_size
Proftpd UseEncoding
プランSについて
プランSのみ非対応です。

支払い方法

月末締めの翌月払い(後払い)となっています。月の途中で契約した場合、その月の支払いは日割り計算となります。年間契約の場合も契約月の翌月に請求されます。

支払い方法  
銀行振込 振込用紙が送付されます。振込定数料が必要です。
コンビニ決済 振込用紙が送付されます。
口座振替 金融機関口座から自動的に引き落とされます。
クレジットカード決済 VISA / MasterCard / JCB / AMEX / DINERS
注意
1ヶ月の請求金額が3万円を超えた場合、該当月の支払い方法が自動的に銀行振込/コンビニ決済に切り替わります。
お試し期間も利用期間に含まれます。

解約方法

カスタマーポータルで簡単に手続き可能です。

即日解約はできません。契約期間中に解約手続きを行っても、契約満了日に解約となります。いつ解約手続きを行っても契約満了日までサービスは継続されるため返金対応はありません。

契約満了日までなら解約のキャンセルが可能です。

まとめ

冒頭にも書きましたが、おそらく公式サイトを開いた瞬間に「なんだVPSか⋯⋯」と離れてしまうユーザーがいるように思えます。理解しているユーザーばかりではないので、トップページでZenlogicの特徴をアピールすべき様な気がします(もったいないですね)。また、個人でも契約できるはずですが(実際にしています)、そのことがどこにも書かれていません。法人向けサービスであることは分かりますが、これだけ性能や使い勝手に優れるサービスであれば、もっとユーザー層を広めても良いように思えます。

ほとんどの機能が無制限対応であり、安定性能やレスポンス性能でもおすすめできるレンタルサーバーです。しかし、他のレンタルサーバーと比較すれば「真っさらな環境」からウェブサイトを立ち上げるため、初心者には少し難しいかなと思います。決して難解ではありませんが、一般的なレンタルサーバーと比較すると全てが「ちょっとだけ難しい」ように感じます。あくまでも「初心者であれば」という前提であり、少しでもレンタルサーバーの利用経験があれば何の問題もありません。

20周年記念の限定プラン(プランS/2017年6月30日まで)は、ディスク容量が減り(それでも300GB)、休日の電話サポートが省かれるだけです。他の仕様は通常プラン(プラン1)と同等であり「赤字じゃないの?」と思うほどお得感のあるプランです。もし興味があればお試し期間を利用してはいかがでしょうか。


更新日時  
2017年03月29日 PHP7.1が追加されました。
2016年12月02日 プランSのキャンペーン期間が延長されました。
2016年10月27日 SSLサーバー証明書のリストを更新しました。
2016年10月10日 未調査の部分を追記しました。

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