FTPを多用するなら要注意!さくらインターネットのファイル転送性能

さくらインターネットといえば、レンタルサーバーの代名詞的存在であり、人気の高いサービスの一つです。SNI SSL対応やモリサワのWebフォントを無料で提供するなど、有用なサービスを積極的に導入しています。

レンタルサーバーを選ぶときに、ファイル転送性能(FTP性能)を気にする人はほとんどいません。例えば、第三者が開発したプラグインやテーマを利用するだけのWordPress運用なら、FTPの使用頻度は高くありません。しかし、WordPressテーマ(デザイン)の開発やオリジナルサイトの運用なら、転送速度の遅さは作業効率を悪化させ、ストレスの原因にもなります。

用途や目的によって、ファイル転送性能も重要な検討項目です。レンタルサーバーを選ぶときの絶対的な条件ではありませんが、あらかじめ確認しておけば、契約後に後悔することもありません。ここではさくらインターネットのファイル転送性能の評価と比較を行います。

さくらインターネットのファイル転送機能に関する仕様

プラン ライト スタンダード プレミアム ビジネス ビジネスプロ
FTP
FTPS
SFTP ×
SCP ×
複数アカウント × × ×

標準的なFTPだけでなく、セキュアなFTPSにも対応します。さらにライト以外はSFTP/SCPにも対応します。

下位プラン(ライト/スタンダード/プレミアム)のFTPアカウントは契約時に発行される「1つのみ」となっており、(サブ)アカウントを追加できません。

ウェブサイトを共同管理するため複数のアカウントが必要なら上位プラン(ビジネス/ビジネスプロ)を選択しましょう。アカウントごとにアクセスできるディレクトリ(ドメイン)を制限できます。

測定方法

  • Webページを構成するファイルのアップロードとダウンロード
    • テキストファイルや画像ファイル
    • (HTTP)レスポンス性能の評価に利用しているサイト(ページ)を構成するデータ群
  • 合計ファイルサイズは約2MB(約20ファイル)

最大3つのファイルを並列転送します。レンタルサーバーがそれ以上の同時接続を許可していて、FTPクライアントも並列転送に対応していれば、この測定結果より早く転送できることになります。

測定期間

測定期間は 7日間 であり、5分ごとに測定を行います。つまり、「7日×24時間×12回(60/5)」の約2,000回となります。

一度きりの測定では意味がないため、一定期間の継続した測定を行っています。「たまたま利用者が少なくレスポンスが良かった」「一時的なトラブルが原因でレスポンスが悪かった」という、誤った結果となることを(完全ではありませんが)防げます。

一定期間測定することで、利用者数(訪問者数)が変動する日中、夜間、深夜の差を確認することもできます。例えば、利用者の少ない深夜と、利用者の多い日中との差が小さければ、負荷に強いサーバーということを推測できます。

測定経路

当然ですが自社のデータセンターで運用されています。さくらインターネットのデータセンターは、大阪・東京・北海道(石狩)にあります。プランにより割り当てられるデータセンターは異なります。これまでの利用経験から推測すると、ライトプランが東京、それ以外は大阪という傾向にあるようです。

経路図は測定元からデータセンターまでのネットワークを示しており、経由するIX(インターネットエクスチェンジ)等を含みます。測定元はK-Opticom(関西電力)のネットワーク内、関西圏(赤い円)にあるサーバーです。

測定元のサーバーは 測定専用 として測定以外の処理は行っていません。

測定環境
eo光(K-Opticom/関西電力)100Mタイプ
ルーターと測定用サーバーは有線接続

測定結果

  アップロード ダウンロード
有効測定 2,015回 2,016回
棄却検定除外 0.10% (2) 0% (0)
棄却検定閾値 7.39秒 7.13秒
エラー 0.05% (1) 0% (0)
中央値 2.44秒 0.54秒
平均値 2.97秒 1.39秒
ばらつき/標準偏差 1.19秒 1.76秒
測定結果について
有効測定はエラーを省いた回数です。
測定実行のタイミングによりサーバーやネットワークの状態(混雑具合)が変動します。集計に影響を与える一時的な異常値(外れ値)を棄却検定「Grubbs' test(α=0.001)」により省いています。これは測定サーバー側の異常を省く意味もあります。
ばらつき(標準偏差)は、転送時間の 約68%平均値 ± ばらつき に、約95%平均値 ± ばらつき×2 に収まることを示します。つまり、ばらつきが小さいほど転送性能が安定しているといえます。
未加工データ(生データ)は最後に掲載しています。
エラー内容  
アップロード [1] タイムアウト [1]

さくらインターネットの評価

1年前の測定結果 より改善しましたが、やはり同じデータセンターにあるエックスサーバーなどと比較するとかなり劣ります。

アップロードに関して速いときは 2秒程度 ですが、遅いときは 5秒程度 まで低下します。「他のレンタルサーバーとの比較」を見ると分かりますが、これほど大きいばらつきを持つ結果はほとんどありません。測定プログラムとの相性かもしれませんが、基本的に速くないということになります。

ダウンロードはその傾向がより顕著であり、中央値と平均値の差がかなり大きい結果となっています。 データを詳しく確認すると、約66%は0.6秒未満 となっており、トップクラスの平均値です。 しかし、約18%が3秒以上 となっており、これが中央値と平均値の差の原因です。

過去の測定でも同様の傾向にあるため、これがさくらインターネットの特性なのでしょう。

ウェブサイトを運営する場合、アップロードがメインとなるため、ダウンロード速度の変動を気にする必要はないでしょう。 しかし、アップロードも遅いため、頻繁にFTPを使うならストレスを感じるかもしれません。 少し遅くても速度が安定していれば、その速度に慣れるため気になりませんが、ファイル転送の度に変動する特性は気持ちの良いものではありません。

前述の通り測定プログラムとの相性もあるため、さくらインターネットを検討しているのであれば、お試し期間内で確認するとよいでしょう。

他のレンタルサーバーとの比較

プロバイダー 環境など アップロード ダウンロード
公式サイト 平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %平均値 秒中央値 秒標準偏差 秒エラー %

0.750.740.050.10.480.440.10.05

0.750.750.050.20.490.440.130.1

0.840.740.2400.730.640.180

0.860.850.060.10.590.510.190.1

0.90.70.4200.690.580.30

0.950.880.240.20.710.620.260.1

0.950.830.320.20.720.660.270.1

WordPress

0.990.880.320.250.710.590.280.35

1.040.780.4900.720.620.30

1.050.860.440.250.720.610.320.05

1.10.840.480.20.860.720.380.2

1.111.10.083.170.730.70.111.87

1.211.10.330.350.750.690.250.3

PHP&MySQL

1.331.270.260.11.131.010.250.1

SFTP

1.391.350.1401.061.030.110

1.441.210.6701.191.110.290

1.51.490.0701.331.20.540

1.531.530.090.90.890.870.091

1.561.550.100.970.960.070

1.581.580.060.050.980.870.210

SFTP

1.611.60.0701.721.690.120

1.611.560.1901.131.210.250

1.611.60.101.080.970.210

1.621.550.190.051.211.20.10.05

1.671.660.150.250.980.970.070.25

1.731.730.1101.061.050.090

1.771.80.2401.081.040.140

SFTP

1.831.850.2701.331.290.150

1.881.710.6901.531.520.330

1.9820.3301.191.150.110

新サーバー

2.112.030.350.41.441.360.40.2

2.141.920.6901.251.220.160

2.262.030.630.31.331.270.150.3

2.382.310.30.052.462.420.290.05

旧サーバー

2.482.280.550.151.921.780.520.05

2.622.41.022.81.841.740.631

2.922.51.1202.992.481.410

2.972.441.190.051.390.541.760

SFTP

32.990.2401.931.90.130

3.093.120.1601.361.330.120.05

3.413.410.0901.861.840.080

5.533.923.450.355.863.954.10.25

6.7500.730.28.7200.980.1

海外

11.611.60.4806.796.740.280

海外

12.112.10.507.477.450.190

海外

12.312.30.52010.910.31.350.05

海外

16.616.50.560.210.110.20.860.25

海外

33.430.27.130.1520.5201.830.05

hostingstockで測定した各レンタルサーバーのファイル転送性能です。詳細はリンク先をご覧ください。

注意
最新の測定結果を優先的に表示するため、記事作成時の評価とこの比較結果(表のデータ)が異なる可能性があります。

測定結果(未加工データ)

  アップロード ダウンロード
中央値 2.44秒 0.54秒
平均値 2.98秒 1.39秒
ばらつき/標準偏差 1.21秒 1.76秒

測定結果について!
レンタルサーバーは、一つのサービス(プラン)に対して多くのサーバーが運用されています。これらの測定結果は、その中の一つに過ぎません。契約時期により割り当てられるサーバーのスペックは異なる可能性があります。また、同じサーバーを利用する他のユーザーの負荷も影響します。

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